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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
赤色の勇者をもとに戻すために出来ること

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大量のホーンラビットとの戦い

 僕は門の上を走り、岩で出来た足場を思いっきり踏み込んで跳躍する。骨に入るような音がしたが、気にせずに突き進む。


 後方を一瞬振り向くと門の壁が粉砕しており、壊れていた。申し訳ないと思いながらも今は考えないことにする。


 前方回転しながら地面に着地、体に残っている推進力を使って地面を蹴り、再加速。


 真正面からホーンラビットを迎え撃つ。


「≪無色魔法:無反動砲(リコウレス・ライフル)≫を発動します」


 黒卵さんが魔法を発動すると、僕の背後や頭上、両側などの多面に魔法陣が八枚出現した。魔法陣の大きさは直径一メートルほどで、色は白。やはり無色の魔力は白っぽい光を放つらしい。


 魔法陣が出現したと同時に、何かが撃ちだされ、ホーンラビット達に直撃していく。


 まだ三キロメートルも離れているのに、放たれた一撃は巨大な爆発を起こし、地面を大きく揺らす。


 一秒間に八発の爆撃音が鳴り、黒煙が八本出来上がる。だが、進んでくるホーンラビットの数は減らず、爆発をもろともせず突き進んでくる。


 無反動砲の威力は絶大で、一撃で大量のホーンラビットを倒していた。だが攻撃を回避した個体は僕に向ってくる。奴らにとって僕以外に敵はおらず、前を阻む障壁だ。きっと潰しにかかってくるだろう。でも、僕は負けない。そう、心に強く意気込んで歯を食いしばる。


「さぁ、フルーファ。僕との初陣だ。美味しいホーラビットの肉を沢山食べさせてあげるよ!」


 僕がフルーファの持ち手をぎゅっと握ると大剣が震えた。もう、フルーファが武者震いをしているようにしか感じない。


「ギュギュギュッツ!」


 まだ、門を出発して一分もたっていないのに、無数のホーンラビットが僕の視界を埋め尽くす。


 地面は炎で燃えており、夜間ながらフレイのおかげで視界は良好だった。


 一個体一個体の眼が赤黒く光っており、凶悪さを増している。残っている個体の中で一番多かったのが、黒色のホーラビットだ。やはり黒い個体は強いらしく、無傷な個体が多い。


「はああっ!」


 僕が大剣を薙ぎ払うと目の前に飛びかかってきた数羽が真っ二つに割かれる。黒い液体が水しぶきのように弾け、大剣によって切り裂かれるホーンラビットの重みが腕にのしかかってくる。今は素材の採取なんて考えていられず、襲い掛かってくる敵を倒すことしか頭にない。


「おらっ! おらっ! おらあああああっ!」


 僕の怪力と大剣の相性は抜群で大量のホーンラビットを一気に屠ることが出来た。少しずつ後退していかないと、地面がホーラビットの死体で埋まり、身動きが取れなくなる。もっと奥で戦いたかったと思いながら、数の暴力に押されながらも善戦する。


 一秒が一分に感じ、一分があまりにも長い。時間の流れを呪いたくなるほど、長く、気が狂いそうだった。でも、今は僕一人で戦っている訳じゃない。背中には黒卵さんがいるのだ。


 黒卵さんの発動している魔法は常に打ちっぱなしで、方向などは全て黒卵さんが制御してくれているため、僕は目の前のホーンラビットに集中すればいい。


 遠くの方で大きな爆発音が鳴り、突風が吹き荒れる。だが、大剣の刃渡りの先には大量のホーンラビットがおり、何度も叫びながら襲い掛かってくる。命の重さなど軽視しており、数で僕を食い殺そうとやっけになっていた。爆発音とホーンラビットの鳴き声が混ざり合い、街に巨大な魔法を落として大量虐殺をしているような光景が思い浮かぶ。


 だが、襲われているのは僕の方だ。ルフス領に降りかかる厄災を、赤色の勇者の代わりに僕が引き受けている。なぜこのような面倒な役割を引き受けてしまったのだろうか。いや、引き受けたわけじゃない。引き受けざるを得なかったのだ。


