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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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ロックアントの女王

僕はミルをギルド内に置いて外に向かった。

 すると、本当にすぐ近くにロックアントの女王と思わしき魔物がいた。


 大きさが二〇メートルはありそうな大型の個体。つまり討伐難易度がAランクの魔物。


 冒険者ですらない僕が倒せるような敵ではない。

 アイクさんも言っていた。ロックアントの女王にあったら逃げろと。

 加えて、女王を守る個体も強いから注意しろと。


 ロックアントの女王の周りにいる羽付きのロックアントが辺りを見渡しながら、警戒していた。


 女王のいる位置は『赤の岩山』の入り口付近。

 地面には巨大な穴が開き、石や砂が深い底にパラパラと落ちている。


 女王の体長は二〇メートルほど、加えて高さは一五メートル以上。


 僕の知っているロックアントは三〇センチメートルなので、大きさが六六倍違う。


 ちっぽけな僕に倒せるわけがない。あんな大きさの魔物がギルドの建物に突っ込んだたら一巻の終わりだ。


 僕の脚は震え、前に出ない。

 横に走って行けば僕だけでも逃げられる。でも、建物の中にいるミルや他のギルド員の方々は助からない。


 僕は足を一歩前に出してみた。

 すると、脚が軽い。一歩目は容易に出た。だが、二歩目が出ない。

 このままこの場で止まっていたら恰好の的だ。前に進まなければ囮になれない。

 黒卵さんを縛っている紐を緩め、背中から降ろす。

 黒玉さんを地面に置き、走り出した。

 やはり黒卵さんが僕の脚を止めていたみたいだ。


 ――すみません黒卵さん。今は僕が囮にならないといけないんです。また後で取りにきますから。待っていてください。


 僕はロックアントの女王の前に姿を現す。すると、周りにいる親衛隊が一瞬で僕の方を向き、羽を動かした。

 加えて大きな顎をカチカチと鳴らし、威嚇してくる。


 女王も僕に気付き、辺りの木々が揺れ動くほどの大きな風を起こしながら羽ばたき、五メートルはありそうな大あごをガチガチと鳴らす。


 僕はアイクさんから貰ったダガーナイフを構え、応戦する体勢を見せる。

 すると親衛隊がものすごい速度で僕を取り囲み、一斉に飛びかかってきた。


 ――早い! ここまで通常の個体と違うのか。通常個体の三倍以上の速度があるぞ。


 僕が抜け道を探す間もなく、体のすぐそばまで羽付きロックアントが迫る。

 腕の一本は仕方ないと思い、一番逃げられる可能性が高かった左側へ飛び込む。


 親衛隊の数は一〇匹。初手に一匹倒しておくべきだった。今更考えても遅い。


 僕は腕の痛みを我慢しようと思っていた。

 だが、逃げ出せたにも拘わらず、腕に痛みがない。

 ロックアントが左腕に噛みついているにも拘らず、腕が千切れていないのもおかしい。


 確かに力を入れているけど、ロックアントの顎でも千切れない強靭な肉体になった覚えはなかった。

 だが、左腕が残っているのなら好都合。

 また黒卵さんのおかげかもしれない。淡い夢だが、僕の体が強化されているのかもしれない。


 親衛隊の大あごが僕の左腕を噛み千切れなかったのはいい情報だ。

 僕は右手で持っているナイフで左腕に噛みついているロックアントの頭部に突き刺し、倒す。


 スイカほどの胸部が重く、地面に凹みを作るほどの重さなので武器に丁度よさそうだ。


 僕はロックアントの首と尻部分を切り取り、胴体の岩部分を手に取る。通常の二倍はありそうだ。

 翅と脚は切り落とす。

 これを女王に当てれば僕を敵視して攻撃してくれるだろう。

 その時、逃げ出せば、ギルド支部にいる皆は助けられるはずだ。


「行くぞ……」


 親衛隊はすでに僕の目の前に整列し、隊列を組んでいた。

 倒した個体の部分には穴が開いており、埋める個体はいなかった。どうやら、親衛隊の補充はないらしい。


「ギュイイイ!」


 親衛隊ロックアント達は僕に襲いかかってくる。だが、この個体たちに集中している暇はない。


 僕も加速し、地面を高速で移動してくる親衛隊を飛び越え、持っている大きな岩を女王に投げつけた。

 すると、岩が大あごに直撃し、女王が吹き飛んで横転する。

 さすがに僕もそこまでの火力が出るとは思っておらず、一瞬驚いてしまった。

 だが、投げた大岩は粉砕し、女王は体勢を立て直して超絶怒っている。

 周りは見えておらず、僕だけを標的にしたようだ。


「よし……。あとは逃げるだけだ」


 僕は女王の真横を通り『赤の岩山』の周りの荒野を走る。


「ギュイイイイイイイインンッツ!」


 女王と親衛隊は共に僕についてきた。

 脚の速度は五分五分。

 前足の一本でも切り取れば、逃げ切るのも難しくなさそうだ。だが、大きさが異常なので、倒すよりも逃げる方を優先するべきだ。


 死ぬわけにはいかない。

 死んだら全てが終わる。シトラやミルに会えなくなるのは嫌だ。


 死にたくないので全力で走っていると、赤の岩山の頂上付近からいくつもの火薬や魔法の爆発音が聞こえ、冒険者達がロックアント達と応戦しているのがわかる。


 横目で見ると、一〇メートルほどの女王が岩山を進行していた。

 周りにいる個体は全て親衛隊なのか。そう考えると、新女王はあっちの個体らしい。

 つまり、この大きな個体は母親という訳か。

 母親が僕一人に付きっ切りになってくれるのはありがたい。

 なんせ、この場で戦える冒険者の中で無能の僕を追ってくれるなんて。好都合でしかない。


 僕は木々の生い茂る中を走るも、女王は大木を大あごで容易に切り裂いて道を作り、追ってくる。

 きこりたちが笑ってしまうほど大量の木を一辺に切り裂いてしまうのだ。

 倒れ込む木などお構いなしに攻めてきて、女王が進んできた道だけ、木が伐採されて道のようになっていた。


 体力には自信のあった僕は逃げ続ける。すると、途中で女王が追ってくるのを止めた。


 いきなり冷められた。


 僕は後方を振り返り、引きさがっていく女王と親衛隊を見る。僕に構っているほど暇ではないようだ。

 きっと娘の門出を邪魔する者を倒しに行こうとしているのだろう。


 ――何だ、僕の元父親より親らしいじゃないか。


 僕はロックアントの女王を追う。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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