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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
赤色の勇者をもとに戻すために出来ること

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化け物じゃない

「シトラはその本を読んだの?」


「うん。文字の勉強をするために読んでたんだよ。でも、こんな化け物みたいな魔物を倒したなんて……。信じられない。だって、音速で空を飛んで咆哮で大地を削り、巨大な詰めはオリハルコンをも壊すんでしょ」


「…………そんな化け物がいるんだね」


「え? 違うの……」


 僕はシトラの読んでいた場面を流し読みする。最後に、~と思った、と書いてあり、実際に行われたわけではないようだ。


「えっと……、この本の作者がシトラの言ったように感じたんだって。実際は違うよ」


「そ、そうなんだ。じゃあ、どんな感じだったの?」


「ん~っと。全長が四〇メートルあって……」


「化け物じゃない!!」


 僕がブラックワイバーンの大きさを言うとシトラは大声で叫んだ。頭がキーンとなり、耳鳴りがする。


「もう、シトラ。声が大きいんだからもう少し押さえてよ……」


「ご、ごめん……。って、四〇メートルの生き物がいたらもう、化け物と一緒でしょ」


 シトラは耳をシュンとヘたらせ、尻尾も下げる。


「あと冒険者が使っていた剣でも全く傷を付けられなくて魔法も効かなかったらしいんだ」


「や、やっぱり化け物じゃないの。そんな化け物によく死なずに帰ってこれたね……」


「シトラに合うためだったから……。僕は死に物狂いで戦ったんだよ」


「き、キース……」


「僕はシトラのおかげで生き残れたんだ。ありがとう、シトラ。君がいてくれなかったら僕はとっくの昔に死んでいたよ」


「も、もう……。馬鹿、そんな恥ずかしい話をよくつらつらと言えるね……」


 シトラは視線をそらし、モジモジしているものの尻尾が引き千切れんばかりに振られているので嫌ではないのだろう。


「にゃ~! 二人の世界に入らないでくださ~い!」


 ミルは僕とシトラの間に割り込んできた。


「もう、ぼくだってブラックワイバーンと戦ったんですから、キースさんに聞かずぼくに聞いてください」


 ミルは胸をドンっと叩き、鼻高々に言っている。自慢はあまり良くないが、すごいことに変わりはないので大目に見よう。


 シトラはミルに色々質問し、ミルは何度も答える。その度、シトラは嘘だというのだが、何も嘘は言っていないので、やはりブラックワイバーンは化け物だと決定づけた。


 僕達は鍛錬を終え、お風呂に向う。もう、午後五時頃になっており辺りが暗くなり始めた。


 僕は男湯に入り、ミルとシトラは女湯に入る。


 女湯からは楽しそうな声が聞こえ、男湯は僕一人で静かだ。


 まぁ、黒卵さんがいるので一人ではないのだけど、友達と入ると気分が違うんだろうな……。


 体を綺麗に洗い、布で体の水分を取ってから蒸し風呂(サウナ)に入る。以前は入り方がわからなかったのだが、イグニスさんに入り方を聞き、試してみると案外気持ちいいので最近は癖になりつつある。


 焼き石にアロマ水を掛け、部屋の温度を一気に上昇させる。一〇分ほどじっとして座っていると全身から汗が出てきて体が悲鳴を上げていると思い、サウナから出た。


 布で汗を拭き取り、水風呂に入る。一分ほど入ったら水風呂から出て体を拭き、天気のいい露天風呂に向う。


 木製の椅子に座り、外気の温度と体内の温度の違いから体がスーッと冷えていく感覚があるものの内側からこみ上げてくる温かい活力を全身に回し、体調を回復させていく。


 眠りそうなほど気分がよくなり、眼をつぶっていると奥の扉がガチャリと開き、誰かが露天風呂に入っていた。


「キースさ~ん。愛しのミルですよ~」


 ミルは体の前部分を隠す気もなく、僕に飛び込んできた。


「み、ミルちゃん! 前をちゃんと隠して!」


「ふにゃっ!」


 ミルはシトラに尻尾を掴まれ、床にハエ叩きのようにぺしゃんと落ちる。


 シトラは布で体の前側を隠し、露天風呂に入ってきていた。


「き、キースもちゃんと隠しなさいよ……。も、もろ見えじゃない……」


「あ、ご、ごめん……。ボーとしてた……」


 僕はサウナの影響で黒卵さんを抱きしめた状態で寝落ちしかけていたため、下半身に布を置くという動作を忘れていた。


「もう、似た者同士なんだから……」


 僕とシトラ、ミルは露天風呂のお湯に入る。僕を中心にミルとシトラが両脇にいる状態だ。こんな僕が両手に花の状態になるとは……。家を追い出された時は全く想像していなかった。


 でも、よくこんな状況でも平然としていられるなと逆に冷静になる。あれかな。兄妹とか、家族みたいな感じに見えるのかな。まぁ、二人が可愛いのは変わらないんだけど……。


「ねえ、キース。そのブレスレットは何?」


 シトラは僕の左手についているブラックワイバーンの革で作ったブレスレットを指さす。


「あぁ、これはブラックワイバーンの革で作った冒険者パーティーの証だよ。僕とミルは仕事の都合上勝手がいいから冒険者パーティーを作ったんだ。シトラにもあとであげるからね」


「え……、くれるの?」


「あと三個あるから、シトラに一個あげる。仲間の証って言うとちょっと恥ずかしいけど、ブラックワイバーンの革で出来ているからさ。本当はすごく高級な品になるんだけど、靴を作る時に余った革で靴職人さんが作ってくれたんだ」


「へぇ~。私も欲しい……。じゃあ、私もキースたちの冒険者バーティーに入ればいい訳ね」


「シトラが冒険者になってもいいというのなら……。でも、冒険者に無理にならなくてもリストバンドはあげるよ。これから冒険者の仕事を受けるかわからないし、そもそもルフス領から離れるかもしれない。僕とミルはギルドカード(仮)しか作っていないから、他の領に行くと使えなくなる。本命のギルドカードをそろそろ作るのもありかもしれないね」


「化け物を倒せるくらい強いなら、他の人の役に立てるように冒険者は続けてもいいんじゃないの? キースは人助けが好きなんでしょ。それなら冒険者を続ければいいじゃん」


「確かに好きだけど自分たちの命を懸けてるんだよ。もしかしたら依頼中に死ぬかもしれない。何が起こるかわからないから、不安なんだよ」


「なら、難しくない依頼を受ければいいんじゃない? そうすれば死ぬ可能性は少ないし、感謝されるでしょ。人助けは大事だよってお母さんも言ってた。することがないなら人助けをすればいいんだよ」


「シトラ、人が嫌いじゃなかったっけ? そんなに人助けを進めてくるなんてなんか珍しいね」


「今でも人は嫌いだよ。でも、依頼をこなせるのなら冒険者は続けるべきだと思う。感謝される仕事なんてたくさんない。冒険者の一番の報酬は感謝の言葉だよ。私はしたことないけど、本に書いてあった。どんなに高い報酬よりも、感謝の言葉の方が嬉しかったって」


「なるほど……。確かに感謝されるのはすごく嬉しかった。ね、ミル」


「はい。ぼく、人族は嫌いですけど、感謝の言葉をくれた方は好きです。特にキースさんとか、キースさんとか、キースさんとか……」


 ミルは僕の腕を掴みながら擦り寄ってくる。

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