 ルフス領の中にはアイクさん、ミリアさん、トーチさんにマイアさん、フランさん、ロミアさんなど、多くの仲間がいる。今、目の前の大量のホーンラビットが壁を超えるほどの大群で乗り込んで来たら、誰も太刀打ちできない。少しでも数を減らしておけば、多くの者が助かる。


 僕は勇者ではないが、誰もが勇者のように勇敢に戦えば危機は脱せられると考え、フレイの代わりに僕が狂戦士となり、ホーンラビットの肉を美味しそうに貪り食うフルーファを幾度となく振るう。敵を倒せば倒すだけ、切れ味が上がっているような感覚に陥り、僕の口角も上がっていった。


 真っ黒な血しぶきが舞う中、大量の血液のせいで地面の炎が消えていく。ホーンラビットの死体が地面を転がり、ずっと移動しながらでないと脚の踏み場が無かった。


「ギュギュギュッツギュギュギュッツギュギュギュッツ!!」


 ホーンラビットは死を恐れず、大群が一体の魔物のような雰囲気を放ち、僕を飲み込んできた。視界を覆う大きな大きな壁。だが、僕はひるまない。ひるんでいる時間はない。


「おらあああああああああああああっ!」


 フルーファを振るい、巨大な壁を切り裂く。今の一激でいったい何羽のホーンラビットを倒したのだろうか、もう数えられないほどの個体を討伐している。


 僕は体力の続く限り、フルーファを振り続ける。


 血しぶきのせいで全身がずぶ濡れだ。フレイの炎も消え、視界が悪すぎてどこに敵がいるのかわからない。


 地面を走り、飛びかかってくるホーンラビットの殺意とフルーファから伝わってくる「もっともっともっと食いたい」という純粋な食欲に従い、思いっきり振るう。するとそこにホーンラビットがいるのだ。


 飢えた狼は満腹にならず、ただただ貪り食っては次の個体へと食事を移す。食べて食べて食べ続けるのだ。自分の空腹が満たされるまで、食欲は消え失せない……。

 食欲と言う大きな原動力は僕にも伝わり、活力となる。


「ギュギュギュッツギュギュギュッツギュギュギュッツ!!」


 無反動砲が遠距離にいるホーンラビットを倒し、攻撃の流れを送れさせているものの、奴らの攻撃は未だ衰えを知らない。僕もずっと同じ攻撃を繰り返しているのだが、奴らの攻撃が増しているような気さえする。これが奴らの本気だと信じ、僕も本気でフルーファを振った。


「はああああああああああああああああああああああああっ!」


 だが、一定の攻撃はホーンラビットの頭でもわかるらしく、真正面から襲ってこなくなった。


「ギュギュギュッツギュギュギュッツギュギュギュッツ!!」


 ホーンラビットは両脇から襲ってきた。実質二段攻撃だ。


「くっ! 横から……。うおおらああああっ!」


 こっちは攻撃を二発も一撃で放てない。だから、一撃で二発分の攻撃力を出すしかなく、限界の体に鞭打って全力を越えた一撃を放つ。


 ホーンラビットから放たれる血しぶきは、フルーファを振る風圧で吹き飛び、奴らの視界をのごらせた。だが、僕の敵意を感じ取れるらしく、ほぼ意味がない。


 行きつく暇もなく、攻撃を続けられ、視界が赤くなっていく。どうやら、眼が充血して血管が切れているらしい。口の中にホーンラビットの生臭い血と舌を噛んださいに出てくる鉄っぽい人の血が混ざりあって、水分の代わりに飲む。胃が鉄のように強いので、きっとお腹は壊さないだろう。ただ、飲み込む血よりも、体に突き刺さっているホーンラビットの角によって出血している量の方が多かった。


 ――まだまだ戦える。まだまだ戦える。まだまだ戦える。僕はこんなところで、死ぬわけにはいかない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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