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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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元日の鍛錬

「これで見えないと思う。今度からもっと気をつけてね」


「は、はい……」


 ミルはペコペコと謝り、走行を開始するも、走り辛そうにしていた。


 股がすうすうして落ち着かないんだそう。まぁ、仕方ない。我慢してもらうしかない。


 僕とミルは一時間ほど走り込みを行い、汗を掻いてアイクさんのお店に戻ってきた。


 お店に入るとミルはすぐさまショートパンツを履き、体の汗を乾いた布で拭き取って水で洗う。


 ミルの汗にはフェロモンが含まれており、放置すると発情した雄猫がお店にあつまってしまうのだ。


 水で洗い流せば症状は大きく出ないのでミルは徹底して汗を処理する。


 アイクさんは元日にも拘わらず、朝早く起きて食事を作ってくれた。


 ミルも料理に関わり、最近は少しずつ上達している。ほんとやれば何でもできる子で、勉強や料理、運動、剣術などなど、多彩な素質を持っていた。


 僕とは大違いで羨ましい限りだ。


 でも、ミルは全て僕のためだと言ってくれて少々こっぱづかしい。


 僕もミルのために何かしてあげたいのだが、すでにいっぱいしてもらっていると言われ、拒否される。今はシトラを取り返すことだけを考えていてくださいと言われ、本当によくできた従者だった。見限られないように頑張ろう。


 僕とミルは料理を食べ、活力を付ける。特にすることもないので僕はミルと手合わせすることになった。戦闘の訓練でどれくらい動けるのか知っておきたい。


「じゃあ、ミル。木の剣、木のナイフ、拳、脚の四つの武器を使って戦うよ。どれか一つでも振れたら負け。当てれば勝ち。簡単でしょ」


「はい。とても簡単です」


 僕とミルは互いに木剣を持ち、木のナイフを忍ばせ、手足を使う。先ほど走り込んできたので体は準備万端だ。腕を軽く回し、跳ねる。


「よし! やろうか」


「はい!」


 僕は硬貨を取り出し、親指で弾く。地面に落ちてきた瞬間が始まりだ。


 硬貨が地面に落ち、甲高い音を響かせる。


 僕とミルは両者共に動き、裏庭の中央で木剣をぶつけ合った。木剣同士で鍔迫り合いが起り、僕達はいったん離れる。離れた途端にミルは僕の後ろに回り込み、木剣を振りかざしてきた。低く早い移動が出来るため、少し目を放すとすぐにどこにいるのかわからなくなってしまう。


「はあっ!」


「ふっ!」


 ミルは頭上から木剣を振りかざし、僕を攻撃する。だが、木剣は空を切り、体の軽いミルは木剣に振られて芯がブレブレだった。剣の攻撃をかわした僕は回し蹴りをミルに放つ。だが、ミルは両手で蹴りを防ぎ、跳ね飛ばされた。空中で身をひるがえし、地面に着地する。


「ふぅ……。危ないです。もうちょっとで直撃していました」


「よく咄嗟に守ったね。身のこなしも凄い。ミルはやっぱり動けるんだよ」


「ありがとうございます。でも、キースさん、手加減してますよね。ぼくを傷つけないように配慮してもらっているのに攻撃を入れられる気がしないんですけど……」


 ミルは苦笑いを浮かべ、木剣を構えている。


 今度は僕から動き、ミルの防御力を見る。木製のナイフを左手で持ち、シュっと投げる。


 ミルはナイフを木剣で防ぐ。


 僕は一瞬の隙を見逃さず、開いた脇腹に木剣を振るった。


 腕が上に向っているのでしゃがむには間に合わない。普通に跳躍しても剣が先に当たる。


「ふっ!」


 ミルは頭を横に動かし、その場で一回転するようにして木剣の攻撃をかわした。


 僕は剣の素人なので切り返しなどできない。剣を振り切ったころ、ミルの持っていた木剣が僕の顔の真横に来ていた。どうやら回避しながら攻撃を狙っていたらしい。顔、擦れ擦れでしゃがんでかわし、真上から飛んでくる蹴りを両手で受け止め、僕とミルは停止する。


「はは、ほんと空中でよく動けるね。体のバネが凄い……」


「はぁ、はぁ、はぁ……。凄い体力を削られてますけどね。攻撃が通ると思っていたのに通らないと悔しいです。あとちょっとなのに……」


「僕も同じだよ。今日はとことん鍛錬しようか」


「はい! よろしくお願いします!」


 僕とミルは元日から厳しい鍛錬を一日中行った。


 元日らしい遊びや行いはせず、ただただ鍛錬を行い、力を高め合った。


 ミルと一日中戦ってわかったことは、身のこなしと早さは僕を越えているということだ。


 もともと獣族の身のこなしと速度は物凄いので当たり前だ。


 持久力と力は今のところ僕の方が上だった。


 才能の面で言うとミルの方が何枚も上手で僕の攻撃が一向に当たらない。ミルの方も僕に攻撃を当てられていないが、惜しい時は何回もあった。


 ミルが剣術や体術を完璧に覚えたら、僕は攻撃を防ぎきれないかもしれない。お昼に料理を食べたのは覚えているが、何を食べたかは覚えていない。それくらい午後の七時頃には疲れ切っていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。つ、疲れました……」


「はぁ、はぁ、はぁ……。ほんとにね……。にしても、ミルはすごく強くなったよね。こんなに動けるようになるなんて思わなかったよ」


 僕とミルは二人そろって調理場のひんやりした食台にぐてーっと上半身を倒し休んでいた。


「キースさんに稽古をつけてもらってますし、アイクさんの美味しい料理のおかげです。筋肉とか、骨がしっかりしてきた気がします。今まで成長できなかった分がやっと大きくなり始めたんだと思います」


「そうだといいね。身長や骨格は変わらないかもしれないけど、身体つきは変わるかもしれない。筋肉が付けばそれだけ力も出るし、戦いやすくなる。ミルの戦い方にはあまり力を使う筋肉は必要ないかもしれないけどね」


「ぼくは相手を翻弄する戦い方が合うと思っていますから、出来るだけ早く動きたいですね。力は力負けしないくらいあれば十分なので、走り込みで体力を、柔軟で体の柔らかさをもっと強化します!」


「うん。目標を立てるのは良い鍛錬の仕方だと思う。もう少し小さな目標も考えるといいんじゃないかな。仕事以外に一日どれだけ走るとか、毎日柔軟をするとか」


「そうですね……。じゃあ、朝起きた時と寝る時に柔軟をして走り込みは毎日最低五キロメートルにします」


「うん、いいんじゃないかな。今日から一緒に頑張って行こうね」


「はい! ぼく、キースさんのお役に立てるようもっともっと頑張りますね!」


「頑張り過ぎて倒れないようにね」


「もちろんです。でもぼくは頑張ることが好きなのでやり過ぎちゃうかもしれません。その時はキースさんが優しい声で引き留めてください。キースさんの言うことならちゃんと聞きますから」


「わかった。ミルが頑張り過ぎの時は僕が止めるよ」


 僕とミルは互いに手を握り合い、高め合う存在として誓い合う。こうやって見ると、ミルはとても男っぽい。顔だけだと、美形の男と言っても過言じゃないくらいイケメンに見える。美少女にも見えるのになんて得な存在なのだろう……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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