『赤の岩山』の探索
「よし。これで洞窟の中でもロックアントを討伐出来る。上手くいけば金貨二○枚も手に入るんだ。たとえ一人だとしても努力すれば何とかなる。死なない程度に頑張ろう!」
今日は早く来ていたおかげでハイネさんと話せた。でも、昨日と同じくらいの時間にルフスギルドを出発してしまったので『赤の岩山』に到着するのが昨日と同じくらいの時間になると予測できる。
数多くの冒険者さんが『赤の岩山』の入り口付近にすでに並んでいるはずだ。
僕がもっと早く移動していればブラックワイバーンに出会えたかもしれないのに。
「まぁ、悔やんでいても仕方がない。僕は依頼を受けながら探せばいいんだ。何ら難しくない」
僕は走った。昨日よりも荷物が多いので速度は少し落ちたが到着時間は大して変わっていなかった。
目的地に到着した僕は『赤の石山』の入り口に向い、行列に並ぶ。少しでも早く中に入ろうとするも、多くの冒険者さん達がいる為、結局三○分ほど待った。
「んー。やっと入れた。でも、まだこれだけ多くの人がブラックワイバーンを狙っているというのは討伐されていない証だ。僕はスライムとロックアントを倒して換金したあとに探してみようかな。でも、そうなると何か依頼を受けないと中に入れないんだよな。依頼を長引かせて捜索の時間を確保するのでもいい作戦かもしれない」
僕はまずそこら中にいるスライムを倒していった。
スライムはどこにでもいるなーっと思いながら、討伐を行い。二時間ほどで一〇○匹倒せた。あとはロックアントを倒すだけだ。
僕は昨日見つけた場所に移動する。今日もロックアントが体を温めているのではないかと思ったのだ。
実際に行ってみると、昨日と同じように一〇匹ほどが日の光を浴びて体を温めている。
僕は昨日の失敗を生かし、大きめの岩を見つけ、握り潰さないほどの力で持ち上げ、一〇匹のいる岩壁に岩を投げた。
「はっ!」
『ドガッツ!!』
『ギュイイイ!!』
僕の投げた岩は壁にぶち当たり、壁全体に蜘蛛の巣状の亀裂を作る。
僕は何が起こったか分からなかったのだが、ロックアントは皆失神し、地面に落ちてきていた。足をピクピクと動かし、感覚がおかしくなっていると考える。
「な、何か威力が出過ぎちゃったけど、まあ良いか。ロックアントを討伐出来たし」
僕はロックアントの右触角と胸の岩を切り離し足を切り取って、麻袋にそれぞれ入れる。
「よし。十分の一を討伐完了。周りに巣穴でもないか確認してみるか」
僕はロックアントの出てきそうな穴をいくつか見つけた。だが、人の出入りできる大きさではなく、別の入り口から中に入る必要があった。
僕は周りを調べる。すると冒険者パーティーが岩壁に入っていく姿を遠目で見つけた。少し場所を移動し、冒険者さん達が入っていった入口を発見する。
「ここから行けばロックアントの巣に近づけるかも。女王にさえ合わなければいいんだ。よし、行こう」
僕は腰にロックアントの触角が入った麻袋を掛け、ロックアントの胸が入った麻袋を背負っている。黒卵さんの入った麻袋は背中に縛り付けて落ちないようにしていた。
「さてと、松明の出番だ」
僕は腰から松明を一本抜き取り、粗い地面にザッとこすりつけ、火をつける。松明の先端が燃え始め、暗い洞窟を照らした。
「よし、行くぞ」
僕は洞窟の内部があまり広くないと知り、剣からアイクさんのダガーナイフに持ち替える。
狭い場所なら刃の短いナイフの方が使いやすいはずだ。洞窟内部には奇妙な音が鳴っていた。
頭がキーンとするような高温が聞こえて来たと思ったらゴーンと言う鈍い音が響いていた。
「他の冒険者さん達も戦っているのかな。よし。僕も頑張っていこう!」
僕は松明を左手で持ちながら前に進んでいく。すると壁が少し開けていき、大きめの通路になった。
「さっきよりも歩きやすくなった。あと、壁にいろんな切込みが入ってるな。これは何だろう……」
なぜか壁の右側にのみ切込みが入っていた。傷の形状的にナイフでガリっと引っ掻いたような形だった。
「こういったおまじない……、なわけないよな。出口が分かるようにしているとかか。でも、これだけ傷がついていたらどれが自分の傷つけたやつか分からなくなりそう……。ま、右手を壁につけながら歩けば、どこかの入り口には出られるはずだ。外に出られれば大きな岩山と日のある方向で出入り口が分かる。気にせずに進もう」
狭かった道はどんどん広がり、馬車が通れそうな程広い洞窟になっていた。
冒険者さんとチラホラ行違う。その表情はあまり好調ではないらしく、不機嫌そうな顔をしており、仲間に怒鳴っている姿もあった。その時すれ違ったのは昨日同行をお願いした冒険者パーティーだった。
「だーっくそ! お前がちんたらしてるから取り逃がしちまっただろうが! ふざけんなよ、この役立たずが!」
「す、すみません。荷物が重くて……」
「言い訳してんじゃねえぞ。俺達はブラックワイバーンを倒すために来てんだ。こんなしょぼい依頼はさっさと終わらせてブラックワイバーンを探したいんだよ」
「わ、分かってます。ぼくも頑張りますから、急ぎましょう……」
「たく。こんな奴、何でバーティーに入れたんだ。おい、この獣人をパーティーに入れたやつ誰だ?」
周りにいた冒険者は皆怒鳴っている青髪男を指さした。
「あ、俺か。ちっ! 獣人だから荷物持ちに丁度いいと思ったがとんだクソザコだったな。失敗したぜ」
「す、すみません」
――冒険者パーティーは命を預け合ってる仲間だ。そう言ってたのに仲間にめちゃくちゃ罵倒してるし……。それはただの不満を発散しているだけに過ぎないよ。
僕と冒険者達はすれ違う。
「おいおい、こんな所に一人で入ってくる馬鹿がいるぜ。命知らずにもほどがあるだろ」
周りの冒険者は男につられるように僕の方を見て生きた。加えて松明なんて持ってるぜ、やら、魔法使えないのかよ雑魚、など口々に言われる。まぁ、事実なので仕方がない。
僕は穏便にやり過ごすためすたすたと先に進んでいった。
周りに冒険者がいなくなったころ、ようやく胸の内に溜まった息を吐き出す。
「はぁー。ああいう冒険者もいるんだな。見かけや顔に寄らないのか。気をつけないと騙されて死地に捨てられそうだ。相手の方から断ってくれてよかった……」
昨日パーティーに入れてもらわなくてもよかったと安堵していた時、聞き覚えのある声が聞こえた。
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