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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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マクロープス

「ぷんぷんっ。ほんとぷんぷんっですよ。シトラさんが抜け駆けするなんて思いませんでした!」


 ミルはシトラの方を向きながら怒っていた。


「ご、ごめんね。私も何でしたのか、わからなくて。あれが場の雰囲気ってやつなのかな……」


 シトラは口もとに手を置き、ぼそぼそと呟く。


「シトラは場の雰囲気に飲まれて僕とキスしたの……。そうだとしたら、なんかなぁ~」


 僕は少々意地悪な発言をする。


「ちょ……。そ、そう言う訳じゃなくって場の空気に飲まれてキスしたい気持ちが強まっちゃったの! はっ!」


 シトラは大分恥ずかしい発言をしたと知り、耳をとがらせたあとに髪に付きそうなほどヘたらせて顏を赤く染めた。


「へぇ~、シトラは僕とそんなにキスしたかったんだ~。ふ~ん」


「ちょ、調子に乗るな!」


 僕はシトラの拳を顔面に受けて吹っ飛んだ。橙の泉周りに生えている木々を数本なぎ倒して停止する。


「痛たた……。もう、思いっきり殴りすぎだよ……」


 僕は頬を摩りながら二人のもとに戻って来た。肩に乗っていたアルブは当たり前のように空中に浮いている。


 僕たちの紙灯篭はロウソクの明りが消えた。


 すると、運営の方達が船で灯篭を回収し、地面に設置されている台の上に乗せて新しいロウソクに入れ替え、火をともす。


 運営の方は最終的に残った紙灯篭を回収すると言う。台に置かれた品は橙色武術祭が終わるまで大切に保管されるそうだ。


 時間が立ち、二つ、三つと紙灯篭が『橙の泉』に到達する。


 その度、台に置かれている紙灯篭の数が増えていく。多くの者の願いが公開され、見られてしまうのはとても恥ずかしい。


 シトラは自身の恥ずかしい夢を公開され、逃げ帰りたそうにしていた。僕はシトラの手をがっしりと掴んで逃がしはしない。


 川に沈んだ紙灯篭は橙色武術祭の最終日までに回収され、盛大に燃やされるそうだ。


 川に流れている紙灯篭が無くなり、僕たちは空に広がる星を見て気を安らかにする。『橙の泉』にも星の明りが映り、空と水面が二倍綺麗に見えた。


「これが星祭か……。お金を払う価値はあるね」


「そうですね……」


 ミルは僕に寄り添い、夜空を見上げていた。


「うぅ…………」


 シトラは逃げだしたい思いが止まらず、じっとしていられない。


 僕はシトラを逃がさないよう、肩を抱き、身にギュッと寄せる。このままキスしたら気分がいいんだろうなと思いつつ、ミルの視線があるので難しい。


 僕たちが夜空を楽しんでいると、周りの空気が不穏になって来た。


 どうやら『橙の泉』周辺で魔物が出たようだ。冒険者が見張っていたそうだが、やられたのか、はたまたさぼっていたのか。どっちみち、突破されていたら関係ない。


「皆さん、『橙の泉』付近の森で魔物が発見されました。万が一の時に備え、運営の指示に従って直ちに非難してください! 繰り返します! 『橙の泉』付近の森で魔物が発見されました。万が一の時に備え、運営の指示に従って直ちに非難してください!」


 運営の方が音を広げ、この場にいた人たちに情報を届ける。冒険者らしき人達は魔物の討伐に向って入った。まあ、ここはクサントス領の外だから仕方ない。魔物が出るのも必然か。


「僕たちはどうしようか。運営の方とクサントスギルドの人たちに任せる?」


「ぼくたちは観光客ですし、別に手を貸す必要もなさそうです。魔物はマクロープス一頭なので、手間取らないと思います」


 ミルは音と匂い、肌の感覚で魔物が何かわかっていた。


「マクロープスか……。ホーンラビットよりも強いね」


「冒険者手引きによると、主に『橙の草原』にいる魔物みたいです。体長は大きい個体で二メートルを超え、岩をも砕く拳と蹴りを放って来ます。時速六〇キロメートルで走れるそうなので、身体強化をした人と同じかそれ以上の力を持っているようですね」


