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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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綺麗になった獣人さん

 獣人さんの髪色は表面に汚れが付きまくっているので分かりにくいが白に近いイエロー?

 どうやら三原色の魔力の質が薄いらしく、髪色からしてほぼ三原色の魔力を持っていないと言っても遜色ないクリーム色。髪質はパサパサ。体調が悪いのは眼に見えて分かる。


 肌は粉を拭くほどガサガサ。眼に力がなく、死んだ魚の眼をしている。それくらい気力がなかった。髪を解くと、ゴミが沢山出てきた。埃や小石、が殆どで、櫛で取り除いて正解だった。そうしないと石鹸が絶対に泡立たなかった。


「よし。ブラッシングは終了。次は濡れた布で汚れを出来るだけ拭き取ってと……」


 僕はお湯で温めておいた布を取り、水気をしっかりと搾る。大量のお湯が滴り落ち、ホカホカの湿った布になる。


 獣人さんの耳の中に入らないよう気を付けながら拭いていくと、布がものすごい汚れた。髪に付いていた細かい砂やゴミが布の方にくっ付き、べた付いていた髪が少しだけ滑らかになった。


 この工程を何度か繰り返し、髪がほどよく潤い汚れもほとんど取れた。仕上げに石鹸を使って洗っていく。固形石鹸を手で泡立て獣人さんの髪をわしゃわしゃと擦りながら地肌を揉み解し、少しでも気持ちを落ち着かせてもらおうと考えた。


「どうですか、気持ちいですか?」


「は、はぃ……。きもちぃ、いぃ、ですぅ……」


 どうやら獣人さんは気持ちよくなってくれたみたいだ。石鹸をしっかり泡立てたら、お湯を使って流していこうと思ったのだが、獣人さんは服を着たままなのでびちゃびちゃになってしまうと考えた。


 ――少し湿った布を使って、泡を包み込むようにして落としていこう。


 先ほどよりも布を絞らず、少し水分が残っているが滴りはしない程度。この布を獣人さんの髪に当て石鹸をしっかりと拭きとっていった。


 結果、ふわふわサラサラの髪に戻り、髪色がほぼ白にまで近づいていた。だが、完全に真っ白な訳でもない。尻尾も同じ色で、髪と尻尾の色が同じなので獣人さんだとほぼ確定する。


「最後にオリーブオイルを塗ってしとやかにしたあと、魔道具を使って乾かしますね」


 僕が話掛けても返事はない。いやではないみたいなので、手にオリーブオイルを少し縫ってさらさらにった髪に少量着けていく。


 髪はボサボサだったが綺麗に洗うとそこまで小汚く見えなくなった。だが、目に掛かるほど前髪が長く、暗い印象になっている。


 僕は前髪を束ねてつむじの方に持ってきた。前髪がなくなり、綺麗なおでこが丸見えになっている。でもこっちの方が、清潔感があって印象がよさそうだ。紐を使って。髪を止め、オリーブオイルを少しだけ塗った。


 高級な理髪店の方が髪にオリーブオイルを少量塗ると纏まりがよくなると言われ、ボサボサだった獣人さんの髪に使ってみたが効果は覿面。髪は見違えるほど綺麗に整い、ブラッシングすると枝毛があるのか少し纏まりが悪いが、それも味が出ていてカッコよく見えた。


「よし! 出来た。あとは汚れてる顔を拭いて……」


 僕は獣人さんの泥まみれの顔を濡れた布で綺麗に拭いていく。

 薄汚れていたからか肌の色が茶色っぽく見えていたのだが、実際は真っ白だった。

 ほんと、どれだけ汚れていたんだ……。そう思わされてしまう。


 僕は獣人さんの顔を全て綺麗に拭きとった。

 薄汚かった印象が一転し、とても綺麗になって可愛いとカッコイイを併せ持った獣人さんになった。


 本当に男か女か分からない。直接聞くのも申し訳ない。もし、男性だとして女の方ですかと聞いたら落ち込むと思うし、逆もしかり……。


 直接触って確かめると言った強引な方法も思いついたが、もし女性だった場合、僕はシトラに殺されるので出来ない。


 声は少々高いが、まだ声変わりしていないと言う可能性すらある。もう少し待てば分かる情報なので急がずに先送りにした。

 見える部分は全て綺麗にしたがまだ服だけがどうしても汚かった。僕がお風呂から出ると、二着の服が置いてあり、アイクさんが用意してくれたのだと分かる。


「あの、僕は反対側を向いているので、着替えられますか?」


 僕が服を渡すと獣人さんは手に取ってくれた。どうやら、着替える気になったんだろう。僕は反対を向き、獣人さんが着替え終わるのを待つ。


「ぁ、ぁのぉ……。着替え、ました……」

「そうですか。なら、振り返りますね」


 僕が振り返ると綺麗になった獣人さんの姿があった。これならアイクさんも料理を振舞ってくれるはずだ。銀貨一枚でお腹いっぱいになれるのできっと満足してくれるはずだ。


「うん。凄く綺麗になりましたね」


「そ、そうですか……。ありがとう、ございます」


 獣人さんは綺麗になった自分を鏡で見て、すぐに視線をそらしたあと僕に感謝した。


「じゃあ、食堂に行きましょう。君、体が凄いガリガリだから、何か食べないと死んでしまいます」


「で、でも、お金が」


「ルフスギルドの支部で金貨一枚を貰っていましたよね。銀貨一枚でお腹いっぱいにしてくれるから、心配しないでください」


「そ、それが、金貨一枚……取られちゃって」


「え、もしかして馬車に乗っていたあの男に?」


「はい。金貨一枚で七泊、三食付きの宿に連れて行ってくれると……言われて。のこのこついて行ったら。うぅ……」


 どうやら獣人さんは人に騙されてしまったらしい。元から底辺をさまよっているのに、せっかくもらった恩を運悪く奪われてしまったようだ。あまりにもいたたまれないので今日は僕が驕ることにした。


「あの。僕が夕食を驕りますよ。お金を返すのはいつでもいいので、いつか返してください」


「い、いいんですか……」


「はい。今日、僕は君が『赤の岩山』の洞窟内で依頼を一生懸命にこなしていたのを見ましたから、食事くらいは貰ってもいいと思います。食べますか?」


「うぅぐぅぅ……。はぃ……」


 獣人さんはせっかく綺麗な顔が台無しになってしまうくらい表情をくしゃくしゃにして泣いていた。僕が手を差し出すと獣人さんは僕の手を取り、そっと握る。僕は優しく引っ張ってお店の食堂に向った。

 食堂の開いているテーブルに座り、僕はメニュー表を見せる。


「この中なら全部銀貨一枚なので、好きな料理を選んでいいですよ」


「え、ど、どうしよう……。あ、あなたは、いつも何を頼んでいるんですか……?」


「僕? 僕は照り焼きチキンを頼んでいます。同じ料理にしますか?」


 獣人さんは頭を縦に振って了承した。


「アイクさん、照り焼きチキンを二つお願いします」


「了解だ」


 僕は一度席から立ち、コップと水の入ったボトルを持って椅子に戻る。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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