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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
身なりを整える為に金貨を一〇〇〇枚貯める。

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ロックアントの討伐

「どれくらいなら投げられるかな……」


 僕はレタスほどの岩を持つ。ロックアントのいる岩壁の位置は下から約一五メートル。


「うん、とどきそうだ」


 僕はレタスほどの岩をぐっと握る。


「あっ!」


 僕は力を入れ過ぎて岩を砕いてしまった。その音に反応したのか、ロックアントの群れが僕の方を向く。


「あはは。こんにちは。今日はいいお天気ですね」


 威嚇音を発し、ロックアントの群れが飛びおりてくる。

 ロックアントの体は三つに分かれており、頭、胸、腹、となっている。

 頭と腹は昆虫独特の光沢を放つ外骨格で、胸はレタスほどの岩になっていた。胸の部分が重く、岩の地面が凹むほどだ。


「身長が低いから、戦いにくそうだな。ゴブリンとは勝手が違うぞ……」


 人型のゴブリンとの戦闘はまだ、何とかなった。だが、昆虫型のロックアントに対する戦い方が頭を狙うくらいしかわからない。


「ナイフだと刃が短いから不利だよな。剣を使うか」


 僕はナイフを左腕に着けている鞘にしまい、借り物の剣を引き抜く。戦闘時ともなれば容易く引っこ抜けた。


「頭に刺す、頭を切る、のどっちかだ。敵が一〇匹いても一対一で戦えばいいだけ。行くぞ!」


 僕の背中にはいつも通り黒卵さんがいる。それだけで安心感が半端ではない。

 息を溜めて踏み込むと、地面が凹むほどの加速で一匹のロックアントの前に立った。


 ――剣を突き刺したら地面に当たって剣先が欠けるかもしれない。ここは薙ぎ払う!


「ちょっ!」


 僕は剣を使い慣れていなかったので剣先が地面の岩に当たり、引っ掛かりながら薙ぎ払ってしまった。一匹のロックアントは倒せたが刃こぼれしていないか心配でならない。


「よかった。剣先は無事だ。結構頑丈に作られているんだな。これなら、刃こぼれを気にせずに戦ったほうがすぐに終わりそうだ」


 仲間がやられて怒っているのか、他のロックアントが僕を威嚇してきた。

 ロックアントは硬い岩山に巣を作り、大量に増える魔物だ。この近くにロックアントの巣があるのは間違いない。


「毎回ここに来ればロックアントの群れに出会えるかもしれない。穴場かもな。まずは残りの個体を倒さないと僕の身が危ない」


 一匹のロックアントが猛烈な速度で迫ってきた。僕は剣を構え、先ほどの反省を生かし、地面擦れ擦れを狙って、剣を振るう。

 ロックアントの頭部が切り裂かれ、地面を擦るように停止した。


「よし、二匹目。次は僕から行くよ」


 僕は一度の踏み込みでロックアントの前に移動し、剣を一度振るう。ロックアントを倒したら別の個体に一度の踏み込みで移動、もう一度剣を振るう。という工程を八回ほど繰り返し行い、ロックアントの群れを即座に倒した。


「よし。討伐完了。広い場所だと剣が振りやすい。剣を思いっきり振るのがちょっとしたコツだな。迷いがあると上手いこと振れないみたいだ。さてと、ロックアントの胸部を取って今日のところは帰ろう」


 僕はロックアントを倒した印として一番軽い右の触角を千切りながら麻袋に入れる。一〇本の触角を麻袋に入れ終え、一〇個の胸部を別の麻袋に入れた。一〇個でも結構な重量になり、一〇〇個集めたらどれだけ重くなるのだろうかと少し想像する。


「ま、今日は『赤の岩山』初挑戦だし、上出来かな。今度は洞窟に入れるようにした方が討伐数を増やせそうだ」


 僕は素材を担ぎ『赤の岩山』を出た。その後、入口のすぐ近くにあるルフスギルドの支部に入る。

 建物の中には多くの冒険者がおり、受付さんも多かった。本部の方が空いていると思うくらいの人数で、少し並ばないと行けなそうだ。


 一〇分ほど並び、僕の番がくる。


「えっと、ロックアントの討伐依頼の達成報酬と胸部の買い取りをお願いします」


「承りました。では、ギルドカードを提示してください」


「はい」


 僕はギルドカード(仮)をギルド員のお姉さんに渡す。


「お預かりします」


 受付のお姉さんは僕のギルドカード(仮)を受け取り、魔力を流して概要を確認した。その後、僕が持ってきた素材を確認し、紙に何かを書き込んでいる。


「ロックアントの討伐数一〇体を確認しました。依頼達成となります。一〇体ですので金貨一枚ですが、三割増しで金貨一枚と銀貨三枚の報酬になります」


「ありがとうございます」


「加えて、ロックアントの胸部を一〇個確認しました。どれも状態が良いので銀貨一枚で買い取らせていただきます」


「へぇ……。買い取りと討伐の値段が一緒なんですね」


「ロックアントの胸部は重いですからね。冒険中に重いものを持ち歩くのは危険ですから、討伐だけされて放置される方も多いんです。ロックアントの胸部は風化しやすいので一日もすると崩れてしまいます。そのまま土に帰ってしまうんですけど、その土が武器や研磨材、レンガ、建物の土台に重宝されるんです」


「そう言った使い方があるんですね」


「素材が重くて大変な依頼なのでロックアントの胸部はなかなか持ち込まれません。キースさんが運んできた時は驚きましたよ。胸部一個で五キログラムはありますから全部で五〇キログラムを運んでいたんですよ」


「あ、そんなに重かったんですね。人が一人分くらいの重さだったのか。まぁ、丁度いい鍛錬だと思えば苦じゃありませんよ。明日からも、ロックアントの胸部を持ち込ませてもらいますね」


「ぜひお願いします。ではこちらが報酬の金貨一枚と銀貨三枚です。討伐の依頼と合わせて金貨二枚と銀貨六枚ですね」


「ありがとうございます」


 僕は受付さんから依頼料の入った小袋を貰い、一礼してその場をあとにする。


「さてと、次は本部のギルドに行ってスライム討伐の報告しないと」


 僕は思いっきり走り、馬車を追い抜いてルフスギルドまで三〇分で移動した。

 受付さんにナイフと剣を返し、報酬として金貨六枚と銀貨五枚を貰った。


「今日の報酬は金貨八枚と銀貨一一枚。つまり、金貨九枚と銀貨一枚か。薬草採取よりも少し安いけど、慣れればもっと稼げそうだ。薬草の方は十分な量が手に入ったと言って嬉しがってくれていたし、ロックアントの依頼に変えてよかったかもしれないな」


 僕はギルドをあとにしてすぐさまアイクさんのお店に向った。昼の一二時に到着し、お昼を食べた後、午後から仕事をずっと続けた。

 午後一一時。僕は調理場でホットミルクを飲んでいた。アイクさんは葡萄酒を飲み、夜のお客さんの相手している。その間、少し話しかけてきた。

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