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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
赤色の勇者をもとに戻すために出来ること

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赤色の勇者、戦闘狂のフレイはどこへいった

「ありがとうシトラ。すぐに戻ってくるよ」


 僕は餓狼(フルーファ)と黒卵さんを背負いながら、走る。フルーファの持ち手を握ると背中からはがれ、大剣が振れるようになる。背中で手を離すとくっ付く。


 ――便利な武器だな……。大きくて威力がありそうだ。


 フルーファは合金で出来ている武器なのに軽く、木製の武器を背負っているようだった。そのおかげで僕はいつも通りの速度で走ることができている。


 北門付近から三○分足らずで東門に移動し、僕は東門の上階におり、辺りを見渡す。


 この世の終わりを見る。


「な、何だ……、何が起こっているんだ。辺り一面が火の海になってる……」 


 僕の見える景色がほぼ火の海になっていた。つまり、三から四キロメートル先まで燃えているのだ。


 僕はフレイがまた何かをやらかしてしまったのではないかと思った。でも、今回は状況が少し違う。三キロメートル先の炎が少しずつ消え初め、何かが迫ってくるのだ。


 ――白い、茶色い、黒い、波? いや、違う……。あの個体、全てホーラビットだ。


 僕の視界には炎を食い破るようにルフス領へと迫ってくるホーンラビットの群れが映った。


「はぁ、はぁ、はぁ……。く、くっそ……、何羽いるんだ。次から次にホーンラビットの大群がやってきやがる……」


 フレイは上空に滞在しており、炎の翼を広げ、息を荒げながらとどまっていた。すでに疲労困憊で、顔から大量の汗を掻き、手足がしびれていた。どうやら魔力を使い過ぎているようだ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。どうする、どうする……。これ以上魔法を打ったら、俺は魔力が枯渇して飛べなくなる。もう、逃げられない。でも、ここでホーンラビットを倒さないとルフス領が危険だ。敵国の方からの新手か。帝国の実験でも成功しちまったのか。くそ、俺一人じゃ、絶対に倒しきれない。増援を呼ばないと。でも、ちんけな冒険者じゃ駄目だ。すぐに死んじまう。ど、どうすればいい。どうすればいいんだ……」


 フレイは頭が正気に戻った影響からか、蹂躙しまくる思考から、正当性を求める方向になっていた。


 考えている間にも、炎の海は大量のホーンラビットによって掻き消されていく。


 ホーンラビット達は焼かれ死んだ仲間を踏みつけ、炎を鎮火しているようだ。


 僕の目から見ても明らかに異常事態で、躊躇している暇なんてない。あまりにも数が多すぎる。


「う、うぅ。こ、怖い。怖い。怖い……。ここで俺が死んだらどうなるんだ。ルフス領はどうなるんだ。だ、駄目だ。手が震える。狙いが定まらない」


 フレイの手は肉食獣に睨まれている小型の草食動物のように固まり、震えまくっている。僕の知っているフレイはどんな強敵でも自分からぶっ殺そうとする戦闘狂だ。


 周りの人間なんて関係なしに高火力の魔法を打ち、気にも止めない狂人だ。


 今のフレイとは似ても似つかない憎き悪魔の化身が、なぜこの場所にいない。そいつなら自分の魔力量なんて気にせずホーンラビットが見える限り殺戮を繰り返すはずなのに……。


「そ、そうだ。い、いったん落ち着こう。王都に行って王女様に助言を貰おう。魔力が残ってるうちに合って助言を貰ったら急いで戻って来よう。それがいい。こんな大きな壁があるんだ。俺が返ってくるまでの間は持ってくれるだ。ろ、ロミアとの約束はまた今度にしよう」


 フレイは逃げ腰になり、光の速さかと思うほどの速度で王都のある西へと飛んで行った。


「う、嘘だろ……。あのフレイが逃げた……。初めて会った時、逃げる行為だけは絶対に嫌がっていたフレイが……逃げた。って、あの大群、どうする気だよ!」


 僕は迫りくるうねる地面を見て、背筋に怖気を得る。今は六月、寒さとは無縁の梅雨時だ。にも拘らず、体が震え、手が悴んでいるように動きが悪い。


 敵は、一個体では強い魔物ではないホーンラビットだが……、大軍勢となれば話は別だ。


 質には質か数。だが、数が相手ではこちらも数で戦うしか勝ち目はない。


 あまりに多くのホーンラビットが集まったら大勢の冒険者で立ち打つしかないのだ。


 ――フレイほどの魔法使い、なんなら去年、勇者対抗戦二位の『赤色の勇者』の実力でも、倒しきれなかったホーンラビット達を僕にどうにかできるのか……。


 僕もフレイと同じように逃げようと一瞬考えた。だが、少しでも数を減らして時間を稼ごうと考え直す。


 ――フレイだって一〇時間も戦っていたんだ。戦意喪失と言ったら聞こえは悪いけど、限界まで戦っていた。僕が皆に挨拶をしている時間をフレイが稼いでくれていたと考えれば、ありがたい話だ。でも、どうせなら逃げずに最後まで戦ってほしかった。勇者の底力を見せてほしかった。そうすれば、僕は赤色の勇者を少しでも許せたかもしれない……。


「僕には広範囲攻撃が無いんだよ……。これだけの数を倒せる魔法なんて放てないし……。いや、待て」


 僕はホーンラビットの習性を調べるために手引きを開く。


『ホーンラビットは群れで行動する場合、敵と見なした一体を倒しきるまで他の個体には興味を示さない』


「やっぱり。ホーンラビットの敵として認識された相手が倒されるまで他の相手に興味を示さないんだ。これなら……、今の僕にでも止められるかもしれない……」


 僕は背中に背負っているフルーファの持ち手を握る。物凄く安心感のある持ち具合で横から引きはがすように抜いた。


「ふぅ……。シトラ、ミル……。ごめん。今日中には多分帰れないフレイの炎が消える前に日が上がってくれればいいんだけど……。黒卵さん、僕に力を貸してください」


 『はい! もちろんです!』


 僕はあまりにも懐かしい声を聴いた。最後に聴いたのはいつだろうか。パッと思い出せないが六カ月前だと思う。もう、驚き過ぎて肩を大きく跳ねさせてしまった。


「く、黒卵さん! 喋れるようになったんですか……」


 僕は背中にいる黒卵さんを見ながら呟く


「いやはや……。主の背中があまりにも寝心地がいいので寝過ぎてしまいました……。寝起きすぎて殻も破れませんし、外には出られません。ですが、孵化できる状態にありますから、もう、長い間眠りに着いたりはしません」


「そ、そうなんですか。えっと、あの、力を貸してもらえるというのはどういう具合に?」


「私も攻撃魔法を発動して敵を殲滅します。主はあのとんでもなく多いホーンラビットの引き付け役になってください」


「なるほど……。わかりました」


 僕は頭の中に流れ込んでくる黒卵さんの美声に心が震える。


「にしても主、私が眠っている間に、相当強く成られましたね。さすが私との相性が一〇○パーセントなだけありますよ。ドラゴンの力にも押し負けない肉体に変化しているようですし、ほんと私の眼に狂いはなかったようです」


「今さら何を言われても驚かないようにしますけど、黒卵さんはやっぱりドラゴンなんですね……。ブラックワイバーンを倒してきましたけど、あの個体より討伐ランクが上の生き物なんて考えられません」


「私の重さを利用して倒した魔物ですね。私をあのような魔物と一緒にしないでほしいです。ま、別に比べるまでもないんですが、今は目の前の敵に集中しましょう」


「そうですね。じゃあ、行きます!」


「了解です!」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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