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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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利害の一致

「今日はスライムが異常に多くないか?」


「確かに。ここ最近スライムの数は減っていたのにこんな出くわすなんて、珍しいよね」


「もしかすると彼のおかげかもしれませんよ」


「い、いやぁ、さすがに……いや」


「そうだよねぇ……でも」


「あり得るかもしれない」×マルト、チルノ


『ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……』


 僕は後方で三人が何かを放している声が聞こえたが集中していたため、何を話しているのかは分からなかった。スライムを倒して進み、洞窟が見えてきた。ここまで来るのにスライムは一〇○匹以上倒した。


 ミルはまだ一匹も倒せていない。でも、先ほどはスライムに触れられすらしなかったのに今ではスライムの体にダガーナイフが突き刺さるようになっていた。核にはまだ突き刺さっていないが成長しているのは確かだ。


「はっ!」


『ズチュ……』


「くっ! また交わされた。あとちょっとなのに……」


「ミル、焦らず着実に行うんだ。そんな簡単に成長は出来ないよ」


「そうですね。一日で成長出来てたらぼくももう少し戦えるようになっているはずです。でも、こんなどんくさい動きしか出来ないんですから、着実に成長していくしかないですよね。それにしても、キースさんは凄いですよね。あれだけいたスライムをあっという間に倒してしまうんですから」


「僕はただ、スライムを倒すのに慣れただけだよ。最近はほぼ毎日、スライムを一〇○匹狩っていたからね。これだけ倒していれば、僕でも普通に倒せるようになったんだ。僕はたまたまスライムを倒すのが得意だったみたいだからすぐに倒せたけど、ミルみたいに倒せないのなら、倒せるまで何度も戦えばいい。スライムは比較的安全な魔物だから戦う感覚を養うにはちょうどいいかもね」


「はい。頑張ります!」


 僕達は洞窟の入り口にまでやってきた。


「ここから入るか?」


「そうね。サンドワームが好きそうな土の質をしているし、案外すぐに見つかるかもしれない。ただ、サンドワームの近くにはロックアントも多く生息している傾向にあるから、気を引き締めないと」


「ロックアントの方は刺激しないよう、なるべく干渉しない方がいいでしょう。奴らに使う体力は温存しておきたい」


 『一閃の光』さん達は洞窟の前で作戦を練り直していた。どうやら、サンドワームの近くにはロックアントが良く現れるらしい。いい情報を手に入れた。加えて『一閃の光』さん達と僕達と利点が一致している。


「ミル、僕達は洞窟に入ってロックアントを倒す。ミルはなるべく僕の後ろに立って松明で洞窟の中を照らしてほしい」


「わ、分かりました」


 僕は腰に縛り付けてある松明を一本取り出し、地面に先端をこすりつけて発火させたあと、ミルに持たせる。


「一本で一時間燃えるから、取っ手に迫って来たら教えて。新しい松明を渡すから」


「はい。分かりました」


 ミルは松明を手に取り、役割がもらえたことがうれしかったのか、少しだけ誇らしそうにしている。


「一つだけ言っておくけど大声は出さないようにしてね。ロックアントは音に敏感だから、大声を出すと寄って来るかもしれない」


「は、はい。知っています。なので絶対に声は出しません」


 ミルは松明を持っていない手で口を覆う。


「うん。その意気だよ」


 僕は『一閃の光』さん達のもとに向かう。


「すみません。皆さん。僕達はロックアントが目的なので遭遇したロックアントの討伐を受け持ってもいいでしょうか?」


「ああ、いいぜ。こっちもロックアントを討伐してくれるのはありがたい。あいつらは不意に頭に落ちてくる時があるからな。当たり所が悪かったら確実に死ぬ」


 マルトさんは攻撃された覚えがあるのか、頭を摩っていた。


「実際、ロックアントの被害は馬鹿に出来ないの。洞窟内での死亡事故は対外ロックアントに頭部を割られて亡くなる冒険者が多いんだよ。だからギルド側も、なるべく討伐してほしいみたいだけど、ロックアントにうま味が全然ないから、誰も依頼を受けないんだよね」


 チルノさんは被害者と言うより、正しい情報を伝えてくれる情報屋のように喋っていた。


「なぜキース君はロックアントの討伐を行っているのですか?」


 セキさんはうま味のないロックアントの討伐をなぜ行っているのか聞いてきた。


「ロックアントを討伐すればお金になりますし、素材を運んでもお金になる。加えて他の冒険者さん達が助かる。僕がロックアントを倒すだけで三つの良いことが起こるんです。やらない手はないじゃないですか」


「まぁ、キース君ほどの怪力なら容易でしょうけど、普通の人には難しいのですよ。他人のことを考えている暇がないんです」


「僕は冒険者が副業なので凄く気楽に仕事が出来るんです。失敗しても本業があるので新鮮な気持ちになれて凄く楽しいんですよ。ミルを助けようと思ったのも心に余裕があったからです。僕に心の余裕がなかったらミルを見捨てていたかもしれません。きっと、皆さんは気負い過ぎなんだと思います」


「確かにな。俺達はなり上がる為に冒険者をやっている。他の誰よりも上り詰めて有名になりたいと言う思いが強い故、他の奴らを蹴落としてもいいと思っているのかもしれない。俺達もたまには初心に戻るのも悪くないかもな」


「そうね。誰かの為を思って仕事をするなんてほんと冒険者の初心者の頃しか感じられてなかったかも。お金と名声欲しさに努力は惜しまなかったけど、誰かのためなんて考えてすらいなかった。ちょっと恥ずかしい……」


 マルトさんとチルノさんは一度向き合ったあと下を向いて少し落ち込んでいた。


「二人とも、まだ心を入れ替えられます。今日はロックアントの討伐も行いましょう。私達は報酬を受取れませんが、キース君の足しになるはずです」


 セキさんはマルトさんとチルノさんの肩に手を置いて初心忘るべからずと言った具合に慰めていた。


「じゃあ、僕が先頭に立って歩いてもいいですか?」


「キース君が先頭に立つの? ちょっと危なくない。だって、魔法が使えないんでしょ」


 チルノさんは僕を心配してくれたらしい。他の人とあまりかかわりがない僕を心配してくれるなんていい人だ。


「ロックアントは魔法がなくても倒せます。敵の姿さえ見えていれば十分なので、ミルに明りを持たせていますから、皆さんは後ろを着いてきてください。僕の身に危険が起こったら助けてくださいね」


「ああ、任せておけ。こう見えても俺達は冒険者の歴がけっこう長いんだ。だてに死地を潜り抜けてないぜ」


 マルトさんは胸に手を当てて大見え切って引き受けてくれた。これで僕は安心して戦える。


「じゃあ、行きましょう。ミルは僕の少し後ろを着いてきて」


「分かりました。ぼくは、ロックアントのにおいと音は何となく覚えているので感じたら伝えますね」


「そうなんだ。ありがとう、よろしくね」


「はい! 頑張ります」


 ミルは自分の出来ることを考えて僕に提案してくれた。それが認められたからか凄く嬉しそうだ。


「じゃあ『一閃の光』さん達はミルの後ろからついてきてください」


「分かった」×『一閃の光』さん達。


 僕達は僕を先頭にして洞窟を進み始めた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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