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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
シトラを取り返すために身なりを整える

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カッコいいお酒の飲み方

 ――お酒を飲むとマイアさんみたいに陽気になる人やロミアさんみたいに寝ちゃう人、トーチさんみたいにあまり変わらない人、フランさんみたいにふらふらになってしま人と言った具合にお酒を飲んだあとどうなるのか全然違うんだ。


 僕がお酒を飲んだあとはどうなってしまうのか、楽しみ半分、不安も半分の気持ちだ。


 ――僕もシトラと一緒にお酒を飲みたいな。シトラは酔っぱらっても可愛いだろうなぁ……。『キース、一緒に……寝よ』と誘って来たらもう、最高なんだけど。はぁ……そんなバカげた妄想は忘れよう。妄想などせずとも僕が努力していればいつか訪れる未来だ。シトラが僕のことを好いてくれていたらだけど。


 僕はロミアさんを抱き上げ、マイアさんに肩を貸して歩いている。

 マイアさんもほぼ眠っている状態になっているので、僕に大分もたれ掛かっていた。豊満な胸が腕に当たり、ちょっとしたご褒美感覚で見て見ぬふりをする。


 マイアさんとロミアさんを宿に運んだのはいいものの、僕は二人と意思疎通が取れず、部屋がどこにあるのか聞いても分からない。仕方がないので宿に入り、受付に訊ねた。


「すみません。この宿で四人の女性が止まっている部屋があると思うんですけど、場所を教えてもらってもいいですか?」


「申し訳ございません。犯罪防止のため、他人にお教えすることはできません」


 受付のお姉さんは頭を下げて言った。


「そうですよね……」


 ――僕を信用してくださいと言っても、意味ないからな。二人のどちらかに部屋に案内してもらわないと。


「マイアさん。マイアさん。起きてください。宿に着きましたよ。あとは自分たちの足で部屋まで戻ってください。そうしないと広間(ロビー)で寝る羽目になりますよ」


 僕は宿の広間に置かれている椅子に座る。


「はぁ……。二人の酔いが冷めるまで一緒にいないと危険だよな。たとえ宿の中だとしても何が起こるか分からないし、今の時間は午後一一時か。明日の仕事には間に合うよな。どうせ僕は眠れないし、見張り役としてここで時間を潰すか。いや、こんな時でも魔法の練習は出来る。やる気さえあればいつでもどこでもできるんだ。少しでも強くなるために努力し続けないといけない。こんな時だからこそ、練習するぞ」


 その後、午前二時ごろにロミアさんが目を覚ました。


「うぅ……。ここはぁ……」


「あ、ロミアさん。起きてくれたんですね。よかった……。ロミアさん、自分たちの借りた部屋の番号は覚えていますか?」


「う、うん……。覚えてるよ」


「それなら、マイアさんを連れて部屋に戻ってください」


「わ、わかった」


 ロミアさんは椅子から立ち上がろうとするも足元がふらつき、倒れかける。


「おっと。大丈夫ですか、ロミアさん。気をつけてくださいよ。今、ロミアさんはお酒をたくさん飲んできたんですから、足下がおぼつかないはずです。階段で落ちたりしないでくださいね」


 僕はロミアさんの体を支え、倒れないようにした。その際、大きな胸が右腕に当たり心臓が跳ねる。


「だ、大丈夫だよ。私達が止まっているのは一階だから」


「そうですか。それなら階段から落ちる心配はありませんね」


「うん。私はもう大丈夫だから、心配しないで」


「分かりました。じゃあ、マイアさんを支えて部屋まで戻ってください。鍵をちゃんと掛けないと危ないですからね」


「もぉ、私はそこまでドジじゃないよ」


 ロミアさんはマイアさんに肩を貸して歩いて行った。


「はぁー、疲れた……。お風呂に入りたいけど、アイクさんは今頃寝てるかな。というか、お店閉まっているんじゃ……。いや、アイクさんならまだ起きてるか。急いで戻ろう」


 僕はアイクさんのお店に向って走った。

 お店の明りはまだ付いており、アイクさんが起きているとわかった。


「はぁ、はぁ、はぁ……。よかった。帰って来れた」


「おお、帰ってきたのか。このまま帰ってこないかと思ったぞ」


 アイクさんはグラスに葡萄酒入れ、少しずつ飲みながら夜の静けさに深けていた。


「アイクさん。こんな時間までお酒飲んでいても大丈夫なんですか?」


「俺はもとから酒に強いんだ。加えて飲める量を知っているからな、そこまで飲まなければ酔いつぶれたりはしない。大人の飲みかたっていうのはそいうもんだろ」


「カッコいいですね。僕もいつかカッコよく飲めるようになりたいです」


「少しずつ飲んで行って自分の限界値を知ればいいだけだ。少しずつな。見栄を張って無駄に飲み過ぎるなよ。どうなっても知らないぞ」


「そうですね。酔いつぶれるのはカッコ悪いので少しずつ慣れていきます。まぁ、まだ飲んだ経験はありませんけど」


「自分の好きな時でいいだろ。飲酒はしたくなければしなくていいしな」


「はい。わかっています」


「それより、紳士服を買ったんじゃなかったのか?」


「買いましたけど、仕立てないと綺麗に着れないので一週間後になるそうです」


「そうか。また一週間頑張って仕事しないとな」


「はい。何なら今からでも仕事したい気分です」


「夜中寝なくてもいいなんて羨ましい限りだ。俺は少なからず寝ないと動けないからな。ここのところずっと眠っていないんだろ。それでよく生きていられるな」


「僕にも理由がわからないので治しようがないんですよ。どうやったら治るんですかね?」


「さぁな。だが、体力の減少で眠るのは無理みたいだからな。他の方法で眠るのはどうだ」


「他の方法?」


「睡眠薬とか、魔法とか、そう言った外界から睡眠を促す方法なら眠れるんじゃないか?」


「でも、僕は寝なきゃ死ぬという訳ではないので試さなくていいです」


「そうか。ならいいんだ」


「じゃあ僕は包丁の手入れでもしてきます」


「ああ、そうしたらいい」


 僕は自分の部屋に戻り、包丁を研いだ。毎日少しは手入れをしないと切れ味が落ちてしまう。体も同じ、鍛錬しないと体がなまってしまう、魔法の練習も同じ、練習しないと忘れてしまう。僕は少しずつ変わっていける。でも、フレイとロミアさんの関係はそう簡単には変わらない。


「フレイは記憶を失っている。それか嘘をついている。理由は分からないけど、好きだった相手を完全に忘れるなんてありえない。何かあるはずだ。明日にでも聞きに行ってみるか。ギルドマスターなら何か知っているかもしれない」


 僕はルフスギルドのギルドマスターを思い出してみる。確か……女性だった。それくらいしか思い出せない。


「ギルドマスターがどんな人か知らないけど、聞いてみる価値はあるか。ロミアさんが理由も分からず好きな人に突っぱねられるなんて辛すぎる。もし調べてもフレイが本心で言っているのならロミアさんはどうするんだろう。辛いよな、知ったら。僕が話さなければいいだけか」


 一〇月九日の日曜日になった。

 僕は朝の一通りの仕事をこなし、冒険者の服に着替えてルフスギルドに向う。

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