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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
シトラを取り返すために身なりを整える

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葡萄酒とメインディッシュ

 少ししてアイクさんは鳥のから揚げと野菜サラダを持ってきた。

 エールの二杯目を飲める者は手をあげて、エールはもういいと言う者は唐揚げと野菜をモリモリ食べる。


 僕は唐揚げと野菜をたらふく食べた。他の四人はもう一杯ずつエールを頼み、唐揚げを一口食べたらエールを流し込んで、涙を流しそうな程美味しそうな顔をする。

 その姿を見ると少し僕もやってみたいな、という気持ちに駆られるが、ぐっと我慢した。


「エールと摘まみはこれくらいにして、葡萄酒とメインディッシュにするか。キース以外は皆、いい具合に酔ってきただろ」


 アイクさんは両腕を組み、僕たちの様子を見て、次の段階へ進ませる。


「「「「ハーイ!」」」」


『赤光のルベウス』さん達は子供のように返事していた。


「皆さん、陽気な気分になっているみたいですね……。顔がほてってますよ」


「いいじゃん。いいじゃん。楽しくいこうよ~」


 トーチさんは空になったジョッキを掲げて満面の笑みを浮かべている。


「じゃあ、料理はいつものやつで言いな?」


「「「「よろしくお願いしま~す!」」」」


『赤光のルベウス』さん達の常連具合が垣間見える。


「キースもいつものでいいだろ」


「はい。お願いします」


「わかった、すぐに持ってくる」


 アイクさんは料理場に向い、料理と葡萄酒を持ってきた。

 いつものというのは皆さんが来店して初めに頼んだ料理のことで、アイクさんのお店に来ると、毎回頼んでいる。


 アイクアさんは料理を『赤光のルベウス』さん達の前に置き、綺麗なグラスに葡萄酒を注いでいく。


「キースはブドウジュースな」


「は、はい。構いません」


 アイクさんは綺麗なグラスにブドウジュースを注いでくれた。色だけなら周りの葡萄酒と全く変わらない。ごちゃ混ぜにしたらどれがブドウジュースかわからなくなりそうだ。


 ロミアさんはグラスの取っ手を摘まみ、テーブルから持ち上げる。僕達もロミアさんに合わせてグラスを持ち上げた。


「じゃあ、今日はお疲れさまでした~! 二回目のカンパーイ!」


「「「「カンパーイ!」」」」


 皆、葡萄酒の匂いを楽しんでから、口に少しだけ含み、味わってから飲む。

 僕も真似して果汁なのに、お酒のようにして飲んでみた。

 すると、自分も少しだけ大人になったような気がした。


 僕はお酒が飲める年齢なので、飲んでもいいのだが、アイクさんに言われた自分が本当に飲みたくなった時にしておけという言葉が引っ掛かっており、いつ飲むか考えた。

 なので前々から僕は飲む時を決めている。


 ――僕はシトラを助け出した日に飲むんだ。その日は僕が本当に大人になった日にする。シトラは僕を止めてくるだろうか。

 どうだろう。シトラだからあり得るかもしれない。逆に、祝ってくれるかもしれない。そうだ。僕の成人した日にシトラはもういなかった。祝ってもらないと困る。シトラのいない誕生日なんて、僕の誕生日じゃなかったんだ。


