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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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相手の技を盗む

 シトラの相手は槍を持っており、攻防共に両立できる。対するシトラは拳のみ。自分から特攻するしか滴を倒す方法がない。


 まぁ、シトラの一撃が一発でも入れば瀕死になる。相手はカウンターを狙うのが研究された結果の対抗策な訳だが、シトラはどうやって返すのだろうか。


 試合が始まると、シトラは速攻を仕掛けるのではなくいったん立ち止まって相手の様子を窺い、攻撃を渋っていた。


 一度も攻撃せず、時間が経つとどちらも負けになるので早く攻撃したくてたまらないはずだ。


 両者共に残り一〇秒まで全く動かなかった。しびれを切らしたのは相手の方で攻撃態勢に入った。その瞬間を見逃さず、シトラは地面を蹴る。


 シトラは一気に加速し、攻撃態勢に入った。すぐに回避できなかった相手の顔面に目一杯引いた右拳を思いっきり叩き込む。


 相手の顔が陥没したんじゃないかと言うくらい拳がめり込み、体を地面に叩きつけながら何度も跳ね、倒れた。


 残り五秒というギリギリの勝利。


 相手が攻めてこないなら共に待ち、最後の攻撃し合う数秒に絞って戦うと言う策略を考えたようだ。


 ミル、シトラ、どちらも理にかなった戦い方で他の者達が頭を悩ませているのがよくわかる。


 これで他の者は作戦を変えざるを得ないだろう。


 僕は二人の試合を見たあと、六勝一敗の人と勝負することになった。


 相手の方からお願いして来てくれてとても助かる。僕と戦ってくれた理由として、優勝候補と戦って自分の力を確かめたいと言う。向上心の強い方で、僕の身にも力が入った。


「よろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


 互いに礼をして試合場に入る。相手は武闘家で、武器は持っていない。なので、僕も拳を使う。フルーファは観客席にいるミルとシトラに渡しておいた。


「大剣は使わないのか?」


「相手が拳なので、僕も拳で行きます」


 試合開始の合図が出されると、相手は全身に身体強化を使うのではなく、脚にだけ使った。一気に加速し、僕の背後を取る。その瞬間には拳に身体強化を使い、高速な拳を放ってきた。


 僕は両手で防いだものの、威力が強く弾き飛ばされる。


 ――早い。今までの相手よりも身体強化の扱い方が上手いな。さすが六勝している相手。


 相手はこまめに身体強化を行う場所を変えていた。発動と切るを繰り返し、魔力の消費をできるだけ抑えている。その光景は魔力眼で相手の体を見るとよくわかる。橙色の魔力の位置が何度も切り替わっているのだ。そのため、長時間動いていられるのか制限時間、五分の間、疲れることなく攻撃し続けていた。


 ――このままだと、時間切れになる。加えて判定負けだ。僕も攻めないと。


 僕は数発攻撃を受ける覚悟で突っ込む。相手は拳に大量の魔力を溜め、打ち込んできた。その瞬間、僕の体に拳が入る。魔力が体を貫通し、放出された。魔力が体を貫通すると傷はないものの激痛が走った。


 顔を下げると相手の膝が飛んでくる。僕は魔力眼で攻撃が来るとわかっていた。ギリギリで身を半歩ずらし、攻撃をかわす。すると相手の腹部が開いた。


 ――今の攻撃。僕にも出来ないかな。


 僕は右手に魔力を溜め、相手の腹部に拳を当てる。そのまま、魔力を勢いよく押し込んだ。


「がはっ!」


 拳の威力と魔力が体を貫通する激痛が相手を襲う。男性は体を布団のように腰から折りたたみ、弾き飛んで壁に激突した。


「はぁ、はぁ、はぁ……。出来た……。よし!」


 僕はまた一歩強くなった。これで七勝。橙色武術祭の本祭に出場できる。あと三回出来るが、今行う必要もないだろう。本祭は八月に開催される。なら、六月と七月でしっかりと力をつけ、八月の本祭を楽しみに待とう。残りの三回は何もない日に消費すればいい。


 僕は観客席に戻る。


「キースさん、危なかったですね。でも、最後のズドンってやつ凄かったです。何がどうなってああなったんですか?」


 ミルは僕に近寄ってきて聞いてきた。


「えっとね、拳に魔力を溜めて殴ったのと同時に放出したんだ。そうしたら、魔力が相手の体を貫通して大きな痛手を負わせられたんだよ」


「へぇ~。じゃあ、練習したらぼく達にも使えるかもしれないってことですよね」


「そうかもしれないね。ミルとシトラの体にも魔力は流れているから、練習すればできるようになると思う。攻撃の威力を増したいミルは覚えられたら大きな力になりそうだね」


「はい。なので、ぼくも覚えたいです。仕事をしながら練習に付き合ってください」


「もちろん。あ、シトラにも教えるよ」


「ありがとう。でも、私は威力を増す方法よりも攻撃をかわす方法が知りたい。キースが蹴られそうになった時、普通、交わせないはずだった。なのに、回避してカウンターを決めてた。いったいどういうからくりなの?」


 シトラは首をかしげながら聞いてくる。


「あれは、体の魔力を目に溜めて相手の魔力の動きを見ていたんだ。膝に多くの魔力が移動していたから、次は膝蹴りが来ると予測できたんだ」


「魔力を目に溜める……。また難しそうなことをしているのね」


「無色の魔力を持っているシトラなら、練習すればできるようになる。本戦まで一ヶ月以上あるんだ。二人共新しい力を身につけて相手をあっと言わせよう」


「はい!」


「ええ」


 ミルとシトラは両手を握り、次なる高みに上ろうとしていた。


 僕も盗める技は全部盗んで、自分の力として消化するんだ。自分の成長は少なくとも他の部分から取り入れたら上昇幅が広がる。他人の力を奪っているようで変な感じだけど、何色にも染まっていない僕だからできることだ。


 何色でもないと言うことは、何色にでもなれると言うこと。今は橙色になる時だ。


「じゃあ、シトラ。僕とミルは冒険者ギルドで仕事を探してくる。シトラは何かよさげな宿が無いか調べてきてくれるかな?」


「おやすい御用よ。じゃあ、二手に分かれるってことで、いいわね。集合場所はどうする?」


「そうだな……。午後五時にクサントスギルドの中でいいんじゃないかな」


「了解。午後五時にクサントスギルド中ね」


 シトラは僕たちの前から離れ、闘技場を出た。


「シトラさん……、大人で凄くカッコいいです」


 ミルは瞳を輝かせながら呟く。


「でしょでしょ。シトラは大人なんだよ。やっぱりああいう性格じゃないとメイドは出来ないよね」


 僕はミルと共に、クサントスギルドに向った。すると、冒険者さんがたくさん集まって掲示板前で議論していた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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