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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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似た者同士

「どうぞ、お水です。長い間何も飲んでいなかったので喉が渇きましたよね」


「い、いただきます」


 獣人さんは僕からコップを受け取ると水を勢いよく飲み干した。どうやら喉が相当渇いていたみたいだ。そのせいで声が枯れていたのかもしれない。


「はぁ、はぁ、はぁ……。ありがとうございます。喉が渇き過ぎて声が全然出せませんでした。ほんと、ご迷惑をおかけしてすみません」


 獣人さんはおでこをテーブルにつけそうなくらい頭を下げてきた。


「そんなに謝らないでください。僕が勝手にしただけですから。それより馬車の中にいた男は知り合いではないんですよね」


「は、はい。多分、人攫いです。主に獣人の……」


「人攫い。悪い人なんですね」


「街の外だとほとんどが無法地帯ですから、人攫いも気付かれなければ合法です」


「じゃあ、危なかったんですね。でも、何で攫ったのにわざわざあんなところで止まってたんでしょうか? 僕が気づけたのはあまりにも不自然だったからですよ」


「そ、それは、その」


 獣人さんは猫耳をヘたらせ、真っ白な肌を赤面させていった。だが、途中から青ざめていき、身を震わせる。


「ご、ごめんなさい。怖い経験をしたのに、思い起こさせてしまいました」


「い、いえ。だ、大丈夫です。ぼくは大丈夫ですから。あなたにはとても感謝しているんです。あのままだったらぼく、奴隷にされて一生囚われの身になるところでした。助けていただいてありがとうございます」


 獣人さんは頭を深々と下げ、テーブルに涙がこぼれる。ぽたぽたと涙が落ち続け、それだけ怖かったのか、助かって嬉しかったのか、また別の理由があるのか。僕には分らないが感謝されているのは確かだ。


「ここまで連れてきてあれなんですけど、まだ自己紹介もしてませんよね。僕の名前はキース・ドラグニティと言います。年齢は一五歳です。三原色の魔力はもっていません。午前中は冒険者、午後はお店で働いています」


「ぼ、ぼくは、ミル・キーウェイと言います。年齢は一四歳です。三原色の魔力は多分イエロー一色で、今日まで冒険者紛いな仕事をしてました……」


 ミルさんは僕より年下でまだ成人していなかった。


「ギルドカードが(仮)だったのは成人していなかったからなんですね」


「えっと、その、ぼくの方が年下なので敬語は使わなくてもいいですよ」


「そうですか? それなら普通に話そうかな」


「はい。そうしてください」


「じゃあ、質問するけどいいかな?」


「はい。答えられる質問なら何でも聞いてください」


「ミルは何で冒険者をやってるの?」


「お金を稼ぐためです。ぼくは獣人なんですけど力が弱くて、元から魔法なんて使えるほど魔力量はありませんし、働ける仕事先が冒険者しかなくて……」


「なるほど。でも、なぜわざわざ『赤の岩山』の方の依頼を受けているの? 『赤の森』の方がもっと簡単な依頼があると思うんだけど」


「ぼく、ブラックワイバーンを倒すのが昔からの夢なんです。父親からずっとずっと聞かされていました。『昔、俺はブラックワイバーンを倒した経験があるんだ!』と。でも、そんな偉業を達成しているなら、お金がもっとあるはずだと言ったら、酒瓶で打たれる日々」


 ――ミルも僕と同じように親から虐待を受けていたのか。


「ある日、父親に腕を掴まれて強姦されそうになって、その時はベロベロに酔っぱらっていたのでぼくが子供のころに死んだ母親と間違ったんだと思うんですけど、怖くなって逃げました。父親の持ってたボロボロの剣とローブを持ってルフス領にまでやってきたんです。ぼくはルフス領とクサントス領の間にある森に住んでいたので近い方のルフス領に逃げたんです」


「ミルも凄い波乱な人生なんだね」


「じゃあ、キースさんもそんな人生なんですか?」


「そうだね。僕は成人してから親に捨てられたんだ。それまで、ずっと酷い仕打ちを受けていた。ミルとちょっと似てるかもね」


「キースさんもぼくと同じような経験しているんですね。それなのに、ぼくとは全然違う生活しているみたいですけど、どうやってそんなに強く生きてるんですか?」


「僕には大切な家族がいるんだ。家族と言っても死んだ母さんの買ってきた奴隷なんだけどね。僕はその子がいなかったらきっと今ここにはいない。普通に死んでると思う」


「大切な家族ですか。ぼくにも兄がいたんですけど、出稼ぎに行ったっきり帰ってこなくて。死んだのか、奴隷になったのか、全く連絡が付かずじまいで」


「そうなんだ。でも、生きていたらどこかで会えるかもしれい。僕だって人生を掛けて家族を見つけ出そうと思っていたくらいなんだ。運よくすぐに見つかったけど、取り返すのが凄く難しい相手に買われてしまっていた。今、僕は家族を取り戻すためにお金を稼いでいるんだよ」


「キースさんは凄いですね。ぼくにはそこまで出来る気がしません……」


「何言っているの。ミルは獣人族だからしっかり鍛えればそれなりに戦えるようになるよ。そうすれば宿代と食事代は普通に賄えるはずだ。そうすれば少しは余裕を持てるはずだよ」


「鍛えようとしてもいつも挫折しちゃって、続かないんです。ぼくには向いてないんだって言い訳して、汚い川の水を飲んだりして飢えをしのいで、盗み食いしたり、路上で眠りそうになって卑猥なことされそうになったり、無理やり部屋に連れ込まれそうになったり、でも、酔っぱらいが倒れている空きに財布を盗んだりしてお金を得て何とか生活してたんです」


 ――生きてくためには犯罪も仕方ないのか。でも、ミルの顔を見るに、したくてしている訳じゃないと分かるな。本当に限界だったんだろう。そうじゃないと、そんな悲しそうな顔をしないよな。


「そんな時『赤の岩山』でブラックワイバーンが出るかもしれないと耳にして、どうやったら出会えるのかと考えたんです。方法は冒険者になって『赤の岩山』に向うしかないと知り、ギルドカードを作ろうとしたら成人にならないと作れないと言われたので(仮)のギルドカードを作ったんです」


「なるほど。でも、ブラックワイバーンにあってどうするつもりだったの。今のミルじゃ、どう考えても勝てないと思うんだけど」


「はい。なので冒険者パーティーに入れてもらって、少しでもブラックワイバーンに近づいて、みたいと思っていました。でも、そう簡単には行きませんでした。今日、キースさんにも見られていたと思うんですけど、力のないぼくではなんの役にも立てず、現実を叩きつけられて自暴自棄になってたときに人攫いに。ほんと、情けなくて……」


 ミルはさらに泣き出した。美形の子がすすり泣きをするものだから、周りの人達も気が気ではない。僕の方を睨んで何をしているんだと言うような表情の人もいた。


 それはアイクさんなのだが……。早く料理を持って来てくれないだろうか。そう言った目で見ると、泣き止ませてからにしろとでも言った形相で僕を睨んでくる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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