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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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人の皮を被った化け物

「今日はどんな夕食か、すごく楽しみです」


「そうだね。まあ、ミルならどんな料理が出てきてもお腹いっぱいまで食べちゃうでしょ」


「えへへ~、アイクさんの料理が美味しすぎるのが悪いんですよ。でも、食べた分だけ運動するので、大丈夫です」


「ほんとに? 最近、太ももとか、お尻とか、前よりもふくよかになった気がするんだけど」


「ど、どこ見てるんですか。そ、そんな訳ないじゃないですか」


 ミルは自分で自分のお尻に手を置き、フニフニと揉む。ミルの顔が真顔になり、耳がシュンと垂れる。


「や、柔らかさが増しました……」


「ま、まぁ。女の子だから仕方ないよ。食べた分だけ体が蓄えちゃうんだ。前のガリガリよりは健康的で魅力が増してると思う。ただ、あまり太り過ぎると動けなくなるから、体の筋肉を増やして食べ物を力に変換してもらおう」


「は、はい! ぼく、もっと動いて筋肉を付けます。そうすれば、体も痩せていきますし、必要な脂肪は残りますよね」


「うん。体には脂肪も必要だからね」


「キースさん、ぼくのお尻、触りますか?」


 ミルはお尻を僕に向け、触ってもいいと言わんばかりに近づけてくる。


「触らないよ。触りたいのはやまやまだけど、触ったら歯止めが利かなそうだ」


「別に布越しなんですから、スリスリ~。スリスリ~」


 ミルは僕の太ももにお尻を当ててくる。柔らかい。だが、周りに人もいるのだからもう少し考えてもらわないと困る。僕はお仕置きがてら、お尻を叩くことにした。決して触りたかったからではない。お仕置きのためだ。


 僕はミルのお尻を音がパシッツ! と鳴るほど強めに叩く。


「ひゃんっ!」


 ミルはお尻を叩かれて甘い声を出した。お仕置きのつもりだったのだが、逆に恥ずかしくなる。


「み、ミル。お尻を擦りつけてこないで。周りに人がいるんだから」


「ご、ごめんなさい……。あ、あの、キースさん……、もう一回叩いてくれますか……」


 ミルは涙目になりながら口角をあげ、僕にお願いしてくる。


「だ、駄目。なんか、変な気分になる」


「き、キースさんに叩かれたら、な、なんか……、キュンキュンって……」


 ミルは頬を赤く染めていき、両手で顔をパシパシと叩き、気を取り戻す。


 僕とミルはアイクさんのお店に戻り、夕食を得てお風呂に入り、部屋に戻る。


 ミルはすぐにベッドに倒れ込み、布団をかぶって眠りに着く。


 僕は黒卵さんを持って太ももの筋肉を鍛える。下半身の筋肉の方が上半身の筋肉より量が多いそうだ。なら、下半身の筋肉を鍛えた方が効率が良い。そんなことを考えながら僕は鍛錬を行う。


 太ももがはち切れんばかりに膨らみ、バツンっと言う音と共に脚に力が入らなくなった。痛みが走り、立てなくなる。


 床に寝ころび、天井を見上げていると脚の痛みが引いていき、また立てるようになった。


 黒卵さんのおかげで体が治されていると思うのだが、人からどんどん遠ざかっているような気持になる。


 どうしてこうなったのだろうか……。考えても答えは出ない。もとの体は帰ってこないが、今の体も悪くはない。すでに人の体の化け物になっている訳だが、気持は人間のままだ。


 心まで化け物にならないよう、気をつけないとフレイのような醜い姿になってしまうかもしれない。


 その点に関しては僕に三原色の魔力がないので大丈夫だと思うが、人の形をとどめていられないかもしれない。


 どうしようもないかもしれない……。


 ミルとシトラさえ幸せに出来ればそれでいい。お金は残せた。ミルとシトラが一生働かなくてもいいぐらいの資金がルフスギルドに預けられている。


 最悪、僕に何かあったとしても、シトラとミルに配分されるようになっているので死の恐怖はない。ただ、二人と共に生活できなくなるのは……。


 僕が自我を失って化け物になったら誰か止めてくれるかな。


 少しくらい、悔やんでくれるだろうか。


 僕は自分の体が僕じゃなくなっていくような感覚を得ながら鍛錬を続ける。


 少しでも強くなり、自分の力を抑制できるようになればフレイのように暴走せずに済むかもしれない。


 僕は強い力に耐えられるように体を鍛え続けた。何度も筋肉が断裂するも、時間が立てば治り、密度が増していく気がする。


 鍛錬を始めてから三時間が経ち、朝の仕事をする。


 毎日仕事をして鍛錬をする。次の日も仕事をして鍛錬をする。同じことの繰り返し。嫌じゃないが、面白くもない。


 ただ、ミルの成長を見るのは楽しい。少しずつの変化だが、着実に強くなっている。


 聖誕祭から六日後、一月一日となり元日を迎えた。


「ん~、今日は元日、一年が終わってしまった。去年は辛い経験ばかりだったからな。今年は楽しいことが起ると良いな……」


 僕は初日の出を見て気分を一転させる。


 黒卵さんにも日光を当て力を与える。黒卵さんが孵るまであと一ヶ月ちょっと。何なら、もう孵ってもおかしくない。そんな気さえする。


 ときおり鼓動が聞こえるのだ。


 何かしらの生き物が黒卵さんの中にいる。蠢いているようなザザザッという音や、叩いているようなどんどんって音、引っ掻くようなガリガリ音まで、最近になって黒卵さんの動きが活発になってきた。


 とうとう孵るんだなとしみじみ思い、殻を優しく撫でる。


「さてと、元日は仕事が休みだから、鍛錬でもしてようかな」


 僕は黒卵さんを革鞄に入れ、背負う。元旦に走っている人はおらず、僕が優越感に浸っていた。そんな時、後方から何か走ってくる。


「キースさん、待ってくださぃ~」


 ミルは僕を追いかけて走ってきた。別に寝ていてもよかったのにと思いながら、僕は脚を止める。


「どうしたの、ミル。今日はもっと寝ていればよかったのに」


「ぼ、ぼくも朝に鍛錬を始めようと思いまして、キースさんについて来ました」


「新しい年の目標ってこと?」


「はい。ぼくは朝早く起きてキースさんと一緒に鍛錬をするんです。主に体力作りの走り込みを行いたいと思います」


「いい心がけだね。初めは無理せず少しずつ行うと続けやすいよ。何事も続けないと意味がないからね」


「はい! 頑張ります!」


「あと……、ミル、気づいているかわからないけど、パンツが丸見えなんだけど……」


「え⁉」


 ミルは上着だけ羽織り、ズボンやショートパンツを履いていなかった。急ぎ過ぎて履き忘れてしまったらしい。


 上着が大きいお陰でパンツをギリギリ隠せてはいるものの、本当にギリギリで走ったら見えてしまう。


「うぅ……。わ、わざとじゃないんです。信じてください……」


 ミルは泣きそうな表情になり、顔を赤くしていた。


 僕は上着を脱ぎ、ミルの腰に袖を回し得てしっかりと縛り、パンツが見えないようにした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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