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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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ちょっとした成長を感じる

「キースさん、ホーンラビットの数が凄いです。もう、そこら中にいます。何羽いるのか数えられません」


 ミルは苦笑いをして頭を横に振った。


「えぇ……。数がわからないほど大量にいるんだ。そうなると、袋に詰めて持っていくだけじゃ、大変かもしれないな。荷台でも持ってきた方が賢いかもしれない」


「じゃあ、明日からは荷台を持って来ましょう。今日はどれくらい捕れるか検証すればいいじゃないですか?」


「そうだね。じゃあ、僕は練習も兼ねて弓矢でホーンラビットを倒していくよ。今はお金が必要ってわけじゃないから、戦闘経験を積んでいこう」


「はい! じゃあ、ぼくは短剣でホーンラビットを一撃で屠る鍛錬をします!」


 ミルは腰に掛けてあった短剣をさっと引き抜き、逆手持ちで構える。


「それなら、勝負しようか。僕とミル、どっちが多くのホーンラビットを倒せるか」


「いいですね! 負けませんよ!」


 僕とミルは互いにホーンラビットの討伐数で勝負する。遊び感覚で行ったほうが仕事も楽しいはずだ。


 僕は黒卵さんを背負いながら、弓と矢を持ち、ホーンラビットを探す。草むらで身を隠しながら動いていると、のんきに草を食べているホーンラビットを見つけた。


 僕は弓に矢を置いて弦を引く。目一杯引き、弦を離した。すると、弦が元に戻る勢いで矢がホーンラビット目掛けて飛んで行く。


『ギュッツ!』


 僕の放った矢はホーンラビットの側頭部に当たり、貫通した。まさか一発目で当たるとは思わず、喜んでいたのも束の間……。


「キースさん見てください! 三羽倒せました~!」


「な! 僕はまだ一羽だけだよ……」


「ふっふ~。じゃあ、このままぼくが大差で勝っちゃいますね!」


 ミルは胸を張り、自信満々に話す。


 僕も負けていられない。そう思い、弦を引いては矢を放ち、攻撃を外していく。どうやら弓は焦ってはいけないらしく、心を落ち着かせないとどれだけ近づいても敵に当たらないとわかった。勝負はいったん忘れて攻撃を当てることに集中する。


『ギュッツ!』


「よしっ! 当たった。やっぱり、集中しないと当たらないな。集中力を鍛える練習にもってこいの武器じゃないか。集中力を切らさなければ物事も早く終わらせられる。威力はそこそこだけど、攻撃範囲があるから、牽制には使えるかもな。覚えておいて損はない」


 僕とミルはホーンラビットを思う存分狩っていく。自分達で運ばないといけないと言う後の仕事を忘れ、倒せるだけ倒し続けた結果……。


「えっと、ミルが二八八羽。僕が一八八羽か……。一〇〇羽も離されちゃったね」


「うわ~い。キースさんに初めて勝ちました。これでぼくもキースさんの役に立てます」


 ミルはぴょんぴょんと飛び跳ねながら喜んでいた。ただ、山のように積み上がっているホーンラビットを解体しなければならないと思うと、億劫になる。


「えっとミル、これを解体するのにどれくらい掛かると思う……」


「そ、そうですね。ざっと半日くらい掛かるんじゃないですかね。皮をはぐのも魔石を取り出すのも面倒ですし、練習をするだけならあまり多く解体しなくてもいいんじゃないですか?」


「じゃあ、一〇羽だけにしよう。あとはそのまま提出してルフスギルドの方にお願いしよう」


 僕達はホーンラビットを一〇羽並べ、一緒に解体していく。


 お腹を割り、内臓を取り出したあと、魔石取り出して皮を剥ぐ。角は頭部から折り、解体していくと大体一羽に五分くらい掛かるとわかった。


 一〇羽でも五〇分かかるので、なかなかの時間食い虫だ。


 僕達にはあまり時間が無いので、集中して解体していくと三分にまで縮められた。ナイフの切れ味によって解体作業の効率が決まると言ってもいいと分かり、明日は包丁を持ってこよう。


「ふぅ~。結構楽しいですね。解体作業。ぼく、こういう単純な作業が結構好きかもしれません」


「僕も嫌いじゃないよ。続けられるのなら、全部やっちゃいたいくらいだけど、今日はアイクさんのお店で働かないといけないし、もう昼頃だから、いったん帰ろう」


「そうですね。でも、この数のホーンラビットをどうやって持っていきましょう……」


 僕達の倒したホーンラビットの体長は約三〇センチメートル。重さ三キロから四キログラム。麻袋に入れられるとしても一〇羽くらいが限界だった。荷台が確実に必要だ。荷台はもって来ていないので『赤の森』に置いてあった荷台を借りる。


 荷台にホーンラビット達を乗せていき、自力で引っ張ってルフス領まで戻った。地面に黒色の血液がしたたり落ちているのが少々怖いが冬なので腐り憎いはずだ。


 僕達が門番の方に荷台に何が乗っているのか見せてもらうと言われたので、見せると腰を抜かしていた。どうやらパンパンに詰められたホーンラビットが結構怖かったらしい。


 門を抜けてギルドの前にやってくると、昼間から動き始める冒険者さん達が大勢行き来していた。報酬の上限が無くなると聞きつけたのか、やる気がみなぎっている。


 僕達は荷台をルフスギルドの裏に運び、受付では鑑定しにくい大量のホーンラビットを見せる。ルフスギルドの職員さんも門番の方と同様に驚いて尻もちをつき、少々おびえていた。


 僕達は少し倒しすぎたと反省し、明日からはもう少し少なめにしようと思う。鑑定が三○分ほどかかり、金貨が約二四枚。三割増しになり金貨が約三〇枚に増えた。今までよりも報酬額が下がったが、経験と鍛錬のつもりなので十分すぎるお金を貰っていると思い、ありがたく受け取る。


「じゃあ、アイクさんのお店に戻ろうか」


「はい。戻りましょう。今日はなんか、ちょっとだけ成長した気がします」


 僕とミルは成長を実感しながらアイクさんのお店に戻る。少しでも成長していると感じられると、明日も頑張ろうと言う気持ちになる。でも、成長はすぐに止まってしまうから、コツコツと続ける習慣が必要だ。習慣さえついていれば僕達は勝手に強くなる。


 僕達はアイクさんのお店に戻り、昼食を得た後にミルはストーブに薪を入れていき、掃除や薪割り、配膳など僕と同じような仕事を任されていた。


 お昼に来るお客さん達が選ぶ品の羽振りが良くなり、何があったのか疑問に思ったのだが、ブラックワイバーンが討伐されたおかげで給料が上がったらしく、いい品を食べられるようになったらしい。まさか普通の社会人の方々にも影響があるとは思わなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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