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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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ブラックワイバーンの肉

「ふぅ……。お風呂、気持ちよかったですね……」


「そうだね……。大きな仕事を終えた後のお風呂はやっぱり格別だよ……」


 僕とミルはお風呂場からあがり、濡れた体を乾いた布で拭き、綺麗な服を着る。


「あ、ミル。時間もあるし、ブラッシングをしてあげるよ」


「本当ですか! おねがいします!」


 ミルは魔道具で乾かした金色っぽい髪を束にして縛っていたのだが、紐をほどいて真っ直ぐな髪を解放した。


 僕はブラシを持ち、寝癖が付かないように綺麗に解いていく。少しずつ少しずつ、毛先をほどくようにゆっくりとブラシを動かす。


 ミルの髪を綺麗にブラッシングすると艶々のサラサラになった。触り心地がとてもいい。おでこを開けるように前髪をあげて紐で縛り、少々長い髪は紐でまとめる。


「これでよし。どうだった?」


「はぁ~、凄く心地よかったです……。もっとやってほしいですけど、アイクさんを待たせるわけにもいきません」


 ミルの表情はふやけており、心が解放されているような声を出す。


「そうだね。じゃあ、続きは寝る前だね」


「寝る前にもブラッシングしてくれるんですか……」


「うん。僕、ブラッシングをするのが好きみたいなんだ。ミルの髪を触っていると気持ちいいし、ミルもブラッシングされていて気持ちがいいなら別にしてもいいかなって思ってさ」


「ぜひ、お願いします。もう、ブラッシングをされるのが気持ちよすぎて、そのまま寝落ちしちゃいそうでした。ぼく、ブラッシングをされるのが大好きみたいです」


 僕とミルは互いに約束して食堂へと向かう。食堂のテーブル席にはコップとナプキンが置いてあり、良い料理屋さんみたいで気分が少し上がる。


 僕とミルはテーブルに座り、アイクさんの作った料理を食べる。


 今日はブラックワイバーンの素材を使った料理が提供された。肉がプルプルでナイフを入れると動かさなくても切れてしまう。こんなに柔らかい肉を始めて食べるので緊張して手が震える。


「ハグ……」


 僕とミルはほぼ同時に肉を食べた。ミルは涙を流し、僕は感動する。


 味付けが美味しいのはさることながら肉がすごい。


 以前食べた最高級の牛以上に美味しく感じる。こんなに美味しくていいのかと言うくらいの味だ。何であの狂暴な魔物の肉がこんなに美味しいんだ。もっとガチガチで噛みきれないくらいの肉だと予想していたのに……。


「うぅ、うぅぅ……。キースさん。ぼく、生きててよかったです……。昔、何度も死のうと思ったんですけど、生きててよかったです……」


 涙を流しているミルは肉をじっくりゆっくりと噛み締めて食べる。


「本当だね。僕も何度死んでやろうかって思ってたけど、何度も思いとどまって今ここにいる。生きていたらいいことがあるんだね……。こんなに美味しい肉にありつける日が来るなんて当時は微塵も思っていなかったよ」


「キースさんと知り合えて、ちょっとだけ強くなれて、美味しい肉が食べられるようになった。今、ぼくは一生の最高潮にいる気がします。それくらい美味しいです……」


 僕とミルはブラックワイバーンの肉を堪能した。


 美味しすぎて他の肉が食べられなくなりそうなくらいなのだが、もう金貨一〇○○枚くらい食べたぞとアイクさんに言われ、僕達は引いてしまう。


 今、僕とミルのお腹の中に金貨五○○枚分の肉が入っているというのだ。僕達は唖然として、苦笑いを浮かべた後、普通の肉を食し、美味しさを噛み締める。


「はぁ……。肉の素材も大事だけど、アイクさんの腕が良すぎる……」


「はい……。アイクさんが料理を作れば、何もかも美味しくなっちゃうんじゃないでしょうか。アイクさんの料理が銀貨一枚で食べられるなんてどれだけ凄いことなんでしょうね」


「はは……。本当そうだよね」


 僕達は料理をお腹いっぱい食べて大満足。互いに渋いブドウジュースを飲みながらチーズケーキを食べて幸せな気分を味わった。渋いブドウジュースと酸味と甘みのあるチーズケーキがよく合い、とても美味しい。僕とミルは食事を終え、話し合う。


「ミル、靴が出来上がるまで一ヶ月間あるみたいなんだけど、どうする? 僕は雑用系の仕事とアイクさんの仕事を手伝おうと思っているけど、ミルの意見も聞かせてほしい」


「ん~。ぼくもキースさんと同じように働こうと思います。今回の兼でぼくはキースさんの力に全然なれませんでした。キースさんは、ぼくによく戦ってくれたと言っていましたけど、ぼく自身は逃げていただけにすぎません。ぼくはキースさんを守れるような力をもっと身に付けたいんです」


「僕はミルに守られているようじゃ情けなく思っちゃうよ。ミルは自分の身を守る力を手に入れた方がいいんじゃないかな。敵を倒す力も大切だけど、身を守る力も同じくらい大切だと思う」


「それなら、索敵と危機回避をもっと鍛えようと思います。キースさんの攻撃を回避できるようになれば、普通の人の攻撃に当たる気がしません。なので、これからも鍛錬の相手をよろしくお願いします」


「わかった。僕もミルの危機回避を見習って身のこなしをもっと柔軟にしようと思う。これから力だけじゃなく、しなやかさも必要になってくる。力としなやかさが加われば、もっと戦いの幅が広がって生き残りやすくなるはずだ。まぁ、大金を持って安全な場所に移住してもいいけど、仕事をしていないと落ち着かない体になっちゃったし、アイクさんのお店に置いてもらっているのに何もしないのはもったいないし……」


「ぼくも仕事をしていないと体がうずうずしちゃいます。根っからの仕事人になってしまったんですかね」


「たく、ブラックワイバーンを狩ったあと普通は働こうとする者はいないぞ。俺は特殊な例だ。俺でさえ冒険者を止めたのに、お前らはまだ続けようとしているのか?」


 アイクさんは温かい紅茶を持って僕達の前に置いた。


「まぁ、僕達は元々冒険者じゃありませんでしたし、冒険者の仕事って結構面白くて好きと言うか、今はすごく人手が足らないじゃないですか。僕達が休んでいる場合じゃないなって思ったんですよ」


「ですです。キースさんが仕事をすると言うのなら、ぼくも喜んで仕事をしますよ」


「はぁ……。ほんと良い奴らだな。何度泣かせれば気が済むんだ」


 アイクさんは眼をうるうるとさせ、後ろを向き袖で眼元を擦った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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