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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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戦いの研究

「アルブ、次からは僕一人で戦うよ。アルブがいたら、一対二の戦いになる。僕が攻撃、アルブが防御を担当すれば攻防一体となって相手が勝ちにくくなってしまう」


「勝つためならいいのではないですか?」


「僕は正々堂々と戦いたい。だから、アルブには観戦の方に徹してほしい」


「わかりました。主がそう言うのなら、仕方ありません。観客席で寂しく見ていますよ」


 アルブは少々悲しそうな口調になった。いつも一緒に戦ってくれていたので、心が痛いのは僕も同じだ。


「ありがとう、アルブ。僕一人でどこまで戦えるのか、気になってしまったんだ。ごめん」


「チュッチュしてくれたら許してあげます……」


「もう……」


 僕はアルブの頬にキスをする。


 するとアルブは翼を羽ばたかせ、大きな風を生み出した。突風にしては強すぎる。


「もう、悦びすぎだよ」


 僕とアルブは観覧席に移動し、シトラとミルの戦いを見た。


 二名の方も研究されており、シトラの場合はカウンターを狙う相手が増えた。今まで一発で終わらせてきたシトラは、拳を受ける頻度が増え、危なっかしい瞬間が続くも攻撃を当てて相手を弾き飛ばす。


 ミルの方は遠距離攻撃主体の戦いを強いられた。橙色魔法の中に、空気を蹴ったり殴たりして飛ばす、空気弾という魔法がある。かわすことはできるが、相手に近づけないため、無理やり近づいて倒すと言う力技での戦いになっていた。


 実力の低い相手なら通用するかもしれないが、相手の方が各上の場合は苦手分野で戦うことになるので大きく不利になる。


「はぁ、はぁ、はぁ……。つ、疲れました……。相手の人、遠距離攻撃しかしてこないなんてズルいですよ~」


 ミルは汗だくの状態で僕の背中に抱き着いてきた。


「お疲れ様、今回は危なかったね」


「相手も私達の戦い方を研究してる。やっぱり対策されると勝ちに行きにくいよ」


 シトラは顔が少々腫れており、口内出血をしているらしく、口の中が赤くなっていた。


「シトラ、傷を治すよ」


「いい。これくらいどうってことない。この傷は私の技量不足だから、治さないで」


 シトラは少々不甲斐ない気持ちなのか、歯を食いしばっている。


 僕は氷を貰って革製の水筒に入れる。すると、革の部分がとても冷たくなった。水筒を氷嚢として使い、シトラの頬に当てる。


「これならいいでしょ」


「う、うん……。ありがとう」


 シトラは水筒を持ち、自分で頬に当てる。


「二人共、このままだと僕達も負ける可能性が出てきた。あと一回勝てば本戦には出場できるけど、どうせなら一〇勝で不戦勝枠を手に入れたい。対戦相手の研究をするか、鍛錬に勤しむか、二人の好きなように行ってほしい。僕は対戦相手とか戦い方を研究しようと思う」


「じゃあ、ぼくとシトラさんは互いの弱点を補えるよう、鍛錬のやり直しをしてきます」


「それが良さそうね」


 ミルとシトラは鍛錬を行い直すようだ。そのために、闘技場の訓練施設に向った。僕は次の対戦相手になりそうな人達を見て戦い方の研究を行う。


「逃げたらそのぶん、僕に悪い印象が着く。印象は大事だし、判定の勝負になったら確実に不利だ。相手の速攻を防ぎつつ、自分の流れに持っていく……。そんな戦い方が理想だけど、面白みがないよな……」


「主、戦いに面白みなんて必要なんですか?」


 アルブは僕に話かけて来た。


「そりゃあ、大切だよ。面白い戦いじゃなかったらお客さんはつまらないなって思うでしょ。こういうお祭りの時は面白い戦いじゃないと誰も喜んでくれないよ。理想なのはどっちが勝つかわからないといった戦いだね」


「なら、殴り合いが一番楽しんでもらえるんじゃないんですか?」


「殴り合い……。作戦もくそもない、ただの殴り合い?」


「そうです。殴り殴られている状態なら、どちらが勝ってもおかしくありません。そのような状況になった時、人々は興奮するのではないでしょうか」


「なるほど……。殴り合いなら僕の持久力も行かせる。そうなると敵が武器を持っている場合は捨てさせる必要があるな。いや、相手が武闘家の時だけ殴り合いをすればいいのか。他の時は武器を合わせる。相手の攻撃を全部受け止めてからの一撃を決めれば面白いかも」


 僕は自分の長所と面白い戦いを両立できる戦い方を模索し、のこっている相手がどのような戦いをするのか研究する。


「ふむふむ、剣系が五割、槍系が二割、武闘家二割、飛び道具系一割くらいか。近距離戦闘が一〇回に七回ある感じだな。魔法使いは飛び道具に含めるか……」


 僕はブツブツと呟きながら戦いを見ていた。他の人の戦いをまじまじと見る機会なんて無かったので、とても面白い。


 いつも自分でどうやって戦うか考えていたが、他の人を見るといい部分を自分にも応用できると知り、実践で使ってみたくなる。もちろん、魔法系は無理だが、近距離戦闘などにはいくつも応用できそうだ。僕が注目した試合として近距離武器と遠距離武器の戦いだ。


「剣士と魔法使い。どっちの方が有利なんだ……。剣士はどうやって戦うのだろうか」


 僕は剣士の方をじっくりと見る。教本には「敵の攻撃を掻い潜り、なるべく近づいて戦いましょう、距離を詰めることが重要です」と書かれていた。


 僕の見た剣士の戦い方として前に攻め、魔法使いに攻撃を出させたあと、すぐに引いて回避行動を取り、隙が出来ている魔法使いを狙いに行っていた。


牽制動作(フェイント)か……。僕、フェイントは苦手なんだよな。すぐに嘘だって気づかれる」


 僕が嘘をつく行為が苦手なせいで、だまし討ちと同じフェイントが苦手だ。明らかに手を抜いているように見え、気づかれてしまう。


 フェイントという技を見てから、いったいどれだけの人がフェイントを使っているのか注意しながら見てみた。すると案外多くの人が使っていた。僕も取り入れたら今以上に強くなれるのだろうか。


 多くの人が研究をするのがわかるくらい、他の選手を見るのは楽しかった。僕が試合をするわけではないので、気軽に見れる。


 試合を見ているだけで、お昼時になってしまった。僕は受付でサンドイッチを買い、試合を見ながら食べる。


「あぁ~、ぼくもサンドイッチを食べたいです。ハム……」


 汗だくのミルが僕の食べかけていたサンドイッチを食べた。大きな口で食べたので、三分の一くらい無くなってしまった。そのあと、シトラに取られ、僕の昼食が無くなった。


 仕方がないので、サンドイッチを四人分購入し、僕達は観客席に座って昼食にした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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