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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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魔力視

「これで、ミルとシトラ共に二勝だね。相手が少しずつ強くなっていくと思うし、気を引き締めて行かないと足下を掬われかねない。油断しないようにね」


「当たり前でしょ。私は油断なんてしない。例え昔のキースが相手でも全力で殴りに行く」


 シトラは拳を固め、意気込む。シトラならやりかねない。いや、どう考えてもやるな。


「じゃあ、鉱山に行こうか。せっかくだし、何か宝石でも見つけて飾りにしよう」


「いいですね~。何ならぼくとキースさんの結婚指輪にしましょうよ~」


 ミルは僕の腕に抱き着いてくる。


「はは……、気が早いなぁ……」


 僕達は闘技場をあとにして鉱山に向かう。


「へぇ、ここが鉱山か。もっと山っぽい所だと思っていたけど、どちらかというと崖だな」


 宝石が発掘されると言うので、多くの観光客や仕事として働いている領民が鉱山には多くいた。地面や岩を掘り、小さな宝石を探す。掘り上げた土砂は水で洗い、笊でこして見分けていた。


「なるほど。岩に埋まっている場合もあるし、土砂の中に紛れている場合もあるのか」


「とりあえず、掘って探してみましょう! 何か見つかるかもしれません」


 ミルは服の袖を捲り、貸し出されている手袋を嵌め、スコップを持つ。


「ミルちゃんが地面を探すなら、私は崖の方を探そうかな」


 シトラはピッケルを持って崖の方に向かう。


「じゃあ、僕は……」


 ミルとシトラは僕の方を見て、眼力を飛ばしてくる。


「僕は……、アルブと遊んでるよ……」


 僕はアルブを両手で震えながら持ち、二名に見せる。


 二名は肩から力を抜き、宝石を探し始めた。


「主、私を盾にしないでくださいよ」


 アルブは尻尾を振りながら呟く。


「ごめん。どちらかを選んだらどちらかが激怒しそうだったからさ……」


 僕はアルブと共に鉱山を歩いて回った。髪色が橙色の人達は身体強化を使って地面をプリンのように軽々と掘っていく。仲間同士で協力し、作業をサクサクと進め、小さな小さな宝石をいくつも見つけていく。どうやら、宝石は本当に埋まっているようだ。


 一時間ほどうろうろしていると、どこかで歓声が上がった。


「うおおおおおおお!」×多くの人たち。


「な、なんだなんだ?」


 僕は人々の声を聴き、振り返る。

 

「い、いったいなぜそのような大声を出すの……。驚くじゃない」


 視線の先にはシトラがおり、手にはキャベツほどの岩石を持っている。ただの黒い岩石にしか見えないのだけど、いったい何を驚いているのだろう。


 シトラは黒色の岩石を麻袋に入れ、採掘を再開した。


 数分後、またしても大きな声が聞こえた。


「うおおおおおおお!」×多くの人たち。


 僕の視線の先にはミルの姿があり、掘り起こしたミルも何が何だかよくわかっていないようで、黒色の岩石を麻袋の中にいそいそと入れる。


 ――せ、専門的過ぎてド素人の僕達にはわかりえない世界だ。いったい何がすごかったんだろうか。


 アルブは先ほどから地面に顔を近づけながら歩いている。その姿は犬のようで愛らしい。


「主、この下に何やら高密度な結晶が埋まっていると思われます」


 アルブは立ち止まって足場を掘ってほしいと言ってきた。僕は了承し、スコップで掘っていく。一メートルほど掘ると、黒色の岩石が出て来た。


 シトラとミルが掘り当てていた岩石と似ている。岩石の大きさは三〇センチくらいで地面に埋まっていた。全体を掘り起こしてみると、岩石に菱形の結晶がデカデカとくっ付いてた。あまりにも無色透明で水晶のようだった。僕は周りの人に騒がれるのは嫌だったので麻袋にさっと入れる。


「今の石、何だったんだろうね」


「さあ、他の物質よりも詰まっていたので何かしらの宝石だったんじゃないですか?」


「そうだと良いね」


 僕とアルブはその後も赤い結晶や青い結晶、緑色の結晶など、何個も見つけていく。アルブは宝石らしき鉱石を見つけるのが上手いようだ。アルブ曰く、眼に魔力を凝らすと魔力の質が高い物が見えるらしい。僕もアルブの真似をして目に魔力を溜めると辺り一面が白くなってしまった。


「アルブ、なんか視界が白いんだけど」


「主の魔力量が多いから、周りが白く見えているだけです。もう少し内側に止めてください」


「内側に止めると言っても……、主にどうしたらいいの?」


「汗を引かせる感じですね。にじみ出てくる汗をどうにか止めようとしてみてください」


「わ、わかった」


 僕は自分の体から出る魔力を押さえるために、汗を引かせるよう想像する。熱っていた体が冷めていく感じ……。少しすると、真っ白だった景色がしだいに色鮮やかになってくる。魔力の色だろうか。魔力を持った人が動くと魔力も同時に動いている。魔力をほぼ持っていないミルとシトラの姿はぼんやりと見え、地面に埋まっている靄もうっすらと感知できるようになった。


「この視界は。魔力を見ているの?」


「はい。今、主の見ている視界に映っているのは魔力です。肉眼で見るよりもしっかりと魔力の流れが見えますよね」


「うん……。でも、なんでこんな便利な魔力の使い方があるのに、皆は使わないんだろう」


「何たって他の人にはすでに色が付いてしまっていますからね。マゼンタ、シアン、イエローの魔力も持っていない主だからこそできる芸当です。無色の魔力を目に集中させることで、混ざり合うはずだった三原色の魔力がよく見えると言うごく普通の原理を応用しています」


「こんな使い方があったんだ……。≪無色魔法:魔力視≫とでも名付けようか」


「いいですね。じゃあ、魔力視を使って宝石をガンガン見つけていきましょう!」


「いやいや、そんな卑怯な手は使わないよ。僕も自力で探してみる。その方が楽しいでしょ」


「主がそう言うなら……」


 アルブの瞳に魔力が集まっていたが無散する。


 僕達は昼食のことも忘れ、無我夢中で宝石を探していった。


 午前一一時から探し始めて約六時間が過ぎ、多くの者が帰り始めたので僕達も撤収する。


 僕は麻袋が一袋いっぱいになるくらい綺麗な石が埋まっている岩石を見つけた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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