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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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やばい人物

「じゃあ、シトラにもしてあげようか」


 僕はシトラの方を向きながら聞く。


「わ、私の方は普通に治しなさいよ。キスとか、そんな恥ずかしいことはしないで」


「わかった。じゃあ、撫でるだけで治すよ」


 僕はシトラの体についている打撲痕を治していく。両者共に綺麗な肌に戻った。


「ほんと便利な体になったわね、キース。撫でるだけで傷が無くなるなんて……、医者いらずじゃない。折れた歯とかも治るの?」


 シトラは歯を僕に見せながら聞いてくる。綺麗な歯並びで、惚れ惚れした。


「歯も治ると思う。なんせ、腕の骨も治るからさ」


 僕は右腕を出し、シトラに見せる。


「そう言えば、昨日治してたわね。あんなグシャグシャになってたのにすぐ治ってた。腕が取れたらどうなるのかしらね?」


「さあ、僕も腕は取れた覚えがないから、わからない。でも、欠損部位も治せるんだから、普通に生えてくるんじゃないかな」


「もう、人間じゃなくなっちゃったのね」


「かもね。でも、僕は人を捨ててでもシトラを取り戻したかったんだ。愛するシトラをね」


 僕はシトラの左頬にキスをして微笑んだ。


「な……。ば、馬鹿……。私がキースのこと大っ嫌いだったらどうするつもりだったの?」


 シトラは左頬を手で押さえ、顔を赤らめる。


「そりゃあ、諦めたかな……。僕のことが嫌いなシトラを旅に連れてきても辛いだけでしょ。だから、諦めざるを得なかったかもしれない。でも、諦めずに告白し続けていたかもしれない」


「一二年も一緒にいて好意に気づかないのは相当やばいわよ……」


「はは……。え……シトラも僕のことが好きだったの?」


 僕は衝撃の事実を知った。


「相当やばい人ですね、キースさん……」


「ま、キースはこんな男なのよ……」


 僕はシトラとミルに少々引かれた。シトラが僕のことを思っていたなんて知る由もなかった。


「ま、まあ、結果はよくなったんだからいいじゃん」


 僕は話の流れを切る。


 二名はジト目をしながら僕を見てきた。相当やばい人だと思われているようだ。


 僕達はお風呂からあがり、夕食にした。シトラの手料理はいつも通り美味しく、会話をしている間に無くなってしまう。いつの間に食べていたのだろうと疑うほど、すぐに無くなった。


「ふぅ、ごちそうさまでした。じゃあ、二人はもう寝るのかな?」


「そうですね。キースさんと寝たい気はやまやまですけど、シトラさんと一緒に寝ます」


「私と寝るのが嫌みたいな言い方ね……」


「別に嫌じゃありませんよ。キースさんとシトラさんが二人で寝られる方がぼくは嫌なのでシトラさんと一緒に寝ます」


「私とキースがくっ付くのを防止するために私と寝るのね……。もう、可愛くない子」


 ミルとシトラは歯を磨き、トイレを済ませてから寝室に向かう。アルブもふらふら~っと飛んで行き、シトラの胸にくっ付いた。眠たいという感覚がアルブの中でもあるのだろう。


「じゃあ、キースさん、お休みなさい」


 ミルは深々とお辞儀をして居間を出て行く。


「キース。お休みなさい」


 シトラは頭を下げず、淡々と呟く。


「うん。お休み、二人とも。アルブもね」


「ふわぁ~い、主、お休みなさい……」


 アルブはシトラに抱かれ、すやすやと眠っていった。


 二人は居間を出て行き、扉を閉める。


「ふぅ……。鍛錬をするか」


 僕は庭に出てフルーファを振る。


 フルーファの重さを通常の八○○倍にして自分の体に掛かる負荷を大きくしながら鍛錬していった。武器が重くなるだけで、鍛えられている感覚が得られる。


「ふっ! ふっ! ふっ!」


 物凄く重いフルーファを縦に振り、腕を鍛える。形状は斧で、先端の方が重いため更なる荷重がかかる。体が悲鳴をあげるようにぴくぴくと動き、楽しくて仕方がない。


「もっともっともっと……。体の限界を超えるんだ……」


 鍛錬をするたびに強くなれる悦びを知っている僕は辛くても、頑張れた。


 辛ければ辛いほど効果は上がり、今の自分を越えられる。お金を掛けず、ここまで楽しめる鍛錬は最高の趣味と言えるだろう。


 僕がフルーファを振っていると空が明るくなってきた。


 どうやら夜明けらしい。いつの間に八時間も経ったのだろうか……。


 明りが出たことで自分の様子がよくわかる。ふと手を見ると、皮がむけていた。加えてフルーファの持ち手が血みどろになっている。


 手の平はあっという間に治り、痛みは引いた。


 家の中に戻り、フルーファの持ち手は濡れた布で拭き、綺麗にする。


 僕の汗や血がフルーファに飛び散り、少々汚れていたので、全体を綺麗に拭いていく。汚れを綺麗に落としたあと、剣を手入れするさいの油を少々たらし、乾いた布で綺麗に磨いていく。


 フルーファの刃は研ぐ必要が無く、使うたび勝手に綺麗に研がれるようだ。まあ、猫が自分の体を綺麗に舐めるのと似ている。


 僕が油を塗るとフルーファは悦び、輝きを増す。大分信頼関係が築けたのではないだろうか。


 持ち手がしっかりと馴染むと言うか、使い心地が各段に向上しているとわかる。


「よし、手入れ終了。次は包丁の方を研いでおくか」


 僕はドリミアさんに貰った包丁を砥石で研いでいく。日課になった作業で、研ぎ終わると新品同様の切れ味をほこった。最近は僕が使うよりもシトラに使われる機会が多い。その度、シトラは包丁の切れやすさに驚き、自分も欲しいと言っている。


 包丁を水で洗い、綺麗にした後、調理場の包丁入れに置いておく。フルーファは僕の寝室の壁に掛けた。少しの間休憩させないと、武器も疲れてしまう。


「さて、僕も休憩がてら、お風呂に入りますか」


 僕は汗でベタベタになった服を脱ぎ、洗濯籠に入れておく。源泉かけ流しなので綺麗なお湯が湯船にすでに溜まっていた。


 かけ湯をして体の汗を流したあと、浴槽に入りお湯につかる。鍛錬で疲労した体にお湯が染み渡るようで、心地よすぎた。


「ん~。今日の天気は雨っぽいんだよな。仕事できるかな……」


 僕はお風呂場に開いている小さな窓から見えるどんよりとした雲から、雨が降ると予想した。案の定、僕がお風呂に入っている間に、雨が降ってきて土砂降りになる。地面に打ち付ける水滴が大きな音を鳴らし、梅雨の再来を感じた。


「雨の音を聞くのもたまには悪くないな」


 僕が雨の音を聞いていると、お風呂の扉が開き、ミルが入って来た。木製の桶を持って体に付いた寝汗を流し、お湯につかる。


「ふぅ~。キースさん、おはようございます。今日はあいにくの天気ですね」


 ミルは僕の肩に頭を乗せて耳をヘたらせながら呟いた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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