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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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髪の色がイエローじゃない

「なあなあ、聞いたか。ブラックワイバーンを討伐したのは黒髪だって噂だぞ」


「まじかよ。黒髪なんて伝説上の人物じゃねえのか? でも、なんで黒髪がルフス領にブラックワイバーンを売ったんだ?」


「さぁ……。詳しい話はわからないが『赤の岩山』でブラックワイバーンと戦った冒険者の二人が黒髪を見たって話しだぜ。病院で今すぐ探せだの、話がしたいだのうるさいらしい」


「黒髪を見た人物がいるのか……。俺もみてみたかったな」


 お客さんはブラックワイバーンと黒髪の男と言う二つの単語の話ばかりが繰り広げられていた。


 皆さんのすぐ近くにいる白髪の男がゴブリンの血を頭にかぶってしまって黒髪に見えていただけなんですと言いたいが、言ったらすぐに噂が広がって生活どころではなくなってしまう。


 お昼はまだ一般人の方ばかりだったので良かったのだが、夜になるとどんちゃん騒ぎで僕が仕事をしてきて一番の盛り上がりだった。ミルがいなかったら僕一人で舞わせていた気がしない。


「ミルちゃん! エールもう一杯!」


「は、はい! 今もって行きます!」


「キース君! こっちに枝豆とエールを五杯ずつ!」


「わ、わかりました!」


 僕とミルはせっせと働き、昨日のブラックワイバーン戦の時と同じくらい疲れた気がする。こんなに冒険者さん達の活気が戻っているなんて思わなかった。お金の羽振りが良くなったのもブラックワイバーンの影響だろうな……。


 今日は午後一一時ほどまで多くの冒険者さん達がお店を訪れた。亡くなった方が多い中、怪我を治し、冒険者に復帰したとアイクさんに伝えに来るのだ。


 ベテラン冒険者さんもアイクさんに挨拶してたし、ほんと冒険者さん達の先輩なんだなと感動する。


 多くの冒険者さんが挨拶をしに来ていたが、アイクさんはいつも通り接していた。でも、口角が上がっていたのでアイクさんも内心ほっとしているかもしれない。ただ、僕の知る『赤光のルベウス』さん達はまだ入院中なのか、顔を見せなかった。


「はぁ……。ミル、疲れたよ……」


 僕はお店の外で掃除をしていたミルの背後からムギュっと抱き着いた。ミルの髪から少々甘い香りが漂う。甘い香りが汗のにおいなのだとしたら相当いい匂いだ。


「う、うわ……。ど、どうしたんですか、キースさん。キースさんの方から抱き着いてくるなんて珍しいですね……」


「ミルの元気を分けてもらおうかなって思って……。嫌だったかな?」


「い、いえ。全然いじゃないです。逆にぼくのほうが元気を貰ってしまいそうですよ」


「はは……。そう言ってくれると嬉しいな」


 僕はミルの温もりを感じ、少し思い出してしまった冒険者さん達の焼死体の映像を掻き消す。今はミルの力を借りて心の安定を保っているが、いつかは自分で制御できるようにならないといけない。


 数秒間、抱き着いたあと僕が掃除を代わり、ミルにはお店の中の掃除をしてもらう。


 季節は冬だ。外の掃除は体に来る。ミルに抱き着いた時、体がすでに凍えていた。手が悴んだ状態で掃除をしてくれていたので、薪ストーブによって空気が温かいお店の方に向かわせようと思ったのだ。


 だが……。


「キースさん。ぼくが外の掃除をしますよ。キースさんはお店の中で温まっていてください」


「ちょ、ミル。それは僕が考えていたことなんだけど……。ミルが温かいお店の中に戻ると良いよ。あとは僕がするから」


 僕とミルはどっちが掃除をするかと言い合いになり、アイクさんに頭部に手刀を食らうまで続けていた。


 結局二手に分かれて掃除をすることになり、すぐに掃除を終わらせてお店の中に戻る。温かいお風呂の中に入り、体の芯まで温めた後、体を洗い、お風呂を出て寝る準備を終わらせたのち部屋に戻る。


「ふんふん~。ふんふん~。はぁ~、キースさんのブラッシング、最高ですぅ……」


 僕たちはベッドに座り、ブラッシングをしていた。


「そう、よかった。ん……? ミル、髪が何か色が変わっているような気がするんだけど」


 僕はミルの髪をしっかりと見る。


「え? どういうことですか?」


「い、いや……。三カ月くらい前はクリームっぽい色だったでしょ。三原色の魔力の色は多分イエローって言っていたよね?」


「は、はい。髪が黄色っぽいのでイエローかなって思ってるんですけど……」


「えっと、落ちついて聞いてほしいんだけど、ミルの髪を櫛で解いてたら光沢と言うか、凄く綺麗に見えるようになっているんだ」


「え……。そ、それってどういう意味ですか?」


「その……。イエローの髪の人はどれだけ髪を解いても光沢なんて出ない。もしかしたら、ミルの髪は金髪かも……」


「き、金髪……。じゃあぼくには三原色の魔力がないってことですか……」


「そうかもしれない……」


「うぅ……、うぅぅ……」


 ミルは三原色の魔力がないと言われ、泣いてしまった。そりゃあ、三原色の魔力が無いなんて言われて泣かない方がおかしいか。


「やった~! お母さんありがとう! お父さんもありがとう!」


 ミルは万歳して大喜びしていた。僕には理由がわからず、困惑していた。


「み、ミル。何が嬉しいの? 三原色の魔力がないんだよ。魔法が使えないんだよ」


「だってだって、キースさんといっしょなんですもん。嬉しいに決まっているじゃないですか。はぁ~、どうせならキースさんと同じ白髪が良かったな~。でも、白と金は近しいですし、二つ合わせて白金(プラチナ)です。プラチナですよ。プラチナ。最高級の鉱物です。ぼくとキースさんが出会ったのはやっぱり運命だったんですよ!」


「ちょ、ちょっと落ち着いて。ミルに三原色の魔力が本当にないかまだわからないんだから。あと、他の人には金髪と言わない方がいい。薄いイエローと言ったほうが生きていきやすいからね。三原色の魔力が無いと人扱いされないかもしれない」


「えぇ……、でも、ぼくはキースさんと同じで三原色の魔力を持っていないんだぞ~って言いてやりたいんですけどね」


「別に何の自慢にもならないからね。ミルの髪はまだイエローにも見えるから、普通に誤魔化せると思う」


「もう、キースさんは心配性ですね。わかりました。キースさんに心配をかけないよう、イエローと言っておきます」


「その方がいい。あと、一応調べてみよう。三原色の花を明日にでも買って調べたらすぐにわかる。ミルは調べたことないの?」


「ありません。三原色の花って言うのがどんな花なのかわからないので、教えてくれますか」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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