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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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美形の獣人と食事

 僕はミルを泣き止ませるために話しかける。


「でも、ミル。今は綺麗な状態でこの場にいる。確かに辛いかもしれないけど辛いと言っていても誰も助けてくれないよ。僕はミルを助けたけど、もし僕がもっと悪い人間だったら奴隷商に売りつけていたかもしれない。今、ミルが無事に生きているのは運がよかったんだ」


「まぁ、運がよかったのは確かです……」


「あの時、僕が運よく通りかかったのはきっと神様のおかげだよ。助けてくれた神様にお礼の祈りでも捧げればいい。辛いことは消えないけど、誰かに感謝できるのは恩を受けたから。つまり存在意義を認めてもらえたってことだと思う。ミルは神様に愛されているんだよ。それか、天界にいる亡くなったお母さんが助けてくれたのかも」


「そんなことがあるんですかね……」


「あるよ。だって、僕は神様に三回も救ってもらった。願いはとどくんだ。きっとミルも助けてほしいって誰かに願ったんだよね」


 ミルはこくりと一度頷く。その後、両手を握りしめて目をつぶり、神様に祈っていた。


「ありがとうございます、キースさん。ぼく、元気が少し出たみたいです」


 ミルは涙を拭いて笑った。とても綺麗な笑顔でシトラがいなかったら好きになっていたかもしれない。もし、ミルが男だとしたら僕はそっち系でもいけてしまうのか。いやいや。さすがにそれは。どうだろう。


「それなら良かった。あ、そろそろ料理が出てくるから心して食べてね」


 僕はアイクさんに視線を送る。すると、アイクさんはため息をついて大盛りの照り焼きを持ってきた。


「照り焼きの大盛りだ。あと、白パンは元からついてるんでな。好きなだけ食べていけ」


 アイクさんの持ってきた照り焼きはいつも以上に大量だった。僕でも食べきれるか分からない。だが、ミルは眼を輝かせ、口角から涎を垂らし、今にも食べたそうにしている。ただ、あまりの量にたじろぎ、一歩踏み出せないでいた。


「す、凄い量ですね……。これで一人前ですか?」


「うん。そうだよ。心して食べてね。残すとあの店主は凄い形相で怒ってくるから」


「残したりしません! 食べ物はしっかりと食べきります! 食べ物を粗末には出来ません!」


「お、言うじゃないか。しっかりと食って筋肉を着けるんだな。坊主」


「は、はい。が、頑張ります……」


 アイクさんはミルの頭をガシガシと撫で、調理場の方に戻っていく。ただ、アイクさんに頭を撫でられたミルは納得のいかないような顔をしており、少し引っかかる。


「ミル、どうかしたの?」


「え、い、いえ。何でもありません。い、いただきます!」


 ミルはフォークを持って照り焼きに刺しこみ、一口食べる。


「んっ!」


 ミルは眼を見開いて一切れの照り焼きを一気に口の中に入れた。真っ白な頬が膨らみ、ピンク色の唇にはテカテカと輝く照り焼きソースが輝いている。


「お、美味しい! こ、これ、何ですか!」


「照り焼きチキンって言うんだって。僕も初めて食べた時は驚いたよ。醤油? って言う調味料と砂糖を混ぜて片栗粉でとろみをつけたソースを皮は香ばしく、身はふっくらと焼き上げた鶏の肉に着けて食べる料理なんだ」


「へぇー。ぼく、これ凄い好きです。これなら、全部食べきれる気がします」


 ミルは照り焼きチキンを次から次へと食べていき、山もりの量を完食してしまった。そんなにお腹が空いていたんだと言う実感をえた。ただ、ミルの華奢なお腹にどうやって入っていったのか理解できない。

 まだ余裕があるのか、余った照り焼きソースにふっくらと焼き上げられた白パンを着けて食べていく。


「ん~! パンも美味しい。凄いお店ですね。こんなに美味しい料理が銀貨一枚で食べられるなんて、信じられません!」


「僕も信じられないよ。店主が皆にお腹いっぱいになってほしいからやっているんだって。新米の冒険者さん達もいっぱい来るんだよ。でも、半分くらいはもう一度やって来ないんだ」


「え。それって……」


「お金を稼いでもっと高級なお店に行っちゃったのかな」


「え? あぁ、そう言うことですか」


 僕は食事の席で不穏な空気を作りたくなかった。

 実際はお金を稼いでお店を離れていった者より、殉職してしまった者の方が圧倒的に多い。


 僕が知っている人でまだお店に来てくれるのは『赤光のルベウス』の四人だけだ。それ以外の人は見かけなくなった。きっと『赤光のルベウス』さん達はアイクさんの言う通り、冒険者の見込みがあるらしい。着実に成果を出し、生きて戻ってきている。


「あの、キースさん。ぼくは冒険者としてやっていけるでしょうか」


 ミルの切実な悩みだった。きっとこれからの不安が今でも付きまとっているのだろう。


「僕が言えるのは今のままじゃ無理だと思う。僕も冒険者としての歴は凄く短いけど、危険なのは重々承知している。だから言えるけど、今のミルが一人で依頼を達成できるとは思えない」


「でもぼく、冒険者としてしかお金を稼げないんです。どうにかして力を付けるまで、生きていくにはどうしたらいいでしょうか?」


「んー。そうだなぁ。とりあえず一番簡単な依頼を受けるべきだよ。スライムの討伐依頼が一番簡単だと思うけど『赤の森』の中に入らないといけないのは変わらない。それか『赤の岩山』に出現するスライムを狙うのもありかもしれないね。えっと確か、ミルはブラックワイバーンに会うために『赤の岩山』に行っているんだよね?」


「は、はい。そうです」


「なら、僕と一緒に依頼を受けよう」


「え……」


 ミルはぽけっとした顔で僕を見つめていた。あまりに美形すぎるのであまり見つめないでほしい。


「えっと、言い間違いじゃありませんよね。ぼくと一緒に依頼を受けるって……」


「もちろん、言い間違いじゃないよ。僕も受けているんだ。スライム討伐の依頼。ミルも一緒に受ければ、僕が援助できる。助けた手前、面倒を見るよ。もう『赤の岩山』にいる冒険者達とはうまく交渉出来ないでしょ?」


「で、でも。キースさんの迷惑になるんじゃ……」


「ミルにはお願いしたい仕事があるんだ」


「お、お願いしたい仕事?」


「洞窟の中で松明を持ってほしい。あと、素材の採取も手伝ってくれたら、依頼料の半分くらい渡すよ」


「ちょ! な、何ですかその仕事。さすがにぼくにでも簡単すぎませんか!」


「だから、ミルにでも出来るでしょ。出来れば自信が付くんだよ。自分が弱いと思っていれば過信しないし、努力も続けられる。僕はミルが一人でもお金を稼げるようになるまで面倒を見るよ。それが僕に出来る恩返しの一つなんだ」


「恩返し?」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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