発情の原因
食事を終え、食後酒と言う食べ物の消化を助けるお酒をおちょこ一杯ほどゆっくり飲み、薬のような味がしてあまり美味しいとは思わなかったが、体の中がほんわかと熱くなってきた。嫌な熱さではなく、自然と燃えている感じだ。血流の巡りがよくなっていると感じる。
僕はフルーファの手入れを行い、心を通わせた。どうも、僕の感謝の気持ちが伝わっているのか、からぶきをしていると喜んでいるように感じる。
歯を磨き、トイレも済ませた僕は鍛錬をする準備を整えていた。シトラとミルはすでに眠っており、どちらも寝苦しそうだった。
ミルは体から汗が滲み出し、はだけた浴衣から見える首筋や鎖骨が哀愁漂う月明りに照らされ、妙に厭らしかった。
シトラも寝汗が多く、寝息が苦しそうで大きく深く空気を吸っていた。ただ、その度に持ち上がる大きな胸の谷間が浴衣から垣間見えており、少しずらせば綺麗な乳房が姿を現しそうだった。そんな妄想をしてしまうと、僕の下半身が元気になってしまい、納まりが利かなくなる。鍛錬をしても治まらず、ずっと立ちっぱなしで痛みが出てくるほどだった。
「何だこれ……。全然納まらないぞ……。どうなっているんだ」
「夕飯の食材による効果ですね。主の体内の血が滞りなく流れております。加えて、魔力の量も増え、活力が漲ってしまっているようです」
アルブはローテーブルの上から僕を見上げていた。
「ど、どうすれば治るの?」
「私は人間じゃないのでわかりませんね。ただ、その部分だけ大量の血液が滞っているようです。加えて筋肉の硬直も見受けられます。なので、他の位置に意識を向けて別の筋肉を刺激すれば緩むんじゃないでしょうか」
「なるほど……。わかった、やってみるよ」
僕は屈伸運動を行い、太ももがはち切れんばかりに力を入れる。すると、ガチガチに反り上がって痛みを覚えていたものが少しずつ緩んでいき、痛みが減った。効果覿面だ。
息を吐きながら鍛錬を繰り返しているといつも以上に疲れた気がする。本気の本気で行ったからだろうか……。めまいが少しするほど力み過ぎていたので、全身から力を抜き、少し眠ることにした。僕は明日の朝にお風呂に入ればいいかと思い、汗だくのまま眠る。
朝、僕は下半身の違和感で眼を覚ました。
どうも股の部分が湿っぽいのだ。この歳になってお漏らしでもしたのかと思い、起き上がると布団や敷布団は濡れていなかった。僕の付けていた下着と寝間着だけが湿っている。
「何だこれ……。白い……」
僕は初めての経験で頭が混乱している。とりあえず起き上がり、下半身に異常がないか確認した。特に異常はなく、独特のにおいがある。
僕は病気にならない体質なので、体調不良というわけでもなさそうだ。シトラに聴けばわかると思うが、シトラとミルがどちらも部屋にいなかった。午前五時頃に二名が起きているなんて珍しい。
僕は立ち上がり、汚してしまった着物を洗うため、お風呂場に向かう。桶にお湯を溜め、洗う。どうもスライムの粘液と性質が違い、油汚れと同じくらい落としずらかった。
「何だろうな。調べたらわかるのかな……」
僕は衣服を洗ったついでに露天風呂に入り、汗を流す。夜中の痛みは無くなっており気分がスッキリとしていた。疲れが一気に抜けた感じがする。
僕が部屋に戻ると、ミルが僕の枕に顔を埋め、おしりを高らかにあげて左右に振りながら、尻尾をピンと張っている。下着が丸見えになっており、プリプリなお尻が可愛らしかった。
「ミル、何をしてるの?」
「キースさん……。えへへ~、キースさんのにおいを嗅いでるんですぅ。この格好をすると、すごく気持ちが昂っちゃって……」
「そ、そうなんだ……。えっと、完全に発情しているよね?」
「はい、しちゃってますね~。もう、完全に止まれなくなっちゃってます~。シトラさんも辛すぎて外を全力疾走してますよ~。ぼくは、キースさんの汗の匂いをクンクン嗅いで、もっともっと好きになっちゃうように仕向けてます」
ミルの姿が本物の獣のように見えてとても破廉恥だった。
――昨日の夜、もの凄く下半身が辛かった。でも今は何も感じない。夜、僕の体は多くの魔力と血液が巡っていた。あの状態が発情と同じだとするのなら……。
僕は魔力を目に集め、ミルの姿を見る。すると、体から魔力のような靄があふれ出ていた。獣族は魔力をほぼ持っていないはずなのに、ミルの体には白い靄が掛かっていた。どうやら、無色の魔力が溢れかえっているようだ。特に臍の下あたりに大量の魔力が溜まっている。あの魔力を減らせば、発情は納まるのではないだろうか。
「ミル、少しいいかな」
「はぁ~い。キースさんからなら、ぼくは何をされても嬉しいです~」
僕は発情しきっているミルのもとに向った。窓は全開にしてミルのにおいは風で流している。ミルの浴衣ははだけ、とても色っぽい。お腹を上に向けて万歳の姿勢を取り、尻尾をふりふりと動かしている。
「ミルの体には多くの無色の魔力が流れている。その魔力を僕に流せないか試してみるよ」
「ほよ?」
僕はミルの臍下あたりに手を置いて魔力眼で見る。魔力操作はずっと練習してきたので自分の魔力は自由自在に操れた。ミルのお腹に自分の魔力を押し流し、混ぜ合わせる。
「あ、あぁぁ……。す、すごい……、き、キースさんの手……あ、熱いです……。なんか、変な感じがしてるんですけど……」
「今、ミルの無色の魔力と僕の無色の魔力を混ぜ合わせているんだ。出来るかわからなかったけど、見ている感じだと、成功している。いまから、脱力感があるかもしれないから、少し我慢してね」
「だ、脱力感……」
僕は自分とミルの魔力を混ぜ合わせたあと、手の平から自分の体に戻していく。すると、ミルの魔力も共に体に入って来た。体に順応し、特に辛さはない。
「あ、あぁァァ……。す、スゴィ……、こ、これ、気持ちいいですぅ」
ミルは脚を縮こませ、善がっていた。頭から、足先までの魔力が僕の体の中に全て入ったころ、ミルはお漏らしをして震えていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。す、すごかった……。か、体から……辛い熱いのが全部吸い取られて……、全身が一気に軽くなって頭がふわふわになりました……」
「ふぅ……。ミル、発情の方はどうなった?」
「へ? あ、ああ……。あれ、全然辛くない……。すごい、全然辛くありません!」
ミルは起き上がって額や首に手を当てて体温や脈拍を測っている。だが、問題ないそうだ。
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