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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
第一章 『無限』の可能性

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五日間生活するためにギルドへ

「うん、僕も五日間この村で過ごす。その間に少しでもお金を稼ごうと思っているんだ。日雇いの仕事がないか冒険者ギルドで聞いてくるんだけど、プラータちゃんも来る?」


「はい! 行きます!」


 プラータちゃんは、はっきりと大きな声で返事した。


 この市場に来る前、移動中に見つけた冒険者ギルドに向かう。

 ギルドの方に向かうほど、冒険者の数は増えていき、着くころには周りに見える人たちがほとんど冒険者になっていた。

 一般市民はプラータちゃんと僕だけのように見える。

 王都にいた冒険者はもっと清潔感のある凛々しい格好だったが、この村の冒険者は強面が多い。

 大きな傷や、火傷の跡など、隠さず逆に見せつけている。

 まるで自分が戦って得た勲章を掲げているようで、自信満々だ。

 会話を盗み聞ぎするつもりは無かったが、あまりに大声で喋るものだから、聞きたくなくても耳に入ってしまう。


「なあ、最近の依頼はどうよ!」


「ああ、いい感じだ。特に最近はルフス領の近くで多くの魔物が現れるから、それでがっぽり稼がせてもらっているぜ」


「そうか、やっぱり俺の目星は正しかったみたいだな。魔素の流れがルフス領だけ異様に多いんだよ。こりゃ、魔物がもっと増えるだろうな。俺たちの稼ぎ時だぜ」


「しゃ! めっちゃやる気出て来た。魔物をぶっ殺して、領の安全を守り、金をいただく。戦いに飢えている俺たちにとっては最高の仕事だな、冒険者はよ!」


「そうだな。だが……昨日の事故で合流するはずだった仲間が逝っちまった。まさか戦いの中ではなく、爆発事故で死ぬなんてよ。あいつらの思いを考えるといたたまれねえ……」


「ああ。そうだな……。ずっと、死地を潜り抜けてきた仲間だもんな。その気持ち、痛いほどわかるぜ。そいつらの分も俺達は長く生きよう。な、相棒!」


「ああ……そうだな。俺たちまですぐ逝っちまったら、あいつらに殺されそうだ」


「もう死んでるけどな、なんつって!」


「ハハハ! あいつらの死も笑い飛ばしてやるか!」


 笑いあっている冒険者の顔は怖い。でも、心はとても優しい人たちみたいだ。


「それじゃあ、プラータちゃん中に入ろうか」


「はい、行きましょう!」


 僕達は『ルフスギルド:アイリーン村支部』と書かれた看板が屋根に張り付けられている、建物の中に入っていく。

 中に入ると、外の世界と一風変わっており冒険者の世界が広がっていた。

 異色の僕達に気づいたのか、多くの人達がこちらを見てくる。

 やはり人の視線は痛い、肌に突き刺さる感覚が本当にある。


「って! 本当に刺さってる! 僕の右腕に大きな針が刺さってるよ!」


「大丈夫ですか、キースさん。今抜きますね」


 プラータちゃんは僕の右腕の包帯に刺さっていた針を抜いてくれた。冷静だな……。


「いやぁ、すみません。誤射しちゃいまして。ってあれ? 白髪さんだ。えっと昨日、事故現場で救出したはずなんですけど、もう退院したんですか。凄い回復力ですね」


 目の前に現れたのは、赤みが少し強いマゼンタ髪の女性だった。

 冒険者だとすぐわかる露出の多いその服装は僕にとって刺激が強い……。


「えっと、あなたが僕を助けてくれたんですね。ありがとうございます」


「いやいや、助けたと言っても運んだだけなので、お礼なんていりませんよ」


「でも、あのまま地面に倒れていたら僕は焼死していたと思うので、助かりました」


 僕は名前も知らない女性冒険者に頭を深く下げた。


「感謝の気持ちくらい貰っておけよ。それが結構この仕事での活力になるんだからな」


 奥の方で強面のおじさんが女性に助言する。


「わ、わかりました。支部長。感謝の気持ちを貰っておきます。えっと……どうやって貰えばいいんですか?」


 その瞬間、ギルド内部の人たちが一斉に笑い出した。

 僕も笑いそうになるのを堪える。


「ほんとバカだなお前は、もう貰っただろ。感謝の気持ちは心で受け取るものだ。眼には見えねえよ」


「な、なるほど。そういう意味だったんですね。えっと、白髪さんお礼を言っていただきありがとうございました」


 女性は僕に深々と頭を下げてくれた。


「こ、こちらこそ……」


 女性が頭を下げたら僕もまた頭を下げる。

 この繰り返しを八回繰り返したころ、プラータちゃんに止められた。


「もう、キースさん。頭を下げ過ぎですよ。私たちは仕事を探しに来たんです。早くしないといい仕事が取られてしまうかもしれません。私でも働ける仕事があればいいんですけど……」


