ミルとシトラの組手
「もうミル。シトラと張り合う必要はないよ。十分可愛いんだからさ、そんなに怒らないで」
「怒ってません。ぼくはキースさんとキスしたくてたまらないのに、キースさんは全然そんな気が無い。それが不甲斐ないだけです」
ミルは僕とシトラがキスしていたのがとても羨ましかったようで、今も気にしている。
「ミルの誕生日まであと二カ月を切っているんだよ。そこまで我慢しよう。そうすれば僕も気兼ねなくミルと関係を持てる。あと少しの辛抱だよ」
僕はミルのおでこにキスをして少しでも機嫌を直してもらおうと考えた。
「うぅ……。あと二カ月が物凄く長く感じます……。ぼくの誕生日を一ヶ月前倒しにしたら……」
「そんなズルをしても神様が見てるから駄目。潔く八月三一日までまとう」
「は、はい……」
僕はミルの背中にギュッと抱き着いて小さな体を腕の内に収める。
ミルは僕の頬にキスをしてきて僕の方を向き、抱き着いてくる。僕の耳たぶを甘噛みしたり、頬擦りしてきたりとたくさんの愛情表現をしてきた。そのたび、僕はミルの背中を撫でたり、腰をトントンと叩いてあげる。
ミルは嬉しすぎてゴロゴロと言う音を喉から鳴らし、尻尾をうねらせる。
「…………あ~、もう。集中できない。やるなら他所でやって!」
僕とミルが抱き合っていると、赤面しているシトラが僕達の方を向き、大きな声で怒鳴った。
「いや、僕はシトラの鍛錬をしている姿も見たいんだよ。すごく綺麗な型になってきているし、無駄が見当たらない。頑張っている姿がカッコよすぎて眼が離せないよ」
「も、もう……。褒めるのが上手いんだから……。どうせ胸とお尻を見てるんでしょ」
「ちょっとね」
僕は親指と人差し指を近づけ、少しの量を表す。
「キースの変態……」
シトラは視線をプイっとそらし、乾いた布を持って汗を掻いた顔を拭く。
脇や胸などに掻いた汗も拭き、水を飲む。すると涼しい時間帯になってきたのか、シトラの体が外気よりも熱いらしく全身から汗が蒸発し、色っぽく見える。
「ミルちゃん。組手の相手をして」
「むぅ……、今、いい所だったんですけど~。まあ、丁度動きたくなってきたころだったので受けて立ちます」
ミルは裸足で庭に出る。地面が芝生のようになっているため、足裏は痛くないはずだ。
「今日は帰ってくるのが早かったけど、何かあったの?」
「仕事先で色々ありまして、依頼をこなさずに帰ってきました。シトラさんの方は今日、どんな一日だったんですか?」
「浴衣の洗濯をお願いしたら、一着金貨一枚でいいと言われて困ったわよ。その後お金をどうしようか考えて歩いていたら家に着いてた。残り物で昼食を作って得たあとずっと鍛錬をしてた」
「ぼくたち、お金を持っていても全然使いませんね。なんででしょうか?」
「ほしい物が無いからでしょ。逆に欲しい物が出てきたらすぐに買っちゃう。昨日の祭りで知ったわ」
「はは、そうですね。で、シトラさん。今、紐みたいなパンティーを履いているんですか?」
「さ、さぁ……。どうでしょうね。別にミルちゃんには何も関係ないと思うけど」
「そうですね。ぼくには関係ありませんでした。でも、キースさんに体を見られて胸の先っぽをとがらせないでくださいよ」
「え……、やっ」
シトラは自分の胸をすぐに見る。だが、特に尖っている部分はない。
シトラが胸を見た瞬間にミルは動き、回し蹴りを放った。体のしなやかなミルが放つ回し蹴りは鞭のように撓っており、力が先端にしっかりと伝わる。
ミルの誘導にまんまと引っ掛かり、シトラは先制攻撃を許した。体を反らせ、蹴りを躱すも、ミルの攻撃は止まらない。
シトラは防戦一方になり攻撃を躱すだけに徹していた。だが、そうなると……。
「くっ、壁……」
「はっ!」
シトラは後方に下がりすぎて逃げ場を失い、ミルの攻撃を避けられない。そのためミルの攻撃を腕で防ぎ、左側に弾き飛ぶ。そのまま、威力を殺して着地した。
「はぁ、はぁ、はぁ……。危なかった……」
「あと少しだったんですけどね」
ミルとシトラは睨み合いながら中央付近にまで走り、握り拳を大きく振りかぶりながら合わせ、辺りの空気を振るわせたあと、ぼこすかぼこすかと殴る蹴るを繰り返し、競いあう。回避防御が間に合わないほどの連打攻撃を打ち合って互いに笑いあっていた。
「はぁ~、何とも荒々しいおなごたちだ。元気元気」
「主、孫を見るお爺さんのような雰囲気を放ってますね」
アルブは紅茶を飲みながら二人の戦いを見守る僕を見て呟いた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。ほんと、ミルちゃんはキースにべったりね……」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。それを言うなら、シトラさんはキースさんのパンツ、洗濯の時に毎回嗅いでるじゃないですか」
「なっ、あ、あれは体調管理がしっかりできてるかどうかを確認してるだけ! それ以外の理由はないわ」
「は~ん、そうですかそうですか。じゃあ、キースさんのパンツを被りながら発情を止める行為をしてもらわないでもらえますかね。ぼくだってキースさんのパンツ欲しいんです」
「わーわーわー!」
シトラは大きな声を出しながらミルに攻撃しに向かう。シトラの心は乱されている。あのまま攻撃したら確実にカウンターを食らってしまうだろう。
まぁ、ミルの言葉攻めに調子を狂わされているシトラの方がまだ未熟と言うことかな。
「さてと、お風呂でも入るか。ミルも入る?」
脱衣所に向かおうとする。
「あ、キースさんぼくも~! へぶしっ」
ミルは戦っている最中なのに僕の返事をしてシトラから攻撃を食らい、弾き飛ぶ。
「ふんっ!」
シトラの鼻息がスッキリしたと言わんばかりに凛々しく、ミルの方は眼を回しながら情けない恰好で伸びていた。
シトラとミル共に汗を掻きまくったので、僕達はお風呂に入る。
「はぁ~。もう、キースさん酷いですよ。あとちょっとで勝てそうだったのに~」
ミルは張れた頬を摩りながら呟く。
「ミルが勝手に反応しただけでしょ。最後まで集中していなかったのが負けた原因だよ」
「むぅ~」
「そんなにむくれないで。傷ついた部位は治してあげるから」
「前箇所キスして治してください。そうじゃないと許してあげません」
「なっ、はぁ、仕方ない」
僕はミルの打撲痕をキスして治す。顔や肩、腕、脚と言った具合に結構な数の傷があった。
「こ、これ……。ものすごく嬉しくなっちゃいます……。キースさんにいっぱいキスされちゃって体が熱くなっちゃいますよぉ……」
僕はミルの体に残っていた打撲痕を治した。
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