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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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『赤の森』から轟音が鳴り響く

 午前九時、洞窟に到着。


 僕とミルは洞窟の中に入り、攻撃と松明持ちの二手に分かれ、ロックアントを討伐していた。


 近頃、ロックアントの発生数も上がっている気がする。そのせいで、一時間足らずで二〇〇匹のロックアントを討伐した。


 魔物が増えているということは魔素の量が上がってということと同じだ。どうやら少し前よりも魔素が増加し、充満しているらしい。

 あまりにも、急激な魔物数の増加はブラックワイバーンの出現を示唆している。ブラックワイバーンが現れるのは時間の問題かもしれない。


 ふとした瞬間、ロックアントは天井から真っ逆さまに落ちて来た。


「はあっ!」


 僕はロックアントの包囲網を抜ける。

 天井から落ちて来たロックアントの胸が九匹のロックアントの頭を潰した。


 落ちて来たロックアントは起き上がろうと必死だが、岩が地面にめり込み、身動きが取れなくなっていた。


「えいっ!」


 ミルは身動きの取れないロックアントの頭にナイフを突き刺して倒す。


「ふぅ。ミル、お疲れさま」

「キースさんが殆ど倒しているのでぼくは何もしてませんよ」


 僕はロックアントを数秒で倒せる方法を使い、いつも通り駆除していた。

 ミルは袋に素材を詰めてくれる。


 でも、あまり持ちすぎるとミルが動けなくなるので、二五〇体ほど倒したあと、僕達は時間に余裕をもって洞窟の出口まで戻ることにした。


「キースさん。あと、一袋、貸してください。今なら持てる気がします」

「ミル、病み上がりなのに、袋を沢山持って大丈夫なの?」


 ミルはすでに二袋持っていた。二袋の合計で一〇〇キログラムもある。


「はい。まだ、少し余裕があるんです。なのでもう一袋いけます」

「わかった。じゃあ、渡すよ」


 僕はロックアントの素材が入った麻袋をミルに一袋渡した。ミルは麻袋を担ぎ、ずしずしと歩いて行く。


 午前一一時。洞窟脱出。


「ふぅ~! やったぁ~! また、少し成長しました!」


 ミルはロックアントの素材を地面に置き、手を天に向かって伸ばし、飛び跳ねる。

 僕の知らない一週間でミルは着実に力を付けていたようだ。


「よく頑張ったね、ミル。じゃあ、質問してもいいよ」

「はい。えっと……、シトラさんの年齢は何歳ですか?」

「八月一日産まれの一五歳だよ。ミルと年が近しいね」

「一五歳。キースさんと一緒ですね。ぼくより一歳年上のお姉さんですか。うぅ……、強敵ですね」

「はは、どうだろうね。今のミルとならいい勝負かもしれない。最近合っていないからわからないけど」


 シトラは元気にしているだろうか。しているといいなぁ。僕は上の空でいると……光が一瞬見えた。

 青かった空が真っ赤に染まり、山が吹き飛んだのかと思うほどの爆音が『赤の岩山』を襲った。

 

「うぐっ!」

「きゃあっ!」


 僕はミルの耳を咄嗟に塞ぐ。爆発が激しすぎてミルの耳が壊れると思ったのだ。

 爆発音を聞いただけで僕の背中に怖気が走る。久々に聴いた爆発音に僕は覚えがあった。


 ――今の爆発音は紛れもなくフレイの攻撃だ。まさか『赤の森』にいるフレイの魔法が『赤の岩山』にまでとどいたのか。ニ〇キロメートル以上離れているのに、あんな轟音がとどくなんて……いったいどれだけの火力なんだ。


「き、キースさん。ぼく、ちびっちゃいました……」


 ミルは股間を押さえ、震えている。


「気にしないで。爆発音をミルの耳が拾ったら、そりゃあ怖いよね。えっと耳は大丈夫?」

「は、はい。キースさんが守ってくれたので耳鳴りだけですんでいます。守ってくれてありがとうございました」


 ミルは僕に頭を下げる。

 白くむっちりとした太ももに伝う液体は見なかったことにして僕は布をミルに渡した。

 ミルは恥ずかしそうに布を受け取る。


「き、キースさんは別の方向を見ていてください。あと、この布は燃やします!」

「ど、どうぞご自由に」


 僕はミルに背を向ける。数分後、ボッと何かが燃える音がしたので振り返る。ミルは松明で濡れた布を燃やしていた。油分の多いスライムの体液のおかげか、水分を蒸発させながら一気に燃えていく。


「よし、これで証拠隠滅です!」


 まだちびった証拠は残っていると思うが、まぁ、言わなくてもいいか。

 僕は爆発の起こった方向を見る。黒い黒煙が見えた。かなり大きな爆発が起こったらしく、それほど危険な魔物でもいたのだろうか。


 ――フレイのやることだ。きっとゴブリン相手の過剰殺傷だろう。普通、ゴブリン相手にあそこまで高火力の技を打ち込むか。


 僕はフレイの性格上、派手な魔法を好むと知っている。周りに人がいれば見栄を張って超巨大な爆発を起こすこともあり得ると考えた。

 爆発をあまり気にせず下山し、ルフスギルド支部に素材を提出した。


 ロックアントの討伐数はミルが二五体。僕が二二五体。でも、二〇〇体までしか報酬が出ないので、僕は一七五体となる。

 素材の摂取数はミルが一五〇個。僕は一〇〇個。素材は上限がないので報酬を貰える。


 合計金額がミルは銅貨一七五枚の三割増しなので銀貨五二枚と銅貨五枚を加算し、銀貨二二七枚と銅貨五枚。金貨換算にすると金貨二二枚と銀貨七枚、銅貨五枚になる。物凄く素晴らしい結果だ。


 僕の合計金額は銀貨二七五の三割増しなので、銀貨八二枚と銅貨五枚が加算される。金貨に変換すると、金貨三五枚と銀貨七枚、銅貨五枚だ。そこそこ稼げた。でも、それだけ魔物の数が多いということはあまり芳しい状態ではない。


「今日は魔物の数が多かったんですけど、何か環境の変化があったんですか?」


 僕はルフスギルド支部の受付さんに質問する。


「今『赤の森』で魔物が大量に発生しており、魔物が多く集まると魔素の濃度が増していきます。そうなると風に流されてきた魔素が魔物を大量に繁殖させてしまうんですよ。魔素は人でいう空気のようなもので魔物の動きを活性化させる効果があります。その影響で魔物たちは大きくなり、狂暴になっていくんです」

「そんな短期間で魔物は大きくなるんですか?」

「魔素の濃度にもよりますけど、ギルド職員の調査によると危険値を優に超えている量が『赤の森』から発せられているらしく、実力のある冒険者の方以外はなるべく近寄らない方がいいらしいです」

「じゃあ、僕達はルフス領に潔く帰りますね」

「はい、そうした方がいいと思います。あとこちらが今回の報酬を分けた状態になります」


 受付さんはミルと僕で金額を分けてくれた。すごくありがたい。僕があとから自分で金額を分けるのは面倒なのと、金貨が一枚でも間違っていたら喧嘩になりそうだったからだ。


「ありがとうございます」


 僕は二つの革袋を持ち、少し軽い方をミルに渡す。

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