「そうだった。僕達は仕事を探しに来たんだった。えっと、僕達はこれで」


「あ、はい……」


 素っ気ない感じで、僕はその場を治めた。そのまま歩き始め、依頼の張り付けてある掲示板に向う。


「これが掲示板か、初めて見た」


 木の壁に、複数枚の紙が貼り付けられている。

 紙には依頼の内容が書かれてあり、上の方に行くほど難しくなっていた。

 その分報酬の金額が高いので、きっと実力のある冒険者は上の方を選んで行くのだろう。

 もちろん僕達は一番下の依頼を見ていく。日雇いの仕事は一番下にしかなかった。

 僕たちに魔物の討伐の依頼は出来っこないから上を見る必要すらない。


「んー。やっぱり年齢制限が一五歳以上の依頼が多いね。僕なら出来るけど、土堀、木材運び、溝掃除、どれも両腕が使えないと難しい仕事ばかりだな」


「う……、どれも、これも、私にはできない仕事ばかりです」


 プラータちゃんも懸命に探しているが、いい仕事が見つからないみたいだ。

 僕の見ている方に一枚の気になる依頼があった。


「あ、これならプラータちゃんにもできるんじゃないかな」


 僕は掲示板に貼られている依頼をプラータちゃんに見せる。


「花屋さんのお手伝い……」


『列車事故で亡くなった方に花を買われる方が多く、人手が欲しい。年齢制限は問いません。丁寧に接客できる方を望みます。八月一八日から二三日までの五日間の短い依頼です。時給銅貨八枚。よろしくお願いします』


「私、これ行きます!」


 プラータちゃんはすぐその紙を剝がし、大きく掲げた。


「五日間ですし、丁度次の日に列車が運行再開です。時給も銅貨八枚と良いですし。文句なしの良依頼です!」


「よかったね、いいのがあって。それに引き換え、僕の方はいいのが無いな。まぁ、できるとしたらこの依頼か」


 僕が手に取ったのは教会の清掃。

 時給はそこまでいいとは言えないが、働かないよりはましだ。

 教会なら、右腕が怪我で使えなくても、きっと働かせてくれるだろう。

 僕たちは依頼が書かれた紙を持ち、受付に持っていく。


「えっと、僕たちは冒険者ではありませんけど、この依頼を受けられますかね」


 僕とプラータちゃんは依頼書を受付のお姉さんに渡す。


「Fランクの依頼でしたら、一般の方でも受けられますよ」


「本当ですか。時間を持て余していたのでよかったです」


「もしかして……昨日の事故に巻き込まれた方々ですか?」


「そ、そうですね。死にかけましたが何とか生きてます。さっきの女性冒険者の方がいなかったら僕は焼け焦げて死んでたと思いますよ」


「あの子、仕事は出来ませんけど、正義感だけは特に強いんですよ。対して強くもないんですけど。厄介ごとにすぐ首を突っ込んでしまうので冒険者としてはあまり相性よくないんですよね」


「そうなんですか……。僕は助けられた身なので何とも言えませんが、彼女は勇者よりも素晴らしい人格者ですよ」


 ――赤色の勇者に比べれば。誰だって素晴らしい人格者だけど。


「さすがにそれは言い過ぎだと思いますが、心が綺麗なのは確かですね。おバカと言ったほうがいいかもしれませんが」


「はは……そうかもしれませんね」


 僕と会話しながらも受付のお姉さんはいつの間にか依頼の受付を終了しており、明日から依頼に向えるようになっていた。


「これで受け付けは終了です。五日間の仕事を終えた際、依頼主の手書きの印か指紋の印をもらってこのギルドに提出してください。そうすれば依頼達成になります。本来なら冒険者の位をあげる点数が付くのですが、お二方は冒険者登録をなさっておられないので点数が付きません。ご了承ください」


「わかりました。ありがとうございます」


 僕たちは受付の女性から依頼書を受け取り、冒険者ギルドを出た。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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