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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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小さな成長

 僕はミルに合わせて走る。ミルは全力を走り、一五分かかった。


「はぁ、はぁ、はぁ。も、もぅ、体力が……」


 ミルはアイクさんのお店からルフスギルドまでの道を全力で走っただけで息を切らしていた。これでは『赤の岩山』に向う途中で体力が尽きてしまう。


「ミル、次の道は僕が運ぶよ。今日も昼までに帰ってこないといけないから、体力を少しずつ使って終わりに使いきれるように調整する。体力がついてきたら自分で調節できるようになろう」


「わ、わかりました」


 ミルは両膝に手をつき、息を切らしていたが胸を張って返事をした。


 僕はロックアントの討伐とスライムの討伐を受ける。ミルを抱きあげて『赤の岩山』に向かって全力で走った。すでに冒険者さん達がズラッと並んでいる。


「今日も凄い人数ですね。あ、そうだ。『一閃の光』さん達の荷物を運ぶ仕事しないといけないんですよね?」


 ミルは思い出したように僕に聞いてきた。


「えっと。ミルが動けない間に僕が荷物を全部運んだんだ」


「え、もう終わらせてしまったんですか? そんなに量が多くなかったとか……」


「まぁ、量はそこそこあったよ。ミルの負担になると思って僕一人で頑張ったら『一閃の光』さん達に引かれてしまって、ちょっと仲が悪くなっちゃったんだ」


「そ、そうなんですか。ぼくのために頑張ってくれたのに、ごめんなさい」


 ミルは何も悪くないのだが、僕に頭を下げてきた。


「ミルは何も悪くないよ。僕がちょっとおかしいだけないんだ。他の人には考えられないくらいの動きだったらしくて、まぁ、仲間を作りに来たわけじゃないし、ブラックワイバーンの素材も分けてくれると言っていたから、完全に嫌われたわけじゃないと思うけど、得体のしれない化け物に見える人とは関われないってさ」


「キースさんはキースさんですよ。得体のしれない化け物なんかじゃありません。ぼくはキースさんの人間っぽい所を知っていますから、怖くありませんよ」


「はは、ありがとう。そう言ってくれるとなんかうれしいよ。じゃあ、今日も依頼を頑張ろう。ミリアさんに言われた通り、ミルの体がボロボロになるまではやらない。ボロボロになるギリギリにまでは追い込むよ」


「ぼくはキースさんの力になれるよう実力を早く着けたいのでビシバシ鍛えてください!」


 ミルは両手を握りしめ、意気込んでいる。


「うん。ミルならきっとできる。そう僕は信じるよ。じゃあ、依頼に行こうか」


「はい!」


 その日、僕はスライムを一九八匹、ロックアント二〇〇匹倒した。ミルは一昨日のスライム一匹を超え、二匹討伐することに成功した。

 加えて初日は五〇キログラムの素材を持って歩いてもらっていたが、今日は三〇キログラムに変えて運んでもらった。

 二〇キログラム変わると、相当歩きやすくなったらしく、ミルはきびきび歩いている。まぁ、最後の方はゆっくりと歩き、一歩一歩重そうにしていたけど、疲れすぎている訳ではなかった。


「何とか歩けました。意識もしっかりしていますし、初めての頃よりかはこなせます」


「それなら、毎日負荷を少しずつ増やしていこう」


 僕とミルは素材を持ってルフスギルド支部まで行き、素材を換金してもらった。


 『赤の岩山』からアイクさんのお店までミルに走ってもらおうと思ったがルフス領の門前で力尽き、僕が最後まで運んだ。


 ミルは体力の限界値を超えてしまったらしく、ここからの鍛錬がどれだけ自分の力に出来るかが伸びるか伸びないかの違いのはずだ。僕の持論としてとりあえず全力を出し切り、そこからどれだけ鍛錬できるかによって成長が決まる。


「じゃあ、ミル。薪割りを頑張ってね。一昨日は二〇〇個だったから、今日は一個でも多く薪を割ろう。少し前の全力を今日超えるんだ。明日は今日の全力を超える。これの繰り返しでミルはどんどん強くなる。僕が保証するよ。魔法が使えないなら、体を鍛えればいい。それだけだ」


「が、頑張ります」


 ミルは僕の言葉を信じ、薪割りを、全力を超えた全力で行い始める。僕も負けずとアイクさんのお店を手伝い、接客をした。


 昼食を得てから四時間後、僕はミルの様子を見に行った。


「はぁ! せいやっ! おらっ!」


 ミルは汗だくになりながら薪を割っていた。ときおり、険しい顔のまま斧を振り下ろす。手のひらを見て、頭を横に振ったあと、もう一度斧の手持ちをぎゅっと握り、頭上に持ち上げて振りかざす。


 僕はアイクさんに頼み、軟膏と包帯を貰っていた。僕の時も掌の皮が捲れて悲惨な事態になっていたので、ミルも同じ状況に陥っているんじゃないかと思ってきたら、やはりミルの持つ斧の取っ手が赤色に染まっていた。


「ミル、少しいい?」


「は、はい。何でしょうか」


 僕が声をかけると、ミルは両手を後ろに隠し、見せてこなかった。


「ミル、手を見せて」


「手ですか。今は悲惨な状態になっているというか。とても見せられる手じゃなくてですね」


「いいから見せて。血豆が凄い数出来てるんじゃないの? そうだったら早く軟膏を塗って包帯を巻いてあげないと傷が治りにくいからさ、我慢しなくてもいいよ」


「な、なんで、ぼくの手が血豆だらけだってわかったんですか」


「僕も手が真っ赤になるくらい薪を作っていたからわかるんだ。さ、手の平を早く見せて」


 ミルは僕に両手を見せてきた。小さく色白のミルの掌に血豆がいくつも出来ており、すでに潰れているものもあった。


 僕はミルの手を綺麗な水で洗った後、軟膏を塗り、包帯を巻いた。


「よし、これで大丈夫。斧の持ち手にも包帯を巻いてずれにくくしておこう」


「あ、ありがとうございます。痛みが少し引いたような気がします。これでぼく、もっと頑張れます!」


「無理だけはしないでね。焦らずにゆっくりと、でいいから、着実に力を付けていこう」


「はい!」


 ミルは掌を治療してからより一層張りきって薪を割りだした。

 結果、二〇八個の薪を作れたそうだ。一昨日よりも増えており、ミルは成長していた。加えて、冬用の薪が着実に作られており、備えも万全になっていく。


 ミルは午後九時頃に薪割りを終え、アイクさんの仕事を少し手伝ったあと、一人でお風呂に入っていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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