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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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声援を送る側にまわる

 ミルは五〇キログラムの素材を持ちながらも、先ほどと同じ速度で歩いていた。顔に汗を掻きまくり、全身からも湧水が如く汗が滴っている。筋肉が相当頑張っているみたいだ。


「ミル、少し休憩しよう。そこに広い休憩所みたいな場所があって皆が休憩しているんだ。筋肉をずっと使うよりも、休ませながらの方がもっと効率よく鍛えられるよ」


「はぁ、はぁ、はぁ……。そ、そうなんですか。それじゃあ、休みましょう」


 休んだ方が、筋肉が鍛えられるかどうか僕は知らない。ただ、僕はミルに休んでもらいたかったからありもない嘘をついた。出来るだけ嘘をつきたくない性格の僕がつかざるをえなかった。それだけミルの体が疲弊していると思ったのだ。


 地面が陥没しそうな音が洞窟内に響く。


「はぁ、はぁ、はぁ……。はぁ、はぁ、はぁ……」


 ミルはロックアントの素材を洞窟の地面に置き、ふらふらとよろめきながら壁に背を着け、ゆっくりと座る。その間、息は粗く、汗の量が尋常ではなかった。


 ミルは座っていても細い脚がぷるぷると震えており、とても辛そうだ。何度も限界を迎えた覚えのある僕には分かる。今のミルは限界に近い。多分、もうすぐ嘔吐して気絶する寸前だ。

 きっとミルの意識がある状態で休憩を取り入れたのは正解だろう。


 僕はウェストポーチから革製の水筒を取り出し、ミルに渡す。


「ミル、水筒の水を飲んで。顔だけでも汗をすごく掻いているから水分補給しないと脱水になってしまうよ」


「あ、ありがとう、ございます……」


 ミルは震える手で革製の水筒に手を伸ばす。革製の水筒を掴んだので僕は手をはなすとミルの手から水筒は落ちてしまった。


「ご、ごめんなさい。て、手に力が入らなくて……」


 ミルは地面に落ちた水筒を拾おうとするも、水筒を握れず、持ち上げられなかった。


「大丈夫。ただ落ちただけだ。ちょっと待ってね、今飲ませるから」


 僕は水筒を拾い上げ、飲み口を開ける。そのままミルの口もとに持っていった。


「顎を少し上げて口を開けてくれるかな」


「は、はい」


 僕はミルの口に水を注ぎこんでいく。少し飲ませたらもう一度同じ工程を繰り返す。一気に飲ませるとむせてしまうかもしれないので、注ぐ量には気を付けた。顎に手を置き、水がこぼれて体に落ちないよう塞き止めておく。


「んぐ……、んぐ……、んぐ……」


「ゆっくりでいいからね」


 ミルは少しずつ水を飲んでいき、息がつまったところで一度止まった。息をすーはーと吸い、呼吸を整え、水をもう一度飲みだす。水筒の水が半分ほどになったころ。


「はぁ、はぁ、はぁ……。もう、大丈夫です。水、ありがとうございました」


 ミルは僕に頭を下げ、少し笑った。


「よかった。それじゃあ、念のためにこれを飲んでおいてくれるかな」


 僕はウェストポーチから緑色の小瓶を手に取ってミルに見せる。


「それは何ですか?」


「アイクさんが作った回復薬だよ。疲れた体によく利くんだ。飲みすぎはよくないけど、あと半分の道のりを歩くために飲んでおいて」


 僕はミルに小瓶を手渡す。


「わ、わかりました」


 ミルは僕から小瓶をうけとり、蓋を取って一気に飲み干す。


「うぐぅ……。に、にがぃ……」


 ミルは涙目になって緑色になっている舌を僕に見せてきた。だが、苦しがっていたミルはポーションを飲んだあと、体力が驚くほど回復し、素材を持ちながら歩けるようになっていた。


「す、凄いですねあの小瓶。さっきまで体が全然動かなかったのに、今は足取りが凄く軽いです。このまま、走れちゃいそうですよ」


「焦りは禁物だよ。洞窟から外に着実に出る。それだけを考えるんだ。走るのは危険なものに襲われた時だけだよ」


「了解です。ぼく、着実に頑張ります」


 ☆☆☆☆


 ミルの持つ松明が三本なくなった。もう、洞窟の中に三時間いるらしい。だが、休んでいた分を考えると、出口はもう少し先になりそうだ。


「あと、どれくらいですかね。ぼく、脚がもう震えてきちゃったんですけど……」


「あと少しだと思うよ。『一閃の光』さん達と分かれた部分から休憩所の距離を半分にしたくらいかな」


「なるほど、ギリギリですね」


 ミルは一歩一歩前に進んでいた。僕は応援する側に回る。アイクさんの所業を受けている時、僕一人では絶対に成し遂げられなかった。周りの声援があったから僕は成し遂げられたんだ。

 だからミルにも声援が絶対に必要だと考えた。


「ミル、まだいけるよ。もう一歩踏み出せる。もう少しで出口だ」


「は、はい……。頑張ります」


 ミルは靴裏を引きずりながらも、一歩一歩着実に進む。

 だが、僕達の横を行きかう冒険者さん達から、小さな笑い声が聞こえてくる。


「あれ何だ? たったあれぽっちの荷物を持ってへばっているぞ。本当に獣人なのかよ」


「あの少年が持っている袋の枚数からして相当軽い素材を持ち運んでいるのにあのざま、情けね~」


 僕が洞窟の中でミルを応援していると、周りから笑われているかのような声が聞こえ、気が散る。たとえ、気が散っても僕はミルを応援し続けた。


「大丈夫、まだ大丈夫。倒れても僕が担ぐから、最後まで全力を振り絞ってみよう」


「は、はい!」


 ミルは大きな声を出しながら、足を前に出して一生懸命に進む。


 ミルと僕の視界に出口が見えた。残り五〇メートルほど先に出口があり、ミルは出口が見えたことでやる気が出て来たのか一歩を踏み出す速度が上がり、前へ、前へと体を揺らし、ようやく出口から外の景色を見た。


「やったね、ミル! 出口まで到着したよ! 本当によく頑張った。凄くカッコよかったよ!」


「う、うぅ。出来た。ただ持ち物を運ぶだけなのに出来たのが凄く嬉しい……」


 ミルは涙を流し、外の光を浴びて、元から白い肌をさらに白くさせていた。


「ミル、あとは僕が持っていくから、ミルは休んでいていいよ」


「あ、ありがとうございます。あぁ……」


 ミルは脚から力が抜けて前に倒れかけた。


 僕はミルの体をさっと支え、持ち上げる。そのまま、下山した。途中に現れたスライム達が大量にいたので駆除させてもらったので多分一〇〇匹は余分に倒したはずだ。『赤の岩山』の入り口でギルド役員の方に帰還したと伝え、近くのルフスギルド支部に向う。


 僕はルフスギルドの支部に入ると昼前なので人はあまりいなかった。そのお陰で誰にもジロジロとみられずに受付まで歩いて行けた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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