危険区域
「もしかすると甲虫なんじゃ。でも、冒険者の手引きには通常橙色から赤色に近いって書いてある。黒色の魔力を放っているなんて……」
「キースさん、万が一のことを考えて近くにいる冒険者さんを避難させましょう。あの中に入ったら危ないとぼくの体が言っています」
「そうだね。考えるよりもまず非難させよう。ミルは鉱山の方に近づかないように、周りの人に声をかけて言って。僕はクサントスギルド員の方に話を付けてくる」
「わかりました」
ミルは鉱山の周りにいる人達に危険だから離れた方がいいと忠告を出しに向かった。
僕も『橙の鉱山』の入口付近にいるクサントスギルド員の元へと向かう。
「すみません。鉱山の中から今すぐ出るように冒険者さん達に言ってください。至路ころから禍々しい魔力が放出されています。危険な魔物が活動を始めるかもしれません」
「え、いきなりそんなことを言われましても……。魔素の滞留量は標準値でしたし……」
「なら、もう一度測定してください」
「わ、わかりました」
ギルド員の男性は魔素の量を測るために大きな袋の中に外の空気を入れ、魔力が抜かれた魔石を袋の中に入れる。この色の変化で魔素を測るそうだ。
八分ほど待ち、袋を開けると黒々とした魔石が現れる。先ほどまでほぼ無色透明のガラスだったのに。
「こ、これは大変だ……。すぐに対応します! 知らせていただきありがとうございました」
ギルド員の方は僕に頭を下げ、魔道具で各場所にいるギルド員の方に連絡を取る。すぐに冒険者や一般人の避難が開始された。
体調の悪そうな冒険者さん達が入口からゾロゾロと出てきてギルド員の方が手動で名簿に記載していく。全員の非難が完了されたらしく、一般人立ち入り禁止区域になってしまった。
「キースさん、魔物が狂暴化していた原因が『橙の鉱山』の下にいる魔物の可能性が高いですね。強い魔物がいる時ほど周りの魔物も強くなりますし」
ミルは人々の避難が完了したので、僕のもとに戻って来た。
「そうだね。魔力の色からしてロックアントの女王と同等、又はそれ以上かもしれない。最悪の場合、ブラックワイバーンくらい強いかも」
「ひぇ……。ぼく、あんな怖い思いは二度としたくありませんよ~」
ミルは僕に抱き着きながら泣き言をいう。
「はは……。僕だってなるべく戦いたくない。でも、この前みたく、僕達二人で戦う訳じゃないんだ。多くの冒険者さん達と一緒に戦えるから、恐怖しすぎる心配はない」
「確かに、そうですね。この前はぼくとキースさんの二人っきりでしたけど、今回は競争している訳ではないですし、皆で力を合わせて戦えば勝てますよね。何たって、今回は橙色の勇者も味方ですし」
「うん。橙色の勇者ほど心強い存在もなかなかいない。きっと大丈夫。なんなら、勇者一人で倒せる魔物かもしれない」
「そうだと良いですね……」
僕とミルは魔物の発生に備え『橙の鉱山』に待機していた。その間、体をなまらせないように組手を行い、温めておく。周りの冒険者さんは回復薬や回復魔法を受け、魔素を対外に排出していた。午前中には魔物が現れず、昼を迎える。
「昼になっても出てきませんね……。はむ……。美味い! キースさん、このカレーパン、冷めていても美味しいですよ」
ミルは昼食のために買ったカレーパンを食べ、耳と尻尾を大きく動かす。
「ほんと? どれどれ……」
僕もカレーパンに齧り付く。しんなりとした揚げパンの中から溢れ出すほどのカレーが口に入ってくる。パンパンすぎると思いながらも、気温が暑い中、少々冷えたカレーパンがより一層美味しく感じられた。
無我夢中で食べ進めるとあっという間になくなってしまった。
アルブなんて顏をカレー塗れにして一か所だけ橙色になっている。水で洗い流し、ハンカチで拭いてあげると、白い綺麗な個体に元通り。
「アルブ、もっと綺麗に食べないと体が毎回汚れちゃうよ」
「すみません、美味しすぎてつい貪り食ってしまいました。モグモグ……」
アルブは口を動かしながら呟く。
昼食を得た後、僕達は午後二時頃までずっと待っていたのだが、魔物が現れる気配が無い。魔素の量は変わらず、隙間から大量に噴出しており危険な状態には変わりない。
「じゃあミル、今日はいったん帰ろう。他の冒険者さん達が見張っていてくれるから、安全のはずだ。明日から僕達は別の場所の依頼を受けるようにしようか」
「そうですね。ずっとここにいてもいつ魔物が出てくるかわかりませんし、時間がもったいないです」
僕達は『橙の鉱山』をあとにした。
クサントスギルドに依頼未達成の報告をした後、家に戻る。
庭でシトラが鍛錬をしており、集中しまくっていた。鍛錬以外のことが頭からすっぽ抜けているらしく、獣そのものの本能に近そうだ。
僕はシトラの集中力を切らさないように家の鍵を使って家の中に入った。そのあと僕達は手洗いうがいをして椅子に座りながらシトラの鍛錬を観察する。
シトラは広い庭の中で堂々と立ち、体を大きく使って拳、蹴りなどを空中に繰り出す。止まらない連続の攻撃中は息を止めているためなせる業だ。
攻撃が終わると息をゆっくりと吸いながら心拍を整えている。尻尾がゆっくりと揺れておりとても心地いい状態のようだ。
――ん~。柔らかそうな胸、大きなお尻……、引き締まった腰、長い脚、ムッチリとした太ももすべて良い。加えて真剣なまなざしと汗を滴らせる肌、柔らかかった唇……。
僕はシトラの型を見ていたはずなのに、いつの間にかシトラを見ていた。
「むぅ~。キースさん、シトラさんばっかり見すぎです~」
僕の視線にミルがひょっこりと現れた。頬をぷく~っと膨らませており愛らしい。構ってほしい猫ちゃんは膝に座り、尻尾で僕の顔を叩く。
「ごめんごめん。でも、ミルはさっきまで僕と一緒に鍛錬してたでしょ。あれじゃあ足りないの?」
僕はミルの頭を撫でながら質問する。
「全然足りません。ぼくはキースさんとずっと一緒にいたいんですよ。でも、我慢しているんです。あと、キースさんがシトラさんを見るときの目がぼくを見る時と全然違うのも悔しいです。ぼくだってシトラさんには劣りますけど良い体をしてるんですよ」
ミルはローブを脱いでいるため、上半身は胸を隠すための胸当てしか着けておらず、お腹まわりは生肌を曝し、綺麗なくびれを見せていた。下半身はショートパンツしか履いておらず、大きなお尻が太ももに当たり柔らかい。
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