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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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五割引き

「はあっ!」


「ふくっ!」


 べニアさんは猛攻し、ライアンは堪える。


「くっ……」


 べニアさんが疲れからか、少し前のめりになって倒れかける。


「はあっ!」


 少しの隙も逃さないライアンの拳がべニアさんの体に撃ち込まれた。だが、狙っていたかのようにべニアさんの体の動きが切れを増し、ライアンの拳を回避した。

 べニアさんは体勢を崩したまま、カウンターを放ち、ライアンの顔に拳が直撃する。


 空気が痺れるほどの衝撃波が起り、ライアンは千鳥足になりながら後退し、地面に倒れそうになるも、気力で耐えていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。頑張れ……俺。もう少し耐えろ」


「ほんと打たれ強いな。本気の拳を何発撃ち込んでいると思っている。さっさと倒れなよ」


「ギルドマスターも相変わらず魔力量が多いな。いったいいつまで身体強化が続くんだよ」


 ライアンとべニアさんは互いに息を荒げていた。そのまま両者共に倒れ込み、動かなくなる。


「な……。引き分け……。この場合、いったいどうなるんだ」


 僕が呟くと、試合場の外から女性の運営が走り、二人の状態を見る。


「べニアさんとライアンさん両者共に戦闘不能。よって、男女ともに祭りの商品が五割引きになります!」


 運営の女性が魔道具に向って声を出す。大きな声に増幅され、闘技場全体に知れ渡った。


「ウオオオオオオオオオ!」×会場の人々。


 会場の声と共に目を覚ましたべニアさんとライアンは立ち上がり、握手をして皆に礼をしていた。最後まで礼儀正しい。歓声と共に大きな拍手が送られ、二人は試合場を出る。


「では皆さん。引き続き、星祭をお楽しみください!」


 運営さんが話すと、勢いよく外に飛び出す者がいたり、エール瓶を大量に買う者が現れた。


「さすが、景気の良い領土はやることが違うな……。男女で五割引きだったら、二人合わせたら七.五割引きになるじゃないか。そりゃあ、皆買うよな」


「キースさん、何ぼんやりしているんですか! ぼく達も買い物に行きましょう!」


 ミルは目を輝かせ、商品を買う気満々だ。


「安い時に買うのがメイドの腕の見せ所、キース、行くわよ!」


 シトラは袖を捲り、やる気満々だ。


「ふ、二人共。お金を無駄遣いしないようにね……」


 僕は二名の買い物に付き合わされる羽目になった。どうも、二人共買い物が好きなようだ。


 午後は祭り会場が大賑わいになり、皆、買い物を楽しんでいる。なんせ、全品五割引きなのだ。そりゃあ、普段買い物を渋っているミルもお金を使いたくなってしまう訳だ。

 着るのかもわからない服や使うのかもわからない武器。その他諸々、手荷物がパンパンになるほど買っていた。もう、金貨一〇枚くらい使っているんじゃなかろうか。


 シトラも、食材や包丁、料理道具など、もっていない品を購入し、羽振りがいい。ただ、時おり使いどころのわからない下着や服を買っている。


「二人共、色々買い過ぎなんじゃ……」


「キースさんも買った方がいいですよ! 五割引きですよ、五割引き!」


「ミル、惑わされないで。安くなっているからと言ってたくさん買ったら意味が無いよ。本当に必要な物なのか考えて買わないと、またお金の無駄遣いをする羽目になる」


「どれもこれも、良さそうに見えて仕方ないんですよ~。ぼくは何も持っていないので、たくさん買いたくなってしまいます~。あ、おじさん。この玩具くださ~い」


 ミルは普段なら絶対に買わないような品も購入し始めた。どうも歯止めが利かないようだ。


 ――おかしい。倹約家のミルがここまでお金を使うなんて……。


 僕は魔力視でミルの姿を見た。すると、頭に橙色の魔力が見える。どうやら、魔法に掛かっているらしい。ミルの頭に手を当てて魔力を吸い取った。


「あれ? ぼくは……。ん? え! なんですかこれ、玩具。なんでこんな無駄な物を……」


 ミルは手に持っている剣の玩具を見て驚愕していた。あまりにもいらなすぎる。


「これ、返品します」


「返品は出来ないよ。何たって五割引きの商品だからね。割引の商品は返品不可能だ」


「そ、そんな……」


 ミルの手には金貨一枚の剣の玩具がある。玩具にしては高い。


「き、キースさん。ぼくはどれだけ無駄な物を買っていたんですか?」


 僕はミルの買った品をまとめた麻袋を渡す。


「は、派手過ぎる服に、ダサすぎる下着、レンズの入っていない眼鏡、その他諸々……。な、何ですかこれ。無駄な品ばかりじゃないですか!」


 ミルはかぼちゃパンツを握りしめて怒る。


「ミルは五割引きと言う甘い言葉に騙されて商品を買ってしまったんだ。でも、いつ魔法を掛けられたんだろう。考えられるのは闘技場だよな。でも、誰が掛けたんだ?」


 僕が考えていると、ミルが僕の体をシトラの方に向けさせる。


「あ、シトラに掛けられている魔法も解かないと」


 僕はシトラの頭に手を置いて魔力を吸い取った。


「うんっ……。あれ? 私は……」


 シトラは高そうな食器を持って買うかどうか考えていた。自分の意見をギリギリ持っていたようで、即決買いはしていなかった。今持っている茶碗を買っていたら金貨二〇枚が飛んでいた。まぁ、普通に良い品だけど、毎回使う訳じゃないから、無駄遣いに近い。


「私はいったい何をしていたの?」


「買い物をしていたんだよ。シトラの羽振りがよくなっていたんだ。覚えてないの?」


「なんか買っていたような記憶はあるんだけど……」


 僕はシトラの買った品を渡す。


「え、こんなにたくさん買ってたの? 嘘でしょ……」


 シトラも驚くほど、品を買っていた。ミルほど無駄な品は買っていないが、それでも不必要な品はある。驚くほど破廉恥な下着とか、露出度の高い服装とか。


「な、何よこれ……。こんなのほぼ紐じゃない……」


 シトラは黒い紐状の下着を手に取り、顔を赤くしている。すぐに麻袋に戻し、口をぎゅっと縛る。二度と開けられることはないかもしれない。


「ここにいる人達皆、魔法を掛けられているのかな?」


 僕は魔力視で見てみるも、全身に橙色の魔力が流れているため、見分けがつかない。


 本当に買う気があるのかもしれないし、僕たちにとっては被害が出なかった。ただ、歯止めが効くのかどうかと言うことが、問題だ。手持ちのお金が無くなるまで買い物を続けてしまったら、どうする気なのだろうか。


 僕達は欲しい品が買えて嬉しいと言っている人たちを見ながら、家にいったん帰る。時間を少しおいてから、もう一度見に行ってみることにした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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