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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第三章:橙色の領土。クサントス領

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クサントスギルドに到着

 料理は一〇分ほどでやって来た。


「お待たせしました! 梅雨のじめじめを吹き飛ばせ! 疾風のスパイシーチキンカレーです! 付け合わせのラッシーもどうぞ!」


 ――長い商品名だ。ま、まぁ。略してチキンカレーね。飲み物の方は初めて見るな。牛乳とヨーグルトの中間みたいな感じかな。パンやご飯じゃなくて、この粉物はナンか、始めて食べるな。


 店員さんは山もりのチキンカレーを僕達の前に置く。鶏肉が好きな僕にとっては嬉しい。ミルはスパイスが目に染みたのか少々涙ぐんでいる。シトラはスパイスが鼻に来たのか、鼻水を啜っていた。


「主、主。早く食べましょう! 私はお腹がペコペコです!」


 アルブは足踏みをして待ちきれないと言わんばかりに口から涎を垂らしている。


「じゃあ、皆で手を合わせて神に祈ってから頂こうか」


 僕達は手を合わせて神に感謝の気持ちを祈ってからスプーンを手に取る。


「いただきます」

「いただきます!」

「いただきます」

「いただきま~す!」


 僕とミル、シトラはチキンカレーをスプーンで掬い、口まで運ぶ。アルブは直接食べ始めた。


「んっ! 辛い! でも……美味しい」


 チキンカレーを口に入れると香辛料の香りが一気に鼻に来る。加えて舌を伝って刺激が伝わり、痛い。でもコクがあると言うか、深みがある。


 ナンと一緒に食べると小麦の甘みが加わり、ずいぶんと食べやすくなった。口の中が香辛料によってひりひりするのだが、もう一口、もう一口とスプーンが止まらない。あげくの果てに、ナンを千切ってチキンカレーを掬いながら食べるという、王都で行ったら確実に罰則を食らうであろう食べ方をしてしまった。でもここはクサントス領。王都とは別の文化がある。


「ふぇ~ん。ぼく、カレーライスの方が好きです~。ちょっと辛すぎます~」


 ミルはまだまだおこちゃまの舌のようで、辛さに耐性が無かった。


「辛いのは大丈夫だけど、においがきついな……。味は美味しんだけどね」


 シトラは鼻をつまみ、食事をしていた。それは味を感じているのだろうか。


「ハグハグハグ、うまうま! ハグハグハグ……」


 アルブは口周りをベトベトにしながら美味しそうに食べていた。やはり味覚にも違いはある。美味しいの定義が一致しないのも無理はない。


「キースさん、ぼくのチキンカレーを食べてください」


 ミルは半分ほど残っているチキンカレーを渡してきた。お残しをするのも失礼なので、辛いのが苦手なミルのために、全て平らげる。


 ラッシーなる飲み物を飲むと、口の中の辛みが薄まったような気がする。砂糖の甘みとヨーグルトの酸味が感じられた。ナンがお替り自由だというので、ミルはナンばかり食べてお腹を膨らませている。逆に体に悪いとおもんだけどな。僕達はクサントス領で初めての食事を終え、お店を出る。


「ありがとうございました~!」×店員さん全員。


 ――最後まで徹底した元気接客……。すごいな。


「うぅ……。口の中がまだヒリヒリしますぅ……」


 ミルは涙目になって少し赤くなっている唇を僕の方に見せる。香辛料のせいで荒れてしまっているのかもしれない。


「はぁ、全てあのようなお店だと考えると気が滅入る……。これは自分達で料理をした方がいいかもしれないね」


 シトラは疲れ切っており、無駄な体力を使っていた。僕とアルブはチキンカレーに満足できたので元気過ぎる店員さん達には眼を瞑ろう。


 馬屋に預けていた馬と荷台を受け取り、クサントスギルドに向て出発する。


 地面は整備されているので振動は少なく、快適な移動が出来た。ルフス領はガタガタ道が多かったので、気分が悪くなる時もあったが、クサントス領で乗り物酔いは無縁そうだ。


 大通りは馬車が込み合っており、一時間三〇分ほどかかってクサントスギルドに到着する。


「はぁ。ギルドにやっとついた。大きさは……、ルフスギルドと同じくらいか」


 僕はギルドに設置されている厩舎に馬を預ける。荷台にはシトラとミルに見張らせておく。何が起こるかわからないので、二人に任せた。


 アルブは僕の肩に乗り、レンガ造りの建物に一緒に入っていく。周りはマゼンタの髪色が多く、ルフス領と系統が似ている。でも、顔つきが皆穏やかで元気はつらつだ。取っ掛かりやすさで言えばクサントス領の方がいいかもしれない。


 僕の髪色を罵るような人はおらず、じっと見てくる者もいなかった。僕の髪色は気にされていないようだ。そのおかげで気楽にいられる。アイクさんからは多くの領土で煙たがれると言われたが、思ったより酷い差別は受け無さそうだ。


 クサントスギルドに入るとルフスギルドの内部と作りがほぼ同じだった。入口から右側に食堂、中央に受付が合って左側に依頼が大量に貼ってある。


「卵の中から見ていましたけど、実際に見ると広いですね」


 アルブは首を回し、内部構造をしっかりと見ていた。


「さ、僕達はクサントス領の良い所を聴きに行こう。一ヶ月くらい滞在して次の領に向うと思うから、良い宿も見つけないとね」


 僕とアルブは受け付の方に歩いて行った。


「すみません。少し聞きたいことがあるんですけどいいですか?」


「はい、どうされましたか」


 受付の女性が僕の方を見て、聞いてくる。


「クサントス領に始めて来たので特徴とか、面白そうな行事とかがあったら教えてほしいんですけど、構いませんか? あと、良い宿とかも教えてもらったら嬉しいです」


「もちろんです。ではクサントス領について簡単に説明しますね」


「よろしくお願いします」


 僕は受付のお姉さんに頭を下げる。女性はクサントス領の地図を出し、僕に見せて来た。


「クサントス領の特徴として温泉街があります。一番の観光場所ですね。あと、行事として六月から八月の間、橙色武術祭が行われています」


「橙色武術祭?」


「はい。主に、魔物との戦いを観戦したり、人と人が橙色魔法で戦いあったりする熱い熱い祭りなのです!」


 やはり受付さんも熱い。


「えっと、その橙色武術祭って言うのは三カ月の間、行われるんですね」


「本戦は八月で、六月と七月は予選が行われています。期間内に一〇回戦い、七回勝った者が本戦に出場が可能になります。本戦は勝ち残り形式になりますから、白熱した戦いが繰り広げられるんですよ。橙色武術祭の優勝者は現在の橙色の勇者様と戦える権利が与えられます!」


「へ、へぇ……。す、すごいですね……」


 ――うぅ、勇者と言う単語に物凄く嫌な予感しかしない。

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