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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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露出度の高い冒険者の服

「アイクさん、ミルに合う服ってありますか?」


「そうだなぁ。俺の服だと大きすぎる。何かあったかな」


 アイクさんは顎に手を当てながら部屋に歩いて行く。数分後、ドタドタと走ってきたのはミリアさんだった。


「きゃ~! 可愛い! ミルちゃんだよね!」


「え、あ……はい。そうです」


「ギルドカード(仮)の申請の時以来かな。あの時とだいぶ印象が変わっているけど、何かあったの?」


 ミリアさんはミルの近くに駆け寄り、話を聞く。


「えっと、その、キースさんに抱いてもらいました」


 ミルは両手の指を合わせ、モジモジと言った。どう考えても誤解されそうな言い方で、案の定、ミリアさんは僕の方を見てそうかそうかといった顔をしている。


「ちょ! 抱いていませんよ。僕はミルを抱きしめただけです!」


「それはそれで男が廃るのでは?」


「そ、そんなことを言われても。僕に何を求めているんですか」


「ドロドロした展開を求めているのよ」


「すっごく困ります。僕は勘弁願いたい」


 ミリアさんはミルを連れ出した。きっとミリアさんの部屋だと思うが、いったい何しに行ったのだろうか。

 とりあえず、ミリアさんは女性なのできっとミルに色々と教えてあげるのだろう。


 僕は歯を磨き、トイレをすませ、出発の準備を整えていた。お店の入り口で待っているとミルが昨日とは打って変わって冒険者らしい格好で駆けてきた。


「はぁ、はぁ、はぁ。お、お待たせしました。ど、どうでしょうか。変じゃありませんよね?」


 ミルはやけに太ももの出たショートパンツにへそ出しの小さな半袖服。その上から革製の胸当てをしていた。


 昨日持っていたボロボロの剣から綺麗な短剣に変わっており、腰に横向きについている。綺麗だったクリーム色の髪はミリアさんに手直しされたのか整っており、前髪をかきあげ、耳の間でひとまとまりにして額が出ている。どうやら髪型は変えなかったようだ。


「ミル、髪型は変えなかったんだね。昨日よりも綺麗になっている」


「えへへ……。ありがとうございます。キースさんに褒めてもらえると凄く嬉しいです」


「ミルちゃん、髪型は変えたくないって言ってたのよ。何て健気なんでしょう。お姉ちゃん、燃えちゃう」


「お前はお姉ちゃんと言うか、おばさ……んっぐはっつ!」


 アイクさんはミリアさんに猛烈な一撃を食らい、気を失っていた。あのアイクさんを一撃で気絶させる一撃を放てるとは、実はミリアさんも強者なのでは。


「服装もよく似合っているよ。その格好なら、僕も男と見間違えなかった。にしても肌を露出しすぎのような気がするんだけど……」


「そ、そうですかね。動きやすい格好にしてほしかったので、これはこれでいいんですけど」


 ミルは自分の可愛さを知らない。本当に困った子だ。昨日、人攫いに合ったにも拘らず、能天気すぎる。もしかしたらミルは冒険者に向いていないのかもしれない。


「ミル、昨日、人攫いに合いそうになったの忘れたの? そんなに綺麗で可愛くなっちゃったら、また狙われちゃうよ」


「ぼ、ぼくが、か、可愛いですか?」


 ミルは何を当たり前の事実を言っているのか。自分の顔がちゃんと見えているのかな。もう一度鏡を見せてあげた方がいいかもしれない。


「可愛いよ。また人攫いにあってしまわないか心配なくらい可愛い」


「そ、そうですか。あ、ありがとうございます」


 ミルは細く長い尻尾をうねらせ、照れていた。僕に可愛いと言わせたかったのか? それとも、本当に可愛いと分かっていなかったのか? どっちにしろ、眼のやり場に困る服装は控えてほしいと思いつつ、獣人族の利点を考慮した最善策だと思った。


 シトラが言うには獣人の身体能力は高いので衣服が邪魔になる場合が多いそうだ。それは冒険者の女性も同じで、動きのしなやかさが強みの女性たちはなるべく動きやすい服を好むんだとか。ミルの服はどう考えても動きやすそうだ。僕の服とは大違いで、並ぶと髪色と肌の色くらいしか似ていない。


「じゃあ、そろそろ行こうか。午前八時に『赤の岩山』の入り口で待ち合わせをしているんだ」


「そうなんですか。ん? 午前八時……、もう午前七時ですけど、間に合うんですか?」


「僕は走れば間に合う。その時はミルを抱えて走るから安心して」


「え、え。ちょ! キースさん!」


 僕はミルを抱きかかえ、ルフスギルドに向った。


「きゃあああ! は、はやい! ど、どうなっているんですかあ!」


 ミルは僕の首に手を回し、ムギュっと抱き着いてくる。甘い香りがして心地いい。


 昨日も同じ速度で走っていたのだが、ミルは気づいていなかったようだ。


「ミル、喋ると舌を噛むかもしれないから気を付けて」


「そ、そう言われても……。ガチッ! つぅううう!」


 ミルは舌を噛み、目尻から大粒の涙をぽろぽろとこぼす。きっと相当痛かったのだろう。可愛そうに。

 走り出して五分程たったころ、僕達はルフスギルドに到着した。


「はぁ、はぁ、はぁ。こ、怖かったですぅ……」


 ミルはギルドの床に膝をついて息を整えていた。


「ミルにもいずれこれくらい速く走ってもらおうと思っているんだけど」


「む、無理です無理です! 今の速度はどう考えても普通に走って到達できる速度じゃありませんよ!」


 ミルはすぐに立ち上がって僕の方を向いた。


「ミル、初めから無理と思ったらもったいないよ。出来るかもしれないのに、初めから諦めたら絶対に到達できないじゃないか。出来ないとしても出来るところまでは努力してやっと諦めがつくんだよ。何事も無理だと言って逃げていたら何も達成できないよ」


「うぅ。その通りで何も言い返せません」


 ミルは俯き、声を飲み込む。


「とりあえず、今日の依頼を受けよう。僕とミルでパーティーを組んで同じ依頼を受ける。そうすれば、ミルと報酬を山分けできるからね」


「で、でもぼく、本当に役に立ちませんよ」


「わかっているよ。昨日、少し見てたから。ミルには基礎体力が備わっていないんだと思う。始めは体づくりから始めよう。僕と一緒に動けば多分体づくりになるから」


「あれだけの速さで走る基礎体力って。想像できません」


「別に速く走れなくてもいいよ。他の獣人さん並に走れるようになればいいんだ。特別を目指す必要はない。自分に必要な力だけを考えれば手に入れるのは何も難しい話じゃないと思うよ」


「た、確かに。ぼくは一人でも生きて行ける力を手に入れるようにすればいい訳ですから、何も特別になる必要はないんですね」


「そう。だから、焦らなくてもいい。基礎体力を着ければ凄く働きやすくなるはずだよ」


「わ、わかりました。ぼく、頑張ります!」


 ミルは握り拳を作り、脇を閉めて気合いを入れる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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