「な、なかなかにやばい魔物じゃい……」


 シトラは一応ギルドカードを持っているが、身分証明のために取っただけなので、魔物との戦闘経験がほぼ無い。そのため、少し怖がっていた。


「僕たちもマクロープスと戦った覚えはないけど、冒険者数人掛なら難なく倒せるはずだよ。さ、僕たちはクサントス領に戻って眠ろう」


「そうですね。もう真っ暗ですし、帰りましょうか」


「あなた達……、もうちょっと緊張感を持ちなさいよ……」


 僕とミル、シトラの三人は運営の方達に誘導され、クサントス領付近にまでやってきていた。


 だが、後方から土煙が上がり、何か物凄い速度で走ってくる。


「ベッベッベッベッベッベ!」


 全身が筋肉質の魔物が二足歩行で走って来た。暗いので、見えづらいが全身に血を被っている。


 ――魔物が冒険者達を倒してまで追ってくるなんて何が目的なんだ。大勢の人につられてきた可能性もなくはないか……。


「きゃあああ~!」×大勢の人


 魔物の接近に気づいた人々は我先にと走り始める。運営の方達は冒険者ではなくただの一般人なので戦闘力はそこまで高くない。なので街の人たちと一緒に逃げていた。


「はぁ……。責任は取ろうよ……。まぁ、緊急事態なのは仕方ないんだけどさ」


 僕は時間稼ぎをするつもりで、マクロープスの前に立つ。馬のような顔にあまり長くない腕、筋肉質な体と太い脚、全身に橙色の魔力を纏っており、筋肉によって生み出される攻撃力が上がっていると思われる。


「ベッベッベッベッベッベ!」


「なにを目的にしているかわからないけど、気分を壊されるのは許せない」


 僕は背中に手を伸ばすも、フルーファを家に置いて来たことを思い出す。どうやら、護身用のダガーナイフで肉弾戦をしなければならないらしい。


 マクロープスは地面を強く蹴り、跳躍する。そのまま踵落としを僕の頭上に繰り出してきた。僕は紙一重でかわし、回し蹴りを敵の顏に打ち込む。

 すると爆発したような大きな音を鳴らしながら、マクロープスは左側に蹴り飛び、地面を何度も跳ねながら土煙を纏うように巻き上げ、盛大に転がる。


「夜目は利かないけど、魔力は良く見えるんだ」


 僕は魔力視を発動しており、マクロープスの存在がはっきりと見えていた。


「ベッベッベッベッベッベ!」


 マクロ―プスは転がりながら力を分散させ、速度が落ちて来た頃に、地面を手で押しながら空中で後転し、体勢を立て直す。


 僕は結構思いっきり蹴ったつもりだったが、マクロープスの体が魔力で強化されているだけあってしぶとい。物理攻撃に耐性を持っているのかもしれない。


「ベッベッベッベッベッベ!」


 僕を攻撃対象と定めたのか、マクロープスは低い体勢で加速し、攻撃してきた。

 けり技に殴り技など、多彩な動きをしてくる。戦うのが好きな魔物なのかもしれない。僕も経験を積もうと考え、拳と蹴りだけで戦っていた。ただ……。


「ベッベッベッベッベッベ!」


 マクロープスの太い脚がしなり、僕の顔に飛んでくる。


 さすがに直撃を受けるわけにはいかなかったので、腕で防いだ。


「くっ!」


 マクロープスの蹴りの威力が尋常ではなく、腕でしっかりと防いだと思ったら容赦なくへし折られ、弾き飛ばされる。


 油断していたら頭が飛び、さすがに死にそうだ。

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