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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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オリーザ・ギレイン

「俺の名前はオリーザだ。よろしく頼む」


 牛族の男性は少し微笑みながら呟く。


「オリーザさんですね。よろしくお願いします。なんで、話かけてきてくれたんですか?」


「少し気になってな。その髪は地毛か? 脱色している訳ではなさそうだが……」


「あぁ、この髪は地毛ですよ。生まれた時から真っ白だったんです」


「そうか。だが、白髪にしては見事な戦いぶりだった。キースは相当な手練れだろ。今日の試合を見て確信した」


「はは……、手練れだなんて、そんな……。僕は普通ですよ」


「魔法を使っている者を圧倒しておいて普通ではなかろう。戦いの余裕さからして死地を幾度となく脱しているな」


「まぁ、そうですね。死地は何度も経験してきました。ほんと、何度も死にかけましたよ」


「死地は己を強くする。何度も経験して生き残っているのなら、あの戦いぶりも納得だ。橙色武術祭は力を競い合う場所であり、殺し合う場所ではないからな。相手も死を実感していない者達ばかりだ」


「まぁ、死地と安全地だったら、成長速度が全然違うのは何となくわかります。死ぬ思いをしている者は強いと言うのも、あながち間違いじゃないでしょう」


「ああ。同感だ。俺の本職は傭兵だ。長い間、魔物と戦ってきたからな、幾度となく死地に見舞われた。だが、俺は生きている。今年の武術祭は楽しくなりそうだ」


 オリーザさんは口角を少しだけあげて微笑んだ。僕と戦う気なのだろうか。でも、嫌な気はしない。やはり僕も男なのか、戦うことが好きなようだ。


「オリーザさん、僕は負けませんよ」


「ああ、望むところだ。本戦で戦える時を待っている」


 オリーザさんはお風呂からあがると、体を洗いに向かった。僕は蒸し風呂に入り、水風呂で一気に冷やしたあと、外気よくをして疲れを癒す。この工程を三回ほど繰り返し、完全に疲れを癒しきった。その後、露天風呂に入り、体を暖める。


 僕が露天風呂に入っていると、橙色武術祭の話をしている二人が入って来た。僕は存在感を消し、風景に紛れる。


「いや~! 今年もやばかったな~」


「ああ。前回優勝者はやっぱり格が違うな。予選が始まって三日で一〇連勝するとか、普通じゃねえぜ」


「ほんと、普通じゃねえ。全試合で魔法を一切使っていないからな。あの怪力が魔法で強化されたらと思うと恐怖でしかねえよ」


 どうやら橙色武術祭で一〇勝した者が現れたらしい。戦えば戦うだけ相手が強くなっていくのに、一〇勝するなんて猛者だ。いったいどんな方なんだろうか。


「ほんと、橙色の勇者と戦いあえるだけのことはあるな。俺もあんな体格だったらいい線まで行けたんだろうな~」


「おいおい、体格だけじゃあそこまで強くなれねえよ。俺達とは経験が違うんだ。魔物の大群を幾度となく屠って来た、狂戦士(バーサーカー)こと、不沈の傭兵オリーザ・ギレインだからこそあそこまで強いんだ」


「そうだな。きっと俺達なら一度の大量発生に巻き込まれただけで死んじまう気がするぜ」


「うぐぐ……、否定しきれねえな」


 ――えぇ、オリーザさん、すごい呼ばれ方しているんだな……。有名な方だったんだ。


 僕はオリーザさんの知名度の高さを知り、驚く。露天風呂から出てオリーザさんの周りを見たら、多くの人がオリーザさんを見ただけでペコペコとしており、憧れの視線を集めていた。


 僕はお風呂場から出て脱衣所に移動し、乾いた布で体を拭く。水気をとったら綺麗な浴衣を着て汚れた服を革袋に詰め込み、外に出る。


 僕が休憩所で待っているとまたもや少女が現れた。


「こんにちは。牛乳はいりませんか!」


「じゃあ、今日も三本お願いするよ」


「ありがとうございます!」


 僕は少女から牛乳瓶を三本貰い、銀貨一枚を渡す。


 少し待っているとシトラやミルよりも先に、オリーザさんが出て来た。すると、若い男性から女性まで一気に群がり、握手や色紙を求める者が現れる。


 ――すごい人気者なんだな。オリーザさんは困ってるけど、しっかりと応えてるのを見るといい方なんだな。


 オリーザさんは牛乳を売っている男性のもとに移動し、特大の牛乳瓶、というかほぼエールの大ジョッキを持ち、グビグビと飲んでいた。三杯飲んだあと、金貨一枚を払い、宴会場に向かう。


「あの方が一〇連勝で本戦に出場するオリーザさんですか~。ひえ~、大きいですね」


 女湯から出て来たミルが、オリーザさんの名前を呼びながら目を細めて本人を見る。


「大きさだけじゃなく、強者だと体から匂ってくる。さすが、噂されているだけあるわね」


 シトラも鼻を鳴らしながらオリーザさんを見ていた。


「彼が主と戦う時は魔法を駆使しないといけないかもしれませんね」


 アルブもオリーザさんを見ていた。


「皆、何でオリーザさんを知ってるの?」


 僕はミルとシトラに牛乳を渡しながら聞いた。


「女湯の中でも話題だったんですよ。たった三日で一〇連勝をして勝った者がいるって。ま、一〇連勝しているということは、他にも三人が本戦に出場が決定していることになります。キースさんも負けていられませんよ」


 ミルは牛乳瓶をグビグビ飲んで元気よく話かけてくる。


「八、九、一〇連勝の者がいるってことだもんね。あと二カ月近くもあるのに、早いな~」


「ま、最終的に七勝すればいいんだから、気負わずに戦えばいいじゃない」


 シトラは牛乳を喉にサラサラと流しこみ、綺麗に飲んでいた。


「ゴクゴク……。主なら、何ら問題ありません。優勝賞金は私達の物です」


 アルブは牛乳を飲みながら答える。


「僕だからって関係ないよ。あと、優勝賞金を貰っても、僕達は辞退しよう。お金に困っていないし、他にお金が欲しいと言う人がいたら譲ってあげた方が……」


「何言っているんですかキースさん! お金は大切ですよ!」


「そうよ、キース。お金のありがたみがわかってないの?」


 ミルとシトラは僕の方に押し寄ってきてお金の大切さを伝えて来た。老後や子供、家、その他諸々に沢山のお金がかかるのだと言う。だから、お金はないよりあった方がいいと言う理論だ。


 わからなくもないが……、僕のギルドカードに入っている金貨の枚数はそう簡単になくせるほどの量ではない。お金の心配をしすぎるのも気持ちが落ち込むと、僕は身をもって知っている。なので、出来るだけお金の話はしたくなかった。


 宴会場に向かい、食事を楽しんだあと、部屋に戻ってぶどうジュースを飲みながら談笑する。疲れが抜けきっており、穏やかな時間が流れていた。


 ミルとシトラが眠りにつくと、午後九時を指した時計が目に入ってくる。二人をベッドに寝かし、僕は鍛錬を開始した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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