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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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高度一〇〇〇〇メートルからの落下

『ギュイイイイイイイイイイ!』


 ロックアントの女王はブラックワイバーンの頭上を取り、翅を止めて急落下した。胸の重みで押し潰す気だろう。だが、そう上手くは行かない。


『グラアアアアアアアアアア!』


 女王の攻撃はブラックワイバーンに軽くかわされる。すると、ブラックワイバーンの太く長い尻尾が撓り、鞭のように女王の胸に打ち込まれた。その結果、硬い硬い岩の胸が砕け、女王は真下に急落下する。


 僕はグワングワンと揺れる視界の中、縄を持っていたら死ぬと思い、胸に尻尾が当たる直前で手を放した。すると衝撃波によって僕の体は浮き上がる。直撃したらどんな威力なんだ。僕の体なんてひとたまりもない。


 地面に生えている巨大な木が衝撃を和らげたのか、女王はうつ伏せで形を残したまま動かなくなる。


 辺りの木々は衝撃によって倒れ、大きな窪みになっていた。


 女王の決死の覚悟は新たなる女王を逃がすためだったと知っている僕は辺りを見渡すも、新たなる女王は見つけられず、三キロメートル以上距離を取ったらしい。


 よかったのか悪かったのかわからない。なんせ、ロックアントの女王も人にとっては害の方が大きいからだ。でも、僕は内心ほっとした。


 女王も自分の娘を守れてホッとしているはずだ。だが、一番の被害者である僕は未だに空中で舞っている。生憎、ブラックワイバーンに見向きもされていないため、追撃は受けてない。


『グラアアアアアアアアアア!』


 ブラックワイバーンは猛烈な速度で飛び『赤の岩山』の頂上を目指した。いったい何が目的なんだろうか。魔素を得るために降り立つだけかもしれない。でも、頂上には慢心相違の冒険者たちがいた。


「う、嘘だろ……。こっちに来るぞ……」


「ぽ、ポーションの残りは何本だ……」


「も、もう、とっくに使い切っちまったよ……。ロックアントの大群の後、連戦なんて聞いてねえよ! 逃げるぞ!」


「お、おう!」


 多くの冒険者達が武器や心、装備がボロボロの状態では逃げるという選択ししかない。だが青髪の冒険者が叫ぶ。


「おい、逃げるな! ここで逃げたら俺が殺す! 前金を受け取った手前、逃げる行為は絶対に許されない!」


「そうだ! あいつを倒せば、人生はバラ色だぞ! 武器を持て!」


 青髪の次に黄髪の男が叫ぶ。


 両者共に僕の知っている人物だった。やはり実力者だったらしく、カエルラ領からやってきた青髪のマレインと『一閃の光』のメンバーである、マルトさんだった。


 両者共剣を引き抜き、前衛後衛に分かれていた。こんな状況でも、順番は守るらしい。


――僕としては全員で一斉攻撃の方が、勝機があると思うのだけど……。って、他人の心配をしている場合じゃない。このまま行くと僕は地面に確実に落下する。黒卵さんが起きていれば助かるはずだけど、今のところ起きている様子はない。さっきは反応してくれたのに……。


 僕は両手両足を目一杯に広げ、風の抵抗を受け、速度がなるべく出ないように心掛ける。だが空を切る手の音が耳に入り、全く以て止まらない。そりゃそうだ。


――どうする、どうする。もう、時間がないぞ。このまま落ちたら死ぬ。まだ、シトラに会ってないのに……。墜落死なんて嫌だ。


 助かる方法を僕は必死に考える……。


 すると思いついた。


「地面に衝突する衝撃と同じ力を地面に加えれば助かるのでは……。それか、長く大きな木にダガーナイフを突き刺して無理やり止まれないか……」


 僕は普通の人間には不可能な作戦を思いつき、自分の今までの行動が人と逸脱しているという点に掛けてみることにした。


 一トン以上の力が僕の体には備わっている。木の葉で勢いを出来るだけ殺したあと、木の幹に上手くダガーナイフを突き刺して体全体で摩擦を生みだし、上手く着地する。という無謀な行為を落下している短い時間の中、僕は何度も想像して頭の中で繰り返す。絶望的状況でこそ、冷静にならなければならないのだ。


「出来る。出来る。僕なら、出来る!」


 目の前に緑色に生い茂る大樹があり体に枝が刺さらないよう祈りながら突っ込む。


 なるべく腕を伸ばし、勢いを殺すも、腕と脚が一瞬で折れたのか全身に激痛が走った。でも、舌を噛み、気を失うのを耐えて右手に持っているダガーナイフの柄の感触を得た。どうやら右腕は千切れていないとわかる。左腕も痛みを感じるので残っている。


 僕はシトラの体を考えながら歯を食いしばり、ミルの笑顔思い浮かべて一人残して死ねないと念じる。


 木の葉を抜け、目の前に幹と地面が現れた。距離にして三○メートル。止まるには十分な距離。腕に何本も刺さっている枝は気にしていられず、ダガーナイフの刃を木の幹に思いっきり突き刺した。


 木の幹に突き刺さった刃が抑止力となり、速度が落ちていく。残り五メートルの地点で木の幹を蹴り、地面に衝突しそうな所を草原に方向に変えた。


 体がくるくると回り草原を転がる。回転が全く止まらず、木に衝突してようやく体が停止した。


 背中にドンっと強い衝撃が掛かったが僕は生きている。黒卵さんが背中にいると言うのに、潰れていないだろうか。


 僕は背中の感触から黒卵さんも無事だとわかる。


「はぁ、はぁ、はぁ……。し、死ぬかと思った……。あんな高さから落ちたらさすがに生き残れないと考えてしまった……。黒卵さんはやっぱり起きなかったし、僕だけでどうにかなる状況だったんだな……。今、生きているのが証拠だ」


 僕は腕を動かそうとするも、上手く動かなかった。理由を考えると、腕に突き刺さっている枝が原因だと思う。痛そうだが、血はすでに流れておらず、引き抜く方が痛そうだ。


 僕は木の枝を思いっきり引き抜き、一瞬の痛みに襲われたあと回復していく腕に少々恐怖を覚える。


 人の体が瞬く間に治っていくなんてありえるのだろうか……。信じがたいが僕の腕はみるみる治っていくのだから信じるしかない。少しすると、穴の開いた冒険服の内側に人の肌が見えている。傷跡は残っておらず、とても綺麗に完治した。


「腕に木が刺さっていたのに、他の部分には刺さらなかった。運がいいのかはたまた必然か。どっちにしろ、死ななかったから良かった。ミルのもとに早く戻らないと、化け物を目の前にした時、どうなるかわからない……。」


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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