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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
シトラを取り返すために身なりを整える

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力比べ大会、女の部

「キース。肘は大丈夫なのか?」


「は、はい。もう治ったみたいです」


「は? 嘘つくなよ」


 エルツさんは僕の右ひじに視線を向け、両手で触ってくる。


「ほ、ほんとに治っているのか?」


「はい。この通りです」


 僕は革袋を右手で持って上げ下げする。


「本当に治っていたのか……。どうなっているんだ、お前の体」


「僕にもわからないんですから説明何てできませんよ」


「そうか。そりゃあ、無理だわな」


 エルツさんは立ち上がり、病院をあとにする。

 料金は紅葉祭の運営が出すそうだ。なので僕はお金を払わなくてもいいらしい。


「それで、これからどうする? 俺は会場に戻るが、キースは戻りにくいだろ」


「でも、フレイに負けたら顔を見せろと言われてしまったので……嫌ですけど見せに行きます」


「お前はほんとに律儀だな。きっとフレイは勝利の喜びで記憶を飛ばしているだろうに」


「だとしても、約束は果たさないと気持ち悪いですから」


「そうか。なら、行こうぜ」


「はい」


 僕はエルツさんについていき、力比べ大会会場に戻る。


「うおおおおおおおおおお!」


 会場の空気は僕とフレイの時と大差ない盛り上がりを見せていた。


「負けないっすよ!」

「私だって!」


 舞台が壊れてしまったため、広場の地面に台を置き、綺麗な服を着ている女性たちが腕っぷしを競い合っていた。

 その中にフランさんとロミアさんの姿もあった。


「な、何だ、この状況……」


「いや~、今年も盛り上がっているな。女の部。やはり綺麗な姉ちゃんたちが競い合うのを見るのは面白いぜ」


 エルツさんは強い女性が好みなのか、品定めするような眼で戦いを見ていた。確かに、カッコよくはあるけど、女性らしさの欠片も感じられない。

 あるとしたら大きな胸が体と台に挟まれてちょっと厭らしく見えるくらいだ。


「あ、キース君、木箱とったんだね。そこじゃあ、見にくいでしょ、こっちこっち~」


 トーチさんは観客席の方で僕に手を振っていた。


「トーチさん。えっと、その……」


「行ってこいよ。フレイにならまたすぐに会えるだろ」


 エルツさんは僕の背中を押す。


「わ、わかりました」


 僕は観客席で女同士の戦いを見守るトーチさんとマイアさんのもとに向った。


「トーチさんとマイアさんは出場しなかったんですか?」


「私達は一回戦負けだよ。だって、私は魔法使いだし」


「私は筋力よりも技術派ですから」


 二人は苦笑して女らしさを捨てきれなかったと言った表情をした。わからなくもない。


「フランさんとロミアさん。運悪く当たっちゃいましたね」


「そうだね。でも、フランの方が腕っぷしは強いから、フランが勝つでしょうね」


「そうですかね。私は愛の力が勝つと思いますけど」


 トーチさんとマイアさんは一瞬睨み合ったあと、二人の戦いの行く末を見守っていた。


「あの、マイアさん、愛の力って言うのはどういう意味でしょうか?」


「え……。まぁ、言うなれば性欲? ん~っと、気になる人に見てもらいたいとか。そう言う類ですかね。ロミアはフレイに気があるわけですけど、全く振り向いてもらえない訳ですよ。だったら、大会で優勝すれば目立ちますから、見てもらえますよね。だから頑張って勝とうとしている訳です」


「なるほど……。フレイって、強い女性が好きなんですかね?」


「さ、さぁ……、どうでしょうね。あ、でも、ルフス領では腕っぷしの強い女性は人気ありますよ。貧乳の美人と同格だと思います。まぁ、巨乳の美人には負けますけどね」


 マイアさんはトーチさんの方を向いて勝ち誇った表情をした。


「な、なによ。あ、今、私の胸見て勝ち誇ったでしょ! このデカ乳野郎!」


 トーチさんはマイアさんの大きな胸を持ち上げて弄っていた。

 僕に刺激が強すぎるので、眼を手で覆い隠す。


「やーんもう。負け惜しみはみっともないぞー。リーダー」


「ぐぬぬー、言わせておけば……」


「まぁ、まぁ、二人とも落ち着いてくださいよ。こんなところで言いあっていたら目立ちますから」


 僕は二人の間に入り、喧嘩を止めさせる。


「キース君はお胸が大きな女性と小さな女性だったらどっちがいいですