フレイが女遊びをする理由
「キース君は昔に好きだった女子のことを今でも覚えていますか?」
マイアさんはいきなり僕に質問してきた。
「え……。ま、まぁ。はい」
――今も大好きなんですけどね。
「その子が可愛くなって再開したら嬉しいですか?」
「そりゃあ、嬉しいですね」
――シトラがあれ以上可愛くなってたら、嬉しすぎるよな。露出度のちょっと高いメイド姿になってたりして。あー! ダメダメ。可愛すぎて直視できないよ!
「もし、その子がキース君のことを気にしていると知ったらどうですか?」
「有頂天になりますね!」
――もし、シトラの方から抱き着いてきたら、そりゃあ、一生放さないよー! って言って抱き着くのにな。
「ほら。どうですか、ロミア。普通はこういう反応するはずなんですよ。世の中の男性は好きな女性に好きだと言われたら嬉しいはずなんです。当時のフレイはロミアのことが大好きでしたから、少なからずその気持ちは残っているはずなんですよ。今、フレイが結婚している話は聞きませんし、婚約しているとも、付き合っている彼女がいるとも聞きません」
「夜な夜な、女の人をとっかえひっかえしているって聞いたよ……。うぅ、あの変態馬鹿……」
ロミアさんはお酒の入ったグラスをグイっと傾け、一気に飲む。
「フレイが、女遊びが好きなのは当時から何となく想像できましたけど、お金と権力を手に入れたらあぁも、豹変するとは思いませんでした。でもなぜそんな行動に出るのか考えてみてくださいよ」
「フレイが女遊びする理由? 楽しいからじゃないの?」
「キース君。一人でいて、とても辛い時、どうしてもらいたいですか?」
マイアさんはまたしても僕に質問してきた。
「え……。ん~、誰かといたいかもしれませんね。話が出来る相手にでも一緒にいてほしいと思います」
「じゃあ、話が出来る友達や仲間、家族がいなかったらどうしますか?」
「ん~~。美味しい料理でも食べますかね……」
「それなら、美味しい料理が食べられてどんな話でも聞いてくれる相手のいるお店があったら行きたいですか?」
「そんな場所があるんですか?」
「まぁ、キース君は行った覚えがありませんよね。もし、あったら行きたいですか?」
「そりゃあ、行きたいですね」
「ロミア、これが、フレイが毎晩女遊びをする理由だと思います。ずっと孤独で辛いんですよ。なんせ、プルウィウス王国で七人しかいない勇者のうちの一人なんですから。ルフス領でたった一人、ルフス領に住む五○万人以上の期待と言う重圧を受けているんです。辛くない訳ないわけありません。フレイは信用できる相手がいないんですよ。だからお金で話を聞いてくれる女性で遊んでいるんです」
「そうなのかな。じゃあ何で私に話してくれないんだろう。何でも聞くのに。何でも許すのに。辛いことがあるなら、一緒に耐えてあげるのに……」
「キース君。好きな人に辛いところを見せたいですかね?」
「い、いや……。見せたくありませんよ。どうせならカッコいいところを見てもらいたいです」
――僕も実家にいた時、凄い感じた。こんな姿をシトラに見られたくないって。あのフレイも同じ思いなのか。いや、ただの想像でしかない。根拠が無いのに信じるのは危険だ。
「ほら、男性は好きな人にカッコいいところを見てほしいんですよ。好きな人に自分が辛くて苦しがっているところを見られて嬉しい男の人はいません。フレイも人間ですから例外ではないはずです。全部、赤の他人。本当に好きな人と遊びで付き合う馬鹿な真似する男はいません。なんせ本命なんですから」
「じゃあ、フレイは私のことが好きってこと?」
「そこまでは分かりません。その可能性もあるんです。一度突き放されたくらいでロミアは諦めるんですか?」
「うぅ……。私は……私は……」
「ロミア、無理して付き通す必要もないと思いますけど、酔いが冷めたあとまた落ち着いて考えた方がいいと思います。無理やり答えを出しても意味がありませんからね。ただ、辛いことは全部吐き出してすっきりしてください。男性経験のないロミアの為に男性代表のキース君がいますから、何でも聞いたらいいと思います」
「ちょ! マイアさん!」
マイアさんは僕に無茶な役を押し付けてきた。
――こっちも女性経験は皆無なんですけど!
「じゃあ、キース君。聞いてもいいかな……」
「は、はい。答えられる範囲ならば」
「おっぱいは好き?」
ロミアさんは大きな胸を下から持ち上げ、さらに大きさを強調しながら見せてくる。すると、首筋の汗が肌を伝い、胸の谷間にツーっと流れた。うん……厭らしい。
「大好きです」
「はぁ……。何とも年齢の低い話し合いですね」
☆☆☆☆
その後、ロミアさんとマイアさんはお酒を飲みながら話し合い、僕はただただ話相手に徹する。そのお陰か、無理なくその場にいられた。
女性二人は話が途切れることなく続き、いったいどれだけ話のタネを持っているのだと思わされる。僕だったらあり得ないほど話が早く終わりそうだった。
「それでね~。あの人のあれが私のあれにはちょっと入らなくて、ですね~。もう、痛いのなんのって~」
「えっと、マイアさんは何の話をしているんですか?」
「なんのって着付けの話ですよ~。お母さんのお下がりのドレスを着てみたら胸が入らなくて、無理やり入れて貴族の食事会に出席していたって言う話をしてたんです。分からなかったですか?」
「はい、全くわからなかったですね。というか、マイアさんは酔っぱらい過ぎですよ。宿にそろそろ戻りましょう。夜も深まってきました、夜道は危険ですから」
「わかっていますよ~。でも、ロミアはまだ飲み足りないみたいですよ~。ほら、ほら~。ロミア、飲まないんですか~?」
マイアさんはグラスをロミアさんの頬に押し当てる。
「マイアさん。ロミアさんはもう寝ていますよ。安らかに眠っているんですからそのまま寝かせてあげましょう。僕が運びますから、マイアさんはお金を払って来てください」
「ハーイ。わかりました~」
マイアさんはロミアさんが持っていた金一封を持ち、会計に向う。
「お会計金貨三枚です」
「わかりました~」
マイアさんは金貨三枚を出して会計を終えた。
僕は黒卵さんを背中に担ぎながらロミアさんをお姫様抱っこして運ぶ。
「むにゃむにゃ……」
「ロミア、安らかに寝てますね~。赤ちゃん見たいです~。でもお胸はお牛さんですね~。モミモミ~。はは、柔らかーい」
マイアさんは酔っぱらうと破天荒な性格になるみたいだ。
ロミアさんは大きな胸を揉みしだかれているのに一向に起きる気配がない。




