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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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喜び方の癖がすごい

 僕達は話し合った結果、橙色武術祭の試合を一回消化してから、鉱山に向かうことにした。


 馬を馬屋から出し、荷台を縄で括りつける。宿を出発したのは午前七時三〇分ごろで、闘技場に着いたのは午前八時だった。試合がすでに始まっており、黒星を着けている者が多くなっていた。


 僕達は勝利数が同じ者と戦う。つまり、一勝している相手なら戦えるのだ。例え相手が一勝二敗の者でも構わない。


「ん~、誰と戦おうかな。出来れば二敗の人と当たりたくない。僕のせいで本戦に出場できなくなったとか文句を言われそうだ」


 なんて思っていたら、一勝二敗の男性が話しかけて来た。


「橙色魔法が使えない奴がこの橙色武術祭に出てるなんてな! 加えて誰も手を出さねえなんて俺は運がいいぜ! もう、後がないんでな、ここは確実に勝たせてもらう」


 見かけからして二〇歳くらいの男性と僕は試合をする羽目になった。相手の武器は剣。髪色は橙色なので、魔法を使ってくるだろう。


 僕と男性は闘技場の試合場に移動し、黒白帯を付ける。僕は白だ。


 審判が合図を出すと、男性は橙色の光を放つ。


「よっしゃ! さっさと終わらせてやるぜ!」


 男性は剣を抜き、≪橙色魔法:身体強化≫を使ってきた。全身に淡い魔力を纏い、身体能力が向上する橙色魔法が最も得意とする性能。僕は魔法が使えないので生身での戦いになる。


「ふうぅ。相手が武器を使うなら、こっちも武器を使ったほうがいいですよね」


 僕はフルーファの柄に手を持っていく。柄を握ると背中からはがれ、横から抜くようにして構えた。


「身体強化も使っていないのに、そんなデカい武器を使うなんて、相当な力自慢なんだな」


「まぁ、力は強い方ですよ」


 男性は剣を両手で握り、先制攻撃を仕掛けて来た。剣を頭上に掲げ、大振りしてくるようだ。


 ――魔法の身体強化による恩恵に任せた力技。ただの大振りかな。もしかしたらカウンターを狙っているのかも。


 僕は敵の攻撃を予測して一歩引いて攻撃をかわす。


 男性は振りかぶり、下を向いている剣を上に振り上げながら追撃してくる。


 僕はもう一度後方にさがる。すると、男性の大振りのおかげで剣が頭上に戻る。その隙にフルーファの剣身の腹で男性の腹を叩き、弾き飛ばす。


 すると昨日よりも強固になっていた結界に男性は衝突し、地面に落ちて気絶していた。


「勝者……、白」


「あ、ありがとうございました」


 僕はペコリと頭を下げて審判の方から四角の空欄に黒星を着けてもらう。これで二勝だ。


「あ、あの少年。身長よりデカい大きさの剣を軽々と振っていたぞ」


「あの背丈で力はミノタウロスかよ……」


「力も確かに凄いが、特質すべきはあの身軽さだろ。身体強化された男の斬撃を二回もかわしているんだぞ。普通はあり得ないだろ」


 僕は観覧席にいる男性たちに研究されていた。罵られている訳ではなく、どのように対策するかと言った戦術を考えているのだ。


 ――何だろう。はっきりと褒められている訳じゃないのにすごく嬉しい。強さを嫉妬するんじゃなくて敬意を持っている。なんていい人たちなんだ。


 僕はクサントス領の人柄がすでに好きになっていた。元気で明るく、相手を尊重できる人たちばかりで、自分の醜さが浮彫になっている気がする。試合場を出て、僕も観覧席に移動し、シトラとミルの試合を見る。


 今回はシトラが先に試合をするようだ。どうも試合場が一つしか開いていないらしい。


 シトラの相手は冒険者さんっぽい服を着ており、武器は槍だ。近接戦闘のシトラにとっては武器の相性は悪い。と言っても、シトラの感覚を侮ってはならない。


 試合開始三秒で相手は弾き飛んだ。


 ――魔法の詠唱はさせてあげようよ、シトラ……。


 相手側から反則だと審判に抗議していたが魔法を使わずに先制攻撃を決めると言うのも立派な作戦と判断され、勝者はシトラのままだった。


 魔法を使う有利と使えない不利を覆していると思い、感心した。ただ、攻めることが得意なシトラだからこそ取れる選択であり、僕やミルには難しいだろう。


 続いてミルが試合場に立った。深々とお辞儀を行い、対戦相手に敬意を払う。


 審判が合図をすると相手が移動しながら詠唱し、先制攻撃を行う。服装は軽装備で先ほどの女性とパーティーを組んでいる方だった。


 相方がやられたので悔しくなってしまったのかもしれない。自分も先制攻撃をしないとやられると踏んだ作戦だと考える。だが、相手はミルなので、逆に攻めてきてくれてありがとうと言わんばかりにニンマリとした表情をしている。


 相手の武器は双剣で身体強化を行った連続攻撃がミルを襲った。


 ミルはすべての攻撃を綺麗にかわす。相手の攻撃があまりに早いので僕は肉眼で追えないのだが、ミルにはどこに攻撃が来るのかわかるようだ。


 魔力にも限界があり、ずっと身体強化が出来る訳ではない。動き続ければその分、減っていく。双剣と身体強化の相性はとてもいいが、動きが多いため魔力がすぐに無くなる。そのため、相手の動きが急激に遅くなった。


「よっこいしょ~っ!」


 ミルは相手が一瞬ひいた隙を見逃さず、相手の顎に手の平を置く。そのまま少し押しだし、後方に移動していた体の重心を利用しながら足裏を地面から浮かせた。重心がすでに頭の方に移動し、相手は身動きが取れず、ミルは相手の頭を地面にたたきつけて気絶させた。


 ミルはピョンピョンと跳ねて悦び、僕に投げキッスしてくる。仕方なく返すと後方三回転宙返りをしながら喜んでいた。喜び方の癖がすごい……。


「シトラさんとミルさん、どちらも着実に勝っていますね。獣族の特性をしっかりと抑えたうえで鍛錬による身体能力の上昇が見込めます。並の冒険者や獣族より確実に強いですよ」


 アルブは僕の肩に乗り、二人の試合を見ていた。


「そうなのかな……。あまり油断すると脚を掬われそうで怖いから、二人には気を引き締めて行こうと言うよ」


「主は心配症ですね。相手が強ければお二人が油断するわけないじゃないですか。強さをしっかりと直感できると思いますからね」


「あぁ、確かにね」


 僕がアルブと話していると、シトラとミルが観覧席に上ってくる。二人のことも多くの人達が見て、研究されていた。


「キースさーん! ぼく、勝ちました! ご褒美にキスしてくださーい」


 ミルは僕に抱き着いてきて唇を近づけてくる。


 僕は干し肉をミルの口に挟んで進行を止めた。


「むぅ……。干し肉は美味しいですけど、ぼくはキースさんとの熱い熱い口づけがしたかったですー、ハムハム……」


 ミルは干し肉を頬張りながら愚痴を言う。


「はぁ、ミルが成人したらどうなっちゃうのか、僕は怖いよ」


「えへへー。本当にどうなっちゃうんでしょうね。ぼくにも想像できません」


 僕はにんまり笑顔のミルを床におろす。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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