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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第一章 『無限』の可能性

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長いようで短かった五日間

 次の日からも僕たちは懸命に働いた。

 プラータちゃんは今まで以上に仕事をこなし、生活費を稼いでいた。

 午前七時から働き、午後六時に終わる。

 昼の一時間休憩しているが、一〇時間ほど働いていた。

 時給銅貨八枚なので一日銀貨八枚も稼いでいた。

 五日目にもなれば、総額が金貨四枚にまで膨れ上がり、プラータちゃんの身が震えるほどの額でほぼ半泣きの状態になっている。


「うぅぅ……これだけあれば、長い間家族と暮らせます……」


「よかったね、プラータちゃん」


 僕たちは七日目の朝を迎え、部屋の中で出発の準備を整えていた。

 今日の朝一番でルフス領に向かう列車に乗る予定だ。僕の右腕もすっかり良くなり、火傷の跡も残っていない。指の動きもはっきりしている。

 僕の体の治りが早いと言う黒卵さんの発言は嘘ではなかった。そうなると、ドラゴンという言葉も信憑を増してくる。


「キースさんもよかったですね。お金が貰えるようになって」


「村の人達が感謝の気持ちを込めて募金してくれたんだよ。五日間で金貨五枚分、集まったから、依頼主さんと僕で分けて金貨二枚も貰ってしまった。依頼主さん達は一六人もいたのに……」


 金貨五枚分を僕も入れた一七人で分けると銀貨で約三枚になる。

 僕は銀貨三枚でいいと言ったのだが、ブランカさんたちは金貨二枚分を手渡してきた。そんな貰えないと断ったのだが、ブランカさんに「ここまで無償で手伝ってくれたお礼だ、取っておけ」と言って押し付けてきた。

 ありがたくいただき、ブランカさんと分かれた。


 最後に「私たちも旅を続ける。キースさんも旅を続けるのならまたどこかで会えるだろう。その時はまたよろしく頼む」と満面の笑みでお願いされた。

 僕はもちろん「はい、いつでも力になります」と答えた。


 怒涛の五日間を終え、財布が少し潤った僕たちは宿で最後の朝食を迎える。


「今日でこの朝食も最後ですね。悲しいです……」


「でも、とても楽しい五日間だったよ。六日前は死にかけていたのに……」


「私たち、六日前はずっと死の淵に立っていたんですよね」


「ほんと、人生何があるか分からないね。楽し日も辛い日もやってくるんだから」


「一日をどうやって過ごすのか、それが大事だと凄く痛感しました。少し前まで、私自身を犠牲にして家族のお金を稼ぐことだけを考えていましたから」


「プラータちゃん……」


「でも、それは間違いだったんです。昔のままお金の為だけに働いていたら、私と家族はどちらも幸せになれないと思いました。だから、家に帰ったらお父さんとお母さんに話します。これからと、私の夢を……」


 プラータちゃんの表情はとても凛々しく、未来を見越したいい顔をしていた。


「きっと今のプラータちゃんを見たら家族の皆はびっくりすると思う。僕が初めてあったときよりも心が凄く強くなっている。たとえ、困難に当たってもプラータちゃんなら乗り越えていけるよ」


「はい! 私、夢を絶対にかなえます!」


 プラータちゃんは高らかに右腕を上げ、大きく宣言した。それを見た僕は、彼女は夢をかなえると確信する。

 こんなにも頑張れる一〇歳児がいるだろうか。いや、いない。

 僕が一〇歳の頃はシトラに泣きついてただけだ。将来なんて考えてすらいなかった。それに比べてプラータちゃんは既に夢を見つけ、動き出している。

 凄いの一言しか出てこない。


「それじゃあ、朝食をいただろうか」


「はい、いただきましょう!」


 今日の朝食は五日前と同じ、白パンにトマトスープ、ベーコンエッグだ。相変わらず美味しい。

 ベーコンエッグはただ焼いているだけなのに、なぜこんなにも美味しく感じるのか、ぜひとも教えてほしいほどだ。

 僕とプラータちゃんは終始朝食と向き合い、食べ進めた。

 僕は、宿の朝食の味を舌に覚え込ませる。


「ふぅ~ 美味しかった……。朝からこんなに元気になれるんだから、食べ物の力は偉大だよ」


「そうですね。朝食を少し豪華にするだけで一日の始まりが変わりますし、家に帰ったらまず変えたい習慣かもしれません」


「いいね、現状を変えるに一個ずつ何かをいい方向に持っていけば、生活は変わるよ」


「そうなると信じて、始めないとですね!」


「うん、変化を怖がってたら駄目なんだ。僕も何か変わらないといけない。そうしないと昔のまま変われなくなってしまう」


「キースさんは、今のままでも十分素敵だと思いますけど、どこか不満があるんですか?」


「嫌いな所はいっぱいあるよ。上げたらきりがないから言わないけど、そう……まず『自分を嫌い』と言っている自分が嫌いなんだ」


「誰も、自分が大好きと言える人は少ないですよ。私だって自分を好きでいれているか、わかりませんし」


「まぁ、そうなんだけど。僕は大切な相手と釣り合える人間になりたい。今のままじゃダメだったんだ。その相手は僕と一緒に生きてくれなかった、何か足りなかったんだよ」


「その相手が『キースさんには何かが足りない』と言ったんですか?」


「いや、何も聞いてないけど。それ以外に考えられないよ。相手は僕より強いし、頭も良いし、僕に持っていない良いところを沢山持っているんだ」


「キースさん、考えすぎです! 私を助けた時みたいに、ばっと行動して、がっと言い返せばいいんですよ。キースさんにはそれができるじゃないですか」


 プラータちゃんは身振り手振りを使って僕に伝えてくる。


「でも、プラータちゃんを助けたのは可愛そうだと思ったからで……」


「なら相手を思いやれる心を持っていると言えます。それは凄く素敵な人です。もっと自信を持ってください!」


「プラータちゃん……。ありがとう、なんか、元気出てきたよ」


「私の元気に当てられたんですよ! 私は元気だけが取り柄ですから!」


 僕は一〇歳児に励まされた。本当なら、大人である僕が何か言って上げないといけないのに。でもそうか、僕には人を思いやれる心を持ってたんだ。それに気づけただけでも、理想の自分に一歩だけ近づけた気がする。


 僕たちは朝食を終え、五日間のお礼をするために調理場の方にお盆を持っていく。


「あの、五日間美味しい朝食と夕食を作ってくださり、ありがとうございました。本当に支えられました。これからもお仕事を頑張ってください」


 料理長さんはとても嬉しそうにしてくれた。少し恥ずかしかったのか、手を上げて聞こえたのを知らせてくれたあと、料理を再開する。


「ちゃんと聞いてくれたみたいですね」


「うん、気持ちが伝われば、それでいいよ」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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