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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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性の魔物

「僕は……フレイを見逃がしません。むやみやたらに通報したりもしません。僕、もっと強くなってフレイを捕まえられるくらいになります。フレイをただ捕まえても変わないなら、殴ってでも眼を覚まさせるしかないと思うんです」


「君って、結構馬鹿なのかな?」


 ハイネさんは苦笑いを浮かべ、僕を見てくる。


「ば、馬鹿って何ですか。酷いですよ、真剣に考えている人に馬鹿と言うなんて……」


「はは、すまない。だが、ルフス領でフレイに勝てる者はいない。きっと他の領土でも普通の冒険者でフレイに勝てる者はいないだろう。勝てるとすれば他の勇者くらいだ。プルウィウス王国の内の七人しか勝てない相手に拳で戦うなんて、君は少し変わっているな」


「僕はただ、昔好きだった子を忘れるなんて最低だなと言ってやりたいだけです。あと、死んだ人に一生詫び続けてほしい。今、あるはずだった笑顔を無残にも踏みつぶしたという事実を知ってほしい。僕がフレイを許せないのは人を殺したからじゃありません。悲しいですけど、人殺しは頻繁に行われていると思います。もちろん印象は最悪ですけど殺す方も悪いし殺される方も悪い。そんな考えが横行している気がします。僕はフレイが、自分が悪だと思っていないととうことが一番許せません」


「フレイは勇者だ。彼が悪だと言えば、誰だって悪になる。たとえ小さな子供だとしてもな」


「そんな発言する者は……、勇者じゃないでしょ。私利私欲の為に他人を悪だと決めつけて殺すなんて。勇者の訳がない」


「だが、勇者は強さ。強き者が正義。勝った者が正しいんだ。それが今の世の中なんだよ。青年……。弱き者は強き者に屈服するしかないんだ。ルフス領は特に弱肉強食の傾向が強い。たとえ君がフレイに挑んで焼け死んだとしても、私は骨を拾わない」


「そうですか。でも、僕は死ぬ気はありませんよ。フレイをもう一発殴って今度こそ眼を覚ましてやります。いろんな女性に手を出しても喉の渇きは潤わないと教えてやらないといけませんからね!」


「君からはまだ子供のにおいがするが、既に事の原理を知っているんだな」


「はは……。僕は一途なだけです。と言うか、依存かもしれません」


「綺麗な君をここまで惑わせている悪い女はいったいどんな奴なんだろうな。それが私は気になるよ」


「な、悪い女って。そんな訳ないじゃないですか。僕の大切な家族なんです。悪い女だなんて言わないでくださいよ!」


「すまない。ちょっとうらやましくてね。つい意地悪してしまったよ」


 ハイネさんは上を向いて何もない天井を見つめていた。そのせいで大きな胸が吐出し、僕は眼をそむける。


「どうしたんだい。あぁ、そうか。私の体は君にとって少し刺激的な体かな。私の精神が少し回復したのは君の手紙のおかげだ。少しくらいなら揉ませてあげてもいいぞ」


 ハイネさんは自分の胸を両腕でむぎゅっと挟み、さらに大きさを強調させていた。


「け、結構です。僕はそんなのどうでもいいですから」


「そうかい。お姉さん、ちょっと残念だなー。君になら襲われてもよかったのに」


「からかわないでください。僕はフレイみたいな性の魔物じゃありません」


「はは、ごめんごめん。君には好きな人がいるんだね。好きだからってかもかなう訳じゃない。それは覚えておかないと、失恋したときに立ち直れなくなる」


「わ、分かっていますよ。僕は相手の幸せを一番に考える男です。相手が嫌がっているのに、無理やり付きまとう行動はとりません」


「じゃあ、君が失恋したときは私に言うといい。君を体で慰めてあげよう」


「だ、だから、遠慮しますって。もしかしてハイネさんも性の魔物なんですか」


「面白い質問だね。だが、人は誰しもが性の魔物だ。私も、君も、どちらも性の魔物になりうる。そんなに気にする必要はない。欲求は素直に受け入れるのが一番楽だ。こちらが望み、相手も受け入れるのなら別にやってもいいじゃないか」


「両者が望むのなら何も言いませんけど、僕はハイネさんとそんな関係にはなりません。フレイに何かあったらまた教えてください。今から僕は『赤の岩山』に向います」


「君もブラックワイバーンを狙っているのかい?」


「はい。ブラックワイバーンの素材が必要なんです」


「そうか。なかなか難しいと思うが健闘を祈っているよ。助言するなら、ブラックワイバーンを倒す方法は物理攻撃の方がいい。魔法はあまり利かないからな。あと、ブラックワイバーンの逆鱗の下に体を動かす脊椎がある。そこを狙えば倒せなくても隙を生み出せるぞ」


「あ、ありがとうございます。もし、素材が手に入れば僕は別にそれ以上いらないのでギルドに寄付しようと思っています」


「そうしてくれるのならありがたいね。金はあればあるだけいい。特にギルドは金があるのとないのとでは全く違うからな」


「じゃあ、僕は行きますね」


「ちょっと待て」


 僕はハイネさんに呼び止められ、後ろを向いた。目の前にはハイネさんがいて、腕を大きく広げている。


「むぐっ!」


 僕はハイネさんに抱きしめられ、豊満な胸に顔が埋まった。葉巻の臭いがしてむせ返りそうだった。だが、どこかほのかに温かい。胸に包まれると眠たくなるというのはどこかで聞いた覚えがあるが、ほんとうに眠たくなった。だが、こんなところで眠る訳にはいかない。僕は久々の眠気を振り切ってハイネさんから離れようともがく。


「どうか、死なないでおくれよ。死なれると私も寝覚めが悪い。いい子ほど早く死ぬから……。どうか、無駄に死なないでくれ」


「も、もちろんです。僕は絶対に死にません。そんな気はありません。家族を助け出して幸せにするまで何が何でも死に切れません」


「そうか。よかった。それなら心配いらないな」


 ハイネさんは僕を放してくれた。その顔は子を心配する母親のような顔だった。そんなに僕は子供っぽく見えるのだろうか。少し侵害な気分だ。僕も大人になれるのだろうか。


 僕は受付に戻り、スライム用のダガーナイフを受け取り、松明を買った。


 受付さんによると、この松明は先端の発火剤を地面にこすりつけると魔法を使う必要もなく燃やせるらしい。僕にうってつけの松明だった。一本で焼く一時間以上燃えるらしい。僕は銀貨五枚を払って松明を一〇本買った。

 松明の束を腰に巻き付けて手で持たなくてもいいようにする。

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