朝からカツカレー
僕がお風呂に入っていると、ミルとシトラもお風呂場に入ってくる。両者は体にかけ湯をして汗を流した。
「ふぃ~。いや~、熱くてもお風呂には入っちゃいますよね~。体がベトベトすぎて入らざるを得ませんでしたよ~」
ミルは僕に寄り添いながらお湯に入り、つぶやいた。
「キース。お金はしっかりと管理しないと駄目じゃない。畳の上に置きっぱなしだったよ!」
シトラは僕に怒りながらお湯につかる。
「あのお金は昨日倒した魔物の魔石を換金してきたんだよ。シトラに渡しておけば、浴衣の洗濯費用にしてくれるかなと思ったんだ」
「あ、そうだったの。ごめん、怒っちゃった……」
シトラは耳をヘたらせ、俯く。
「気にしないで。シトラに怒られるなんて僕からしたらご褒美だから」
「その言い方だと物凄く気持ち悪いわよ」
「ごめん。叱ってくれる相手がほぼいないからさ、シトラに叱られると僕のことを思っていてくれているんだなって感じるんだ。だから、怒ってくれてありがとう」
「ど、どういたしまして。私、キースを怒る時、毎回嫌われるのを覚悟で言ってるから、気が楽になった」
「そうだったんだ。僕がシトラを嫌いになるなんてありえないよ。もう、天地がひっくり返るくらいあり得ない」
僕はシトラの肩に手を回して身に近寄せる。
「そ、そんなはっきり言われると反応に困る……」
シトラは頬を赤くして僕から視線をそらし、明後日の方向を見る。
「むぅ~! キースさんはカッコよすぎます! もっとカッコよさを押さえてください! あと、誰にでも優しすぎます! 優しくするのを押さえてください!」
ミルは怒り口調で話した。話している内容はお説教なのか誉め言葉なのか、わからなかった。
「ミル、僕は別に怒られるのが好きと言う訳じゃないからね。そんな怒り口調で話しても意味ないよ」
「そうなんですか? でも、ぼくは怒っているんです。キースさんがカッコよすぎることとか、優しすぎるところとか、強すぎるところとか、シトラさんが好きすぎるところか!」
「そんなこと言われても……。僕にはどうすることもできないよ」
「じゃあ、ぼくにも嫌いになるなんてありえないって言ってくださいよ」
ミルは僕の腕を掴み、頬を膨らませて言う。どうやら、シトラに嫉妬しているようだ。
「僕はミルがどれだけ破廉恥な子でも絶対に嫌いになったりしないよ」
「なっ! ぼ、ぼくは破廉恥なんかじゃありませんよ!」
ミルは元気よく怒りだし、僕の体を揺すった。朝から元気なこった。
僕達は体を洗い、運動して掻いた汗や寝汗を落とす。
「ふぅ~。さてと、今日は何にもない普通の一日だ。僕とミルはギルドに行ってシトラは自由。メイドの仕事を多くしてくれてもいいし、鍛錬に専念してくれてもいい」
「わかりました!」
「ええ。わかった」
ミルとシトラは互いに返事をして理解してくれた。
僕とミルはお風呂を上がった後、冒険者服を着て武器を装備し、クサントスギルドに向かう準備をする。
「よし、ミル、準備は良い?」
「はい、完璧です。熱くなってきましたし、キースさんの好きな大分きわどい冒険者服を着てきました~」
ミルは肩から羽織っているローブの裾を持ち、太ももをチラチラと見せてくる。むっちりとした太ももがさらけ出され、下尻がはみ出そうなほど短いショートパンツを履いていた。
「仕事中に僕を誘惑しないようにね」
「は~い」
ミルは手を大きく上げて返事をする。
「じゃあ、キース。私は浴衣を綺麗に洗ってくれる業者に持っていく。このお金を使えばいいんだよね?」
シトラはメイド服を着ており、中金貨七枚が入っている袋を持っていた。昨日の戦いでドロドロになった浴衣を洗濯業者に持って行ってくれるそうだ。
「うん、その中に中金貨七枚が入っているから、洗濯代金に使って。あとのお金はシトラが自由に使っていいよ」
「なっ! ば、馬鹿なの。中金貨七枚って洗濯代に中金貨一枚も掛からないと思うし、さすがに貰えない」
シトラは中金貨一枚を手の取り、残りを僕に返そうとしてきた。
「いやいや、シトラにはいつもお世話になっているからさ、持っておいてよ。へそくりにでもしてもらっていいからさ」
僕はシトラの手に中金貨六枚を置き、ギュッと握らせる。
「も、もう……。甘いんだから……。ミルちゃんが怒ってるじゃない。三人で倒したから三等分にしましょう」
僕はシトラに言われ、ミルを見ると頬を風船のように膨らませており、今にもはち切れそうだ。
「そ、そうだね。じゃあ、洗濯代の中金貨一枚を使うとして、のこりは皆に二枚ずつで」
僕はシトラの手から中金貨二枚を貰う、ミルも中金貨二枚を受け取り、ご満悦だ。
「アルブ。仕事に行くよ~」
僕は未だに眠っているアルブに声をかけた。
「ふわぁ~い」
アルブは襖を開けて床を這いながら移動していた。上からみると翼の生えた太っている白い蛇に見える。
僕は脚下に寄って来たアルブを肩に乗せて撫でた。
「じゃあ、朝食は各自で取ってね。今日も午後三時くらいに帰って来る」
「わかった。気を付けてね」
「うん。行ってきます」
僕はシトラに家を出る挨拶をした。
「いってきまーす」
ミルもシトラに家を出る挨拶をする。
「ええ、行ってらっしゃい」
僕とミル、アルブはシトラに見送られながら家を出た。そのまま朝食と昼食を買うために、市場に向かう。
「何がいいかな~。ミルは朝に何が食べたい?」
「ん~。がっつりした食事がいいですね。カツカレーとか」
「が、がっつりしすぎな気がするんだけど……」
「朝はどれだけ食べてもすぐにお腹が減っちゃうじゃないですか。なら、たくさん食べておいた方が動けるかなと思って」
「なるほどね。じゃあ、朝っぱらからカツカレーでも食べようか」
「はい、そうしましょう!」
僕とミルはカレーが有名なお店にやって来た。クサントス領に来てから初めて入った思い出のあるお店だ。
「いらっしゃいませ~!」
店員さんは朝っぱらから元気がいい。僕達意外にお客さんはおらず、貸し切り状態だ。
「カツカレーを三杯お願いします」
「わかりました! カツカレー三杯入りました!」
「ありがとうございます!」×店員さん一堂。
僕とミルは四人席に座り、アルブを椅子に座らせる。
僕は置かれたコップに入った水を飲む。冷たくて美味しい。
「カツカレー大盛り三杯お待ち! 野菜サラダとラッシーはおまけね!」
店員さんは頼んでもないのにカツカレーの大盛りと大皿に入ったサラダ、真っ白なヨーグルト風味の飲み物を置いていく。
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