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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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重すぎる黒卵さん

 子供が母のお尻をよちよちと追うのとは違い、ブラックワイバーンは胸に大量の空気を吸い込んで、魔力で強化された喉を使い、咆哮を放ってくる。


『グラアアアアアアアアアア!』


「ふっつ!」


 ミルは攻撃が来る前からわかっていたと言わんばかりに前方へ飛び込んだ。


 咆哮が岩の地面に当たり、巨大な穴が出来る。


 ミルはブラックワイバーンの攻撃を回避しており、余裕そうな態度でお尻を叩き、敵を煽る。だが、ミルの表情に余裕はなく、懸命にこなしていた。


――僕がブラックワイバーンの機動力を奪わないと……。でも、どうやって……。


 僕は女王の重さがあってもブラックワイバーンを地面に落とせないと知っている。つまり直径一〇メートル以上の岩が乗っても機動力は落とせないと言うことだ。


 この岩山の中で、ロックアントの女王以上の岩があるとは思えない。あったとしても洞窟の中だ。


――考えろ、考えろ……。ブラックワイバーンの翼を切り落とすにしても、アイクさんから貰ったダガーナイフの刃が皮膚に全く入らなかった。僕の持っている包丁なら切れるかもしれないけど、生憎、アイクさんのお店に置いてきてある。取りに帰っている時間はない。いや、待て……。刃物は地面に沢山落ちてる。高級品の剣なら、あの弾力のある皮膚に傷を入れられるかもしれない。


 僕は走り回り、強そうな剣を拾っていった。もちろん、マレインの使っていた剣とマルトさんの浸かっていた剣も借りる。八本の剣を持ち、一本の柄をぎゅっと握ってブラックワイバーン目掛けて投げる。カッコいい装飾が施されていた剣は弾力のある皮に弾かれ、効果はなかった。あと七回同じ攻撃を加えたが、全て失敗に終わる。もう、ただの剣の攻撃では傷を追わせられないと知った。


 ブラックワイバーンの体は魔法が効きにくい。でも、その点は問題ない。なんせ、僕は魔法が使えなからだ。


――刺す、切るがだめとなると、刃物系では駄目だ。打撃系の武器か拳じゃないと倒せないのか。そうなると、羽を切り落とすんじゃなくて骨を砕いたほうが効果的だな。そう考えるとブラックワイバーンの背中に乗らなければならない……。


 アイクさんはブラックワイバーンをスペシャルウエポンの餓狼(スターファ)で倒したと言っていた。大斧だから、打撃も可能だったのだ。


 ハイネさんもブラックワイバーンには打撃が有効だと言っていた。


――なるほど、本体と出会ってやっと合点が当たった。ブラックワイバーンの体に傷をつけたというダガーナイフが通らないと言うことは今回の個体はアイクさんが戦った個体よりも強い可能性がある。倒しがいがありそうだ。


 強がってみたものの、アイクさんが倒したブラックワイバーンのよりも強いかもしれないと言うのは相当厳しい戦いになると予想できる。


――逆鱗を的確に狙って攻撃していかないと体力が足らなくなるぞ。


『グラアアアアアアアアアア!』


「ふにゃ~! あ、危ないですね! キースさん、ブラックワイバーンを早く止めてください! ぼくの体力が尽きてしまいそうです!」


「わかった! やれるだけやってみる。ミルは無理せず、体力がなくなったら戦闘を離脱するんだ」


「は、はい!」


 ミルは広い空間でブラックワイバーンを引き付けている。そのおかげで敵の高度が下がっており、僕の方が上を取っている状態だった。


 僕は崖の陰に潜み、ブラックワイバーンの背中を捉える。崖の狭い隙間から飛び出して、背中に飛び乗った。


「ふっ!」


『グラアアアアアアアアアア!』


「うわっ! 危ない危ない。ほらほらどうしたんですか。ぼくには攻撃がまだ一回も当たっていませんよ。そんなデカい図体しているくせに、一四八センチメートルのぼくを捕まえられないなんて情けないですね~!」


 ミルはブラックワイバーンの注意を引き、怒らせる。


 ブラックワイバーンは僕が背中に乗っているよりも、地面をちょこまかと動くミルの方が気になるようだ。


――自分の体が傷つけられないとでも思っているのだろうか。物凄く傲慢なブラックワイバーンなんだな。まぁ、僕には脅威を感じないのか。それとも無視されているのかどっちかな。


 僕は今すぐに逆鱗を見つけて破壊するか剥がして、脊椎を折る。そうすればブラックワイバーンはもう、動けない。


 僕はブラックワイバーンの背中を這いながら、普通の鱗と違う場所を探す。逆鱗の特徴をもっと調べておけばよかった。でも、脊椎の上にあるのだから背中を沿って行けば見つけられるはずだ。巨大な背中をゆっくり這い、入念に調べていく。三○メートル移動したくらいの時、首の付け根辺りが少々別の鱗と違った。


 僕は作戦を開始する。


「黒卵さん。すみません。少し、あなたの体重を借ります」


 僕は黒卵さんの入った革袋を背中から外し、持ち紐に縄を通してブラックワイバーンの首に巻き着ける。言うなればブラックワイバーンの首に黒卵さん付きのネックレスを着けるような感じだ。その頃になると、ブラックワイバーンの意識が僕の方にさすがに向く。だが、もう遅い。


 僕は縄をしっかりと結んだ。縄から手を放すと、ブラックワイバーンの体が地面に勢いよく落ちていく。


 縄の長さに余裕を持たせなかったので、ブラックワイバーンは首元から地面に落下し、腕や脚の力を使っても体が起き上がらないようだ。


 黒卵さん、重すぎなのでは……と僕は思ったが、今は好都合。全く身動きの取れないブラックワイバーンの逆鱗の隙間にダガーナイフを刺しこむ。


「はあっ!」


 逆鱗と皮膚の間にダガーナイフの刃が入り込んだ。


『グラアアアアアアアアアア!』


 ブラックワイバーンの咆哮が辺りの崖に当たり、岩が崩れてくる。周りには冒険者さん達が倒れており、このままだと皆が岩に押しつぶされてしまいそうだった。本来、周りの冒険者なんて気にしている場合ではない状況だが、今はブラックワイバーンが動けない状態だ、なら、助けに行ける。


 僕はブラックワイバーンの背中から飛び降りて倒れている冒険者さんを救い上げて避難させる。ミルも同じように冒険者さん達をすくい上げ、安全な場所に移動させた。


『グラアアアアアアアアアア!』


 ブラックワイバーンは岩を砕く咆哮を首の動く範囲で放ちまくった。


「くっ! 無差別に咆哮を放つようになったぞ……。ブラックワイバーンの方も必死なんだな。でも、黒卵さんを持ち上げられないとずっと地べたに這いつくばったままだ」


 黒卵さんはびくともしておらず、全く動かない。不動の存在かと思うほど地面にびったりとくっ付いていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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