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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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『一閃の光』がブラックワイバーンを狙う理由

「ごめんね、ミルちゃん。こいつすぐいろんな子に手を出そうとするから、気を付けてね」


「は、はい。気を付けます」


 ミルは満面の笑みを三人に見せつけた。


「いやはや。昨日の子がここまで綺麗になるとは思いませんでしたよ。キース君が介抱したんですか?」


 セキさんは僕に質問してくる。


「介抱したというか、人攫いに合っていたところを助けたらずるずるとこうなってました」


「人攫いに攫われそうになっていたところにキース君が登場して助けた子がめっちゃ可愛い子だったと。なんだよ、その展開、めっちゃ羨ましいじゃねえか。それで、昨日はどこまでやったんだよ。芋っぽいガキンチョが一日でここまで変化するなんて、大層なことしていないとあり得ないだろうがよ」


「ちょっと。何、最低なこと聞いてるの! 無理に答えなくてもいいから。と言うか、こいつの話は無視してもらってもいいから」


「えっと、その、キースさんとお風呂に入って体を褒められて、部屋の床で抱いてもらいました……」


 ミルは赤面しながら小さな声で話す。


「なっ! やっぱりそうだろ! キースも男だったんだな! 嫌いじゃないぜ!」


「キース君も手が速いの?」


「床ですると体が冷えますからベッドの方がいいのではないでしょうか?」


 『一閃の光』さん達は完全の僕がミルを抱いたと勘違いしている。まぁ別に間違ってはいないのだが、きっと彼らの頭の中で抱くの行為が飛躍しすぎているのだろう。


「えっと、言っておきますけど、泣きじゃくるミルを抱きしめていただけですからね」


「何。その先はないのか?」


「やっぱり凄く紳士だったんだね」


「女の子を腕の中で泣かせるなんてキース君、やりますね」


『一閃の光』さん達は僕たちの話で持ち切りになり、目の前ががら空きになっていることに気づかず、後ろから苦情を言われたのをきっかけに僕達は『赤の岩山』に入って行った。


 僕達は麓の休憩所で少し話し合う。さっきの間に話し合っておいた方が各段に早かったのだが、僕とミルの話しかしなかったので無駄な時間を過ごしてしまったようだ。


「ミルちゃん、自己紹介がまだだったよね。私はチルノ・ライデン。こっちのクズ男がマルト・サンダース。この無表情の巨漢がセキ・シデン。さっきは色々勘違いしてごめんね」


「いえいえ。ぼくは別に気にしてません。それよりも、皆さんとお話出来て嬉しかったです」


「ん~。本当にいい子~。妹にした~い」


 チルノさんはミルに抱き着き、頭を撫でる。ミルはとても嬉しそうに耳と尻尾を動かした。


「もごもご……。もごもごも……」


 マルトさんは口元を包帯でぐるぐる巻きにされ、体は縄で縛られている。いったい何をしたのか僕にはわからないが、チルノさんの逆鱗に触れたらしい。


「あの、セキさん。皆さんはなぜブラックワイバーンを狙っているんですか?」


「えっとですね、憧れと言うのが一番強いんですがしいて理由を申し上げるとフラーウス領の資金調達でしょうか」


「フラーウス領の資金調達。なぜそのようなことを『一閃の光』さん達が行わないといけないんですか?」


「フラーウス領はルフス領に次いで治安が悪く、発展の乏しい領土です。ただ、最近ではルフス領の方が治安の安定化、産業、ギルド、街の発展など、大きく巻き返してきたため、フラーウス領が下位になる可能性が出てきたんです。なのでフラーウス領の領主が焦り、何としてでも下位は避けたいと言って考えられたのが、ブラックワイバーンの討伐です」


「なるほど、ブラックワイバーンの素材は高額で売れますからね。って! 領土の資金になってしまうくらい高額で取引されるんですか!」


「はい。どこの領土も欲しがる魔物ですよ。革は防具になり、肉や血液は薬や珍味、大きな爪は武器、魔石は動力と言った具合に捨てる部分がないのでどれだけ大きいかによって毎年値段が変わってくるんです」


「去年はどれくらいのブラックワイバーンが討伐されたんですか?」


「大きさで言うと一〇メートルほどですね。ただ、去年の個体は小ぶりだったと言われています。記録に残っている個体で最も大きかったのは二五メートルです。今年は魔素の集まり方からして一番かそれに並ぶほどの個体が現れると予想されていますから、数多くの領土から冒険者達が集まっていますね」


「へぇ。そうなんですね。確かに髪色が全く違う人たちが集まっていますもんね。でも、比較的赤い髪の人が多いのでルフス領の人がやっぱり多いですけど」


「まぁ、ルフス領の評判があまり良くないと言うのもありますし、前回のブラックワイバーンを捕獲する際、多くの冒険者が犠牲になりましたから、怖気づいている者も多いんです。なので、今回は二つの意味で好機なんですよ」


「なるほど、大きいブラックワイバーンを少ない競合相手で奪い合えるという訳ですか」


「その通りです」


「ただ、僕が皆さんの役に立てるとは思わないんですけど、なぜ僕を仲間に引き入れようとしたんですか?」


「えっとですね、キース君の力が欲しかったんですよ」


「僕の力? ただの力ですか?」


「はい。ブラックワイバーンが現れる場所は高所であり、多くの荷物を運ぶのが困難なんです。事前に運びこんでおかないと、いざという時に戦えませんし、他のパーティーに後れを取ってしまいます」


「確かに、そうですね。ポーションとか買いだめしておかないと長い間戦えそうにありませんし」


「私達は数日前から武器や薬草、ポーションと言った戦闘に必要な物を『赤の岩山』の頂上に運んでいるのですが……、これがなかなかに重労働でして、依頼と運ぶ作業が同時並行に行えないんです。一つ一つが重たいですし、魔法を使って運ぶと魔力を消費して無駄なポーションを飲む羽目になります。どうするかずっと悩んでいたのですが、キースさんを見つけ、お願いしようと思ったんです」


「つまり僕は物を運ぶために仲間になってほしいと言われている訳ですね?」


「その通りです」


「なるほど。じゃあ、その条件を飲むかわりに僕の条件も聞き入れてもらえますか?」


「とりあえず、聞きましょう」


「もし『一閃の光』さん達がブラックワイバーンを倒したあかつきにはブラックワイバーンの素材を紳士靴が一足作れるだけ分けてください。あと、一時間金貨一枚の時給をお願いします。以上です」


「え、それだけですか?」


「はい。それだけです。僕がブラックワイバーンを狙っている理由が素材ですから」


「も、もちろんお渡しします」


「じゃあ、交渉は成立ですね。ミルにも丁度いい鍛錬になると思います」


「が、頑張ります!」


 ミルは両手の拳を握り合わせ、ぐっと脇を閉めていた。


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