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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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草刈りと朝食

「ミル、尻尾は背中? それ以外?」


「にゃ、にゃぁ……。し、尻尾は……、せ、背中ですぅ……」


 ミルから尻尾が背中だと教えてもらい、しっかりと洗っていく。尻尾の付け根は流石に攻め過ぎだろうか。危険な行動はなるべく避けたい。なので無駄に攻めたりせず、引いておく。


 お湯で背中を洗い、尻尾に着いた石鹸も落としていく。これで洗いあいは終了した。


 ミルは機嫌がいいのか悪いのかわからない表情を浮かべ、僕の方を見てくる。いったいどうだったんだろう……。聞くのも野暮か。


 僕たちはお湯の中にもう一度入る。やっぱりお湯につかれると言うのはとても幸せな気分になった。お風呂を出たあと、体を拭いて服を着る。


 庭の草むらから、虫たちの声が聞こえ、うるさいくらいだった。でも、自然が近くにあるようで心が落ち着く。どうしてこんなにも、いい場所が売れ残っていたのだろう。見かけのせいかな。そうだとしたら、もの凄くもったいないことをしていると言うことに気づけない人が何人もいるんだと知る。


 ミルとシトラは襖を開け、新調した敷布団で眠る。井草の折り込まれた床のにおいが心地いいらしく、二人共すぐに寝落ちした。アルブも共に寝てしまい、とても幸せそうだ。


 僕は草刈りと鍛錬を行うためにフルーファを持って庭に出る。大量の雑草が伸びまくっており、足の踏み場もない状態だった。


 フルーファを振り回し、雑草を刈っていく。


 虫達の居場所を奪っているようで申し訳なかったが、蚊などの害虫が繁殖するのを防ぐためにも、水が溜まりやすそうな場所は徹底して刈り取っていく。


 僕が草を刈ると、庭が驚くほど綺麗になった。まあ、引っこ抜いている訳ではないので、すぐに伸びてくると思う。でも毎日フルーファを振り回すと思うので僕がいる間は雑草が生えそろわないだろう。


 雑草は地面ギリギリで刈り取り、根っこだけにしておく。その方が生えそろう時間が稼げそうだった。


 雑草を切り取る作業は正確な位置に攻撃を与える鍛錬になり、とても楽しい。感覚で言えば的当てのようだ。狙った位置ですっぱりと切れれば気持ちがいいし、狙いが良かったと言うことで得点が高い。フルーファが地面に当たったり、狙った位置の雑草が切れないと得点無し、そんなふうに遊びながら鍛錬をすると、苦なく動き続けられた。


「ふぅ。大分刈ったな。袋に入れてゴミとして処理してもらおう」


 僕は麻袋に刈り取った雑草を入れておく。夏になる前に刈り取っておいてよかった。八月とかになっていたらもっと伸びていただろう。


「よし、雑草を麻袋に入れ終わった。八○袋くらいになったかな。もっと大きな麻袋があればいいんだけど、それはそれでかさばるんだよな。ん? ああ、もうすぐ朝か。よし、お風呂に入ってから朝食を作ろう」


 僕はフルーファを綺麗に磨いてから、寝室に作られている剣起きに掛ける。大剣でもしっかりと掛けられる大きさに作られており、とても見栄えがいい。フルーファも喜んでいるのがよくわかる。アイクさんは庭に置きっぱなしだったもんな。


 僕は汚れてしまった服と体をお風呂場で洗い、体を綺麗にしてから、朝食作りに取り掛かる。


 キャベツ、トマト、キュウリなどの野菜を切り、サラダにする。


 四人分作り、木製の器に盛りつけた。ドレッシングは自家製。サラダ油と醤油、塩、ゴマなどを加え、さっぱりと仕上げる。


 硬めの黒パンを四枚に切り、バターを塗ってフライパンで焼く。表面が茶色っぽくなってきたら取り上げ、干し肉と眼玉焼きを乗せておく。


 サラダと主菜が作れたので、残る汁ものだ。鍋に井戸から取って来た水を入れ、数種類の香辛料を加えていく。余った野菜や野菜や干し肉も加え、スープカレーにしてしまった。


「ふぅ~。アイクさんのお店で働いていたおかげで朝食がパパッと作れてしまった」


 僕は木製の趣深いテーブルに料理を並べておく。壁に掛けられている年期の入った振り子時計を見ると、もうすぐ午前七時だ。庭の方から朝日が差し込んできており、とても清々しい一日の始まりを伝えてくる。


「ふわぁ~、へ? あれあれ、朝食がある!」


 ミルは寝ぐせでボサボサになった髪を手櫛で直しながら居間にやって来た。テーブルに並んでいる料理を見て眼を輝かせていた。


「や、やばい! 寝過ぎた!」


 メイド服が物凄く着崩れており、ブラジャーの肩紐が見えてしまっているシトラが慌てて居間にやってくる。


「あ、あれ? もう、朝食が出来てる……。もしかしてキースが作ったの?」


「そうだよ。黒パン干し肉エッグに、野菜サラダさっぱりソース掛け、具沢山カレースープの三品だ。冷めないうちに食べちゃおう」


「あ、ありがとう。まさか、ありあわせでここまで美味しそうな朝食が作れるとは……」


 シトラは目を丸くして感謝してきた。アイクさんのお店で働いてきたかいがあるもんだ。


「いい匂いです。早速いただきます!」


 ミルは椅子に座り、木製のフォークで野菜サラダを食べ、満面の笑みになる。モグモグと食べ進め、カレースープまであっという間に食べ終わってしまった。


「あぁぁ……。幸せ過ぎますぅ……。大好きな人が作った料理を食べながら、日光を浴びて元気が心の底から湧き上がってきました」


 ミルは僕に抱き着いて頬に熱いキスをしてくる。感謝の気持ちだろう。僕は櫛を取り出して寝ぐせのすごい髪をブラッシングしてあげると、さらに喜んだ。


「ごめん、キース。メイドの私がやらないといけなかったのに、手間かけさせちゃった……」


 シトラはしょんぼりして、過ってきた。シトラが仕事を間違えるのは珍しい、忘れることはもっと珍しい。きっとそれだけ疲れていたのだろう。


「いいよいいよ、シトラがぐっすりと眠れたのなら、僕としては本望さ」


「キース……」


 シトラは全ての料理を平らげた後、両手を握りあわせて神に感謝していた。椅子から立ち上がり、僕のもとに寄ってきてシトラ自ら僕の頬にキスしてきた。僕は驚いてしまい、顔が熱くなる。


「か、感謝の気持ち……。ほんと、嬉しかった」


 シトラ自らキスしてくるなんて初めてかもしれない。彼女も赤面し、視線を合わせていられないのか、すぐに反らしてテーブルの上に置いてある食器を片付け始めた。


 アルブは寝ぼけており、スープカレーの入っていた器を頭からかぶり、テーブルの上をさまよっている。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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