 僕はシトラのことを思いながらブドウジュースを飲んだ。どこか大人な味がする。良いブドウジュースなのか、ほのかに渋い。だが、その渋さが深かった。

 ブドウの香りで先ほどのから揚げを消し去ったあと、鶏の照り焼きを食べる。

 肉の中で鶏が一番好きかもしれない。というか、アイクさんのお店に来て食べた肉はほぼ鶏だったと思う。鶏は鶏で美味しいのだが、牛や豚も食べてみたい。今は鶏肉を食べる。


 エールを飲んでいる時は皆、少し大きな声を出して放していたのに葡萄酒とメインディッシュを食べ始めると落ち着いた雰囲気になって食事が心地よく感じる。


「ふぅ~。この葡萄酒、凄く美味しい。料理に良く合うよ」


 トーチさんは葡萄酒をグイっと飲み干し、料理をパクパクと食べる。


「葡萄酒は久々に飲みましたけど、すっきりして美味しいですね。甘すぎないのも料理に合ってとても気持ちよく飲めます」


 マイアさんはグラスをクルクルと回し、葡萄酒を上品に飲んでから料理を少しずつ食べる。


「肉を食って葡萄酒で流し込むっす。これ凄く美味いっす!」


 フランさんは料理を口に含みながら葡萄酒を飲み、一緒に食べている。


「はぁ~。落ち着くな~。ほんとに凄い落ち着くお店だよね。一等地なだけあって食べに来る人は皆、紳士淑女だし、他の冒険者も場を弁えてるって感じ~」


 ロミアさんは料理と葡萄酒を交互にたしなんでいた。


「そうですね。アイクさんが厳しい人なので皆、怖がっているんですよ。荒くれ者の冒険者さんでもお腹は空きますからね、安い値段でお腹いっぱい食べてもらうと文句が言えなくなるんです。なので怒る人がいないんですよ」


「なるほど。さすがアイクさんのお店。それにしても、食べて飲んで、丁度いいくらいになってきたよ~」


 トーチさんは熱った顔を手で仰ぎ、熱を冷まそうとしている。


「私もです。こんなに丁度いいくらいに酔っぱらえるものなんですね」


 マイアさんは首元のドレスに指を掛け、熱を逃がしていた。


「もう、満腹っすー。ベロベロの一歩手前っすー。でも、ここが丁度いいっすー」


 フランさんはテーブルに突っ伏してぽけ~っとしており、眠たそうにしていた。


「私も大満足。すごくたのしかった~。これでいくらなの?」


 ロミアさんはテーブルに置いてある料金が記載されている紙を見た。


「金貨二枚……。や、安い」


「一人銀貨四枚くらいの値段ですね」


「こんなに安くていいのかな……」


 ロミアさんは金一封を開けて、中を見る。


 手に出してみると金貨一〇枚入っていた。余裕で支払える。


「じゃあ、先に金貨二枚をしはらってきまーす」


「まだデザートがあるので帰っちゃだめですよ」


「「「「え?」」」」


 僕が皆さんに声をかけると固まってしまった。


「え? って、言われても、デザートが付いているんですよ」


「あれで終わりじゃなかったんだ。というか、デザートまで付いて金貨二枚って、ちょっと破格すぎない……」


 トーチさんは驚きと嬉しさの混とんとした表情を浮かべている。


「ほんとですね。あれだけ飲み食いしたのに、デザートまで付いてくるなんて、凄いです」


 マイアさんは少し乱れていた服装を直し、気合いを入れていた。


「甘い菓子は大好物っすー。アイクさんのお菓子食べたいっすー」


 フランさんは子供のようにはしゃぎ、手をブンブンと振っている。


「で、デザート。なんだろう。たのしみだな~」


 ロミアさんはもう既に甘いものを食べているのではないかというほど、幸せそうな顔をしていた。


 ――女の人は甘いものが好きなんだな。僕も好きだけど、飛んで喜んだりはしない。まぁ、シトラなら喜んだだろうな。シトラは甘いの大好きだったから。僕だけ、こんなに良いもの食べてていいのかな。ルフス領の領主にちゃんと良い料理食べさせてもらっているんだろうか。


 僕は領主邸の大きさを思い出し、少し不安になる。


 ――どうしよう、逆にこの上ないくらい良い生活していて、領主の下から離れたくないなんて言われたら……。もし、酔っぱらった勢いで……領主と一夜を共にしてたら……。うわああ!!


 僕は心の中でシトラのあられもない姿を想像してしまう。

 最悪の想像をした僕はテーブルに頭突きして幻想を忘れようとする。

 だが、そんな簡単に嫌な想像は消えない。

 不覚にもシトラの生まれた姿を見てしまった。そのせいで、領主とあんなことやそんなことをしている場面を優に想像できてしまうのだ。

 想像するたびに不安な気持ちになり、領主邸に乗り込んでシトラを奪い返そうかと考えるが、そうなったら僕の方が圧倒的に不利だと理性が踏み止めてくれる。


 シトラを人質に取られたら勝てるわけがない。

 最善の策は領主にシトラの権利を僕に移させること。それが出来れば、シトラは僕のもとに戻ってくる。絶対に助けに行くから、あと少しだけ待っていてくれ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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