愛のムッツリ
一一月三〇日、三一日とすぎ、一二月に突入した。
一二月になると本格的に寒くなった。
寒さをしのぐ分厚いローブが必要になったため、ミルのエッチな薄着が見れなくなり、少々残念な気もする。
まぁ、たまにローブの切れ目から見えるむっちりとした太ももには眼をやられそうになるが、毎回耐え忍んでいた。
一二月の一週目は何の成果も得られなかったが、ミルの戦闘能力はメキメキと上達していた。
お金の割合もしだいに半分ずつわけられるようになってきている。
彼女は二カ月前のガリガリ獣人ではなくなった。
筋肉や脂肪がついて、ふっくらとしている部分がよりふっくらとしていき、大人っぽさが増していく。
だが、顔が子供っぽいのは変わらない。
まぁ、胸はそこまで膨らんでいないのだけど。
一二月一二日。第二月曜日。天候:雪。
ルフス領でも雪は降るようだ。
僕にとって雪は馴染み深い。なんせ、降る雪は白いのだ。
僕と同じ髪色というだけで親近感がわく。
逆に黒卵さんはすごく浮き、白い空間でもはっきりとわかる。
ミルの姿も白い部分が多いため、とても環境に溶け込んでしまっていた。
僕の目標金額、金貨一〇〇〇枚まで一五〇枚ほど。今週働けば貯まる予定だ。
「キースさん。見てください。髪が真っ白になりました~」
ミルは降っている雪の中で走り回っていると髪に雪が付き、白く見える。
「ちょ、髪が濡れちゃうよ。早く振り払って」
「は~い」
ミルが頭を横に振ると、髪に付いた雪が舞い落ち、もとのミルキー色に戻った。
今、僕達は『赤の岩山』の山頂付近にいた。
峰の方にいたスライム達を倒していたら、頂上付近の方が大量に発生していると情報を貰ったのだ。
来てみたら本当に大量だった。
でも、寒さによって動きが鈍く、粘度が増して、破裂しない。非常に倒しやすくなっている。
スライムの粘液が地面に付着し、滑ると危ないので、火を使い燃やしているところだ。
「はぁ~、暖かい。ぼく、寒い所はやっぱり苦手です。でも、キースさんといっしょなら寒い所でもへっちゃらです」
「ミル、あんまりくっ付かないでよ。周りの視線が痛いからさ……」
ミルは僕にくっ付きながら暖を取っていた。僕も同じだが、ミルほどくっ付いてはいない。
周りにも同じように薪にスライムの粘液を懸け、無理やり燃やしている冒険者達が大勢集まっていた。
僕の知り合いであるマルトさん、チルノさん、セキさんで構成されている『一閃の光』と、そこに加わっている数名の冒険者達。
皆ほぼ髪が黄色なのでフラーウス領の冒険者パーティーで間違いないだろう。
少し前の方には、ミルを蹴り飛ばしたカエルラ領から来ているマレインのパーティーと仲間に引き入れたであろう冒険者達。
まぁ、この二つの勢力に他の冒険者達は便乗し、おこぼれを貰おうと所属している。
つまり、ブラックワイバーンの討伐は個人的な戦いから、団体戦へと変わっていた。
まぁ、僕はもうすぐお金が貯まるのでどっちがブラックワイバーンを狩っても関係ない。
ただ、アイクさんから、おこぼれを狙いに行けという圧力を感じたので今、山頂にいる所存である。
僕とミルは最も後方におり、二人組で山頂にデートに来たような雰囲気を醸し出していた。
そのせいで、結構浮いている。
僕の隣に雪の妖精とでも言っていいくらい絶世の美少女がいるから、他の男達からの視線が痛い。
その美少女が喉を鳴らし、擦り寄ってくるのだから周りの反感は半端ではない。
僕はなるべく平穏を装う。
だが、ブラックワイバーンが現れなくて暇を持て余しているミルが尻尾でちょっかいを掛けてきたり、唇を尖らせてキスをせがんできたり、やりたい放題だ。
「はぁ~、今日は暖かいお風呂が身に沁みそうですね。たまにはキースさんと入りたいな~、チラ。はぁ~、最近、体が少しずつ大人に近づいているような気がするんだけどな~。チラ」
「ミル、集中してないと何が起こるかわからないよ。また、大爆発が起こるかもしれないし、いきなりブラックワイバーンが出てくるかもしれない。皆、ピリピリしているから、あまりのほほんとしていると反感を買うよ」
「むぅ~。だったら、キースさんがぼくに構ってくださいよ。せっかくここに焚火より暖かい柔肌があるんですから」
ミルはローブを捲りホットパンツのお尻側をチラリと見せてくる。
――なんてエッチな服を着ているんだ。お尻の曲線が丸わかりじゃないか。でも、ありがとう、ミル……。
僕はそっとローブを戻し、精神を鎮める。確かに魅惑的な美尻だったが、今は仕事中。
惑わされるわけにはいかない。
「むぅ~、攣れませんね。でも、そんなところがカッコイイですぅ~」
ミルは僕にムギュ~っと抱き着いてきた。
「最近距離が近い気がするんだけど……。周りも滅茶苦茶見てるからちょっとは自重しようよ」
「いいじゃないですか。ぼく達のラブラブっぷりを他の人達に見せてあげましょうよ」
「はぁ……」
僕はミルのおでこにデコピンを食らわせた。
「いたっ! きゅぅ~、おでこひりひりしますぅ……」
仕事と日常の区別が付けられないミルへのお仕置きだ。
弱めのデコピンでもミルはおでこに手を当て、涙を浮かべている。だが、その顔は笑顔で、嬉しそうにしていた。
「もう、なんでデコピンされて笑顔なの……」
「いや~、キースさんがやっと構ってくれたので嬉しくて……。愛のムッツリってやつですよね」
「愛の鞭ね……」
僕達は周りからいちゃついているカップルのような存在に見えているらしく、こんな場所に来るんじゃねえよ、という圧力を掛けられている。
ただ、他のルフス領の冒険者達がブラックワイバーンにかまけている暇がなく、ルフス領周りの魔物を狩ったり、村の依頼をこなしたりと大忙しで、ほぼ『赤の岩山』に来れない状態。
せっかく近くに一攫千金が舞い降りるかもしれないのに、と思うかもしれないが、手に入れられるかもわからない一攫千金を狙うよりも、依頼を一つ一つ着実にこなした方がお金になる。
あと、ブラックワイバーンの方はほっておいても誰かが倒してくれると踏んでいるのだ。
確かに強い魔物で一攫千金を狙えるとしても捕まえられなかったら意味がない。
そのため、ルフスギルドが強制的に適任者に依頼を回している。
そうしなければさばききれないほどの依頼が殺到しているのだ。
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