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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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ギルドマスターの汚部屋

「初めまして。ギルドマスター。僕はあなたに手紙を送っていた者です。呼んでくれていましたか?」


 僕は胸に手を置いて会釈する。


「君が毎日書いてくれていたのか。そうだったのか。今、丁度その話を受付嬢にしていたところだ」


 ハイネさんは真っ赤な短髪にきりっとした眼が特徴的な女性だった。

 身長は一七〇センチメートルほどあり、僕よりも高い。

 長袖長ズボンの紳士服を着ており、胸が出ていなかったら男性だと思われてしまいそうな雰囲気だった。腰に剣を掛け、とてもカッコいい女性だ。


「ハイネさんは何の話をしていたんですか?」


「手紙の主と少し話がしたいから、手紙の主が来たら部屋に呼んでくれと言いに来ていたところだ。丁度合うとは思ってなかったがな」


「なら、話を聞いてくれる気になってもらえたんですね?」


「ああ。そのつもりだ。ついてきてくれ」


「わかりました」


 僕はハイネさんの後ろをついていく。早朝なので誰もおらず、僕とハイネさんだけがギルドの中を歩いていた。


「君はいつもこんなに朝早くからギルドに足を運んでいたのか?」


「はい。お金が必要なので朝早くから働くようにしています。あと、会いにくい人がいるので、出来るだけ鉢合わないようにするために朝早くから着ているというのもありますね」


「仕事熱心なんだな。だが、白髪では難しい依頼はこなせないだろう?」


「はい。なので比較的簡単な雑用の依頼をこなしています。冒険者さん達が嫌う面倒な依頼を受けているんですよ。僕は白髪ですし、好きな依頼を選んでいられませんから」


「そうか。苦労しているんだな」


「確かに苦労していますけど、凄く楽しいですよ。今、生きているのがとても嬉しいので、頑張って生きています」


「生きるのが楽しいか……。それは何よりだな」


 ハイネさんは俯き、暗い顔を浮かべる。少なからず何かを抱えていると思われるが、僕にはどこまで深い悲しみを追っているのか分からない。

 ギルドの内部に僕は初めて入っている。どうも、宿のように多くの部屋があり、ギルド関係者の人が止まる部屋になっているみたいだ。


「ここが私の部屋だ。汚れているが我慢してくれ」


「は、はい」


 僕はハイネさんの部屋に入った。思ったよりも散らかっており、見かけからは想像もできない汚部屋だった。

 だが、元からこうだったのではないのだろうなと感じ取れる部分として、衣類を入れる籠や植物、紅茶セットなどが置いてあることから分かる。今は埃をかぶっているが昔は輝いていたのであろうカッコいい鎧も飾ってあった。


「適当に座ってくれ。座る場所などないが、好きな物を尻に敷いてもらって構わない」


「いえ、大切な物を踏みつけるなんて出来ませんよ」


「気にしなくてもいい。どうせもう、汚れている品だ。私には必要ない」


 ハイネさんの声は重く、部屋の照明を付けないと赤色の髪しか分からないくらい暗かった。


 僕はカーテンを開けて、木製の窓を開ける。日はまだ出てきていないが朝焼けが見え始めていた。その光は暗い部屋を少しだけ明るくし、窓を開けたことで空気が入れ替わって少し湿った室内も快適になった。


「眩しい。もぅ日の光をずいぶんと浴びてないからか、眼が焼けそうだ……」


 ハイネさんは目の上に手のひら置き、影を作る。


「ハイネさん。時間もないので簡潔に聴きます」


「ああ。答えられる質問なら答えよう」


「赤色の勇者は過去の記憶を失っていますか? もしくは何かの魔法で記憶を書き換えましたか?」


「なぜ、そう思う……」


「突然性格が変わったり、昔好きだった女の子を覚えていなかったり、列車の事件の記憶は無いのに、黒髪のことを覚えていたり。色々不自然なんです。フレイが嘘をつかないと言う情報も聞きました。ですが、それも本当が怪しい。近くにいたハイネさんになら分かると思って……」


「君はなぜそこまで知っている。黒髪や列車事件の話は世間に出ていないはずだ。もしかして、君はあの列車に乗っていた生き残りなのかい……?」


「はい。そうです。あと、言っておくと、僕は列車にはねられた白髪の青年と同一人物です。奇跡的に助かっていたんですよ」


「そうか……、生きていたのか。じゃあ、黄髪の少女も生きているのか?」


「生きていますよ。あの時はフレイを止めに入ってくれてありがとうございます。ハイネさんだけがフレイを止めてくれたので、とても嬉しかったです」


「だが、私は止められなかった。ルフス領の為に……逆らえなかったんだ。許してほしい」


 ハイネさんは涙を流し始めた。申し訳ない気持ちと不甲斐ない気持ちが混ざり合っているような表情。自分が許せないのか歯を食いしばり、綺麗にまとまっていた髪をぐしゃぐしゃと掻く。


「ハイネさん。別に謝らないでください。ハイネさんは悪くありませんよ。僕が見たところフレイも根は悪い奴じゃないと思うんです。でも何か混沌としているというか、どこか投げやりな印象を受けました。フレイが何人もの無関係な人を焼死させたのは許せませんが、もし何か原因があるのならフレイも被害者の一人になります。ハイネさんなら知っているんじゃありませんか?」


「私は何も知らない。だが、昔の彼なら知っている。今とは全く違う眼をした少年だった。貧民街の出身で幼少の頃は酷い仕打ちを受けていたそうだ。とある騎士家庭に盗みに入り、拘束されたのち、孤児院に移された。私も孤児院の出だからな、孤児院によく通っていたから知っている。フレイは孤児院に入ってから性格が変わった。よく遊ぶようになって一二歳くらいの頃まで好きな子の尻を追っかけてるような青年だった……」


「やっぱり、昔のフレイは普通だったんですね」


「ああ。だが、少女が学園に入るとフレイは孤立した。仕事が出来る訳でもなくただ生きているだけだった時、私はフレイの素質に掛けてみた」


「え……」


「その当時、赤色の勇者が不在のルフス領は他の領土よりも過疎化が進み、治安も悪く、犯罪も横行していた。各領土の勇者と言う存在はとても大きな存在なんだ。王都で言うプルウィウス王のようなものだな」


「王様がいないと国が成り立ちませんからね」


「そうだ。だが、当時のルフス領にはその存在がいなかった。前任者は現領主の祖父だった。元は領主の父が赤色の勇者を務めていたのだが、魔物との混成によって殉職した。今の領主が赤色の勇者になれれば話は早かった。だが、無理だったんだ。私も審査を受けたが……、結果は力不足だった。そんな時、フレイを思い出したんだ」


「髪色ですか?」


「ああ。あれほど赤い髪の者は中々いない。強くなるように育てれば勇者候補になりうると考えたんだ」


「なるほど……」


「私は領主に孤児院にいる少年にあってみてほしいと言って合わせた。フレイは領主に引き取られた。子供として育てようとしたが、フレイは拒否した。今更。子ども扱いするんじゃねえとな。領主は多忙の身だ。私が稽古をつけてやろうと思っても、私が教えられるのは剣術くらいだった。あいつは剣が苦手ですぐに愚痴を言っていた。だから、赤色魔法と戦闘が得意な冒険者の知り合いに訓練をお願いした」


「アイクさんですね……」


「君はアイクも知っているのか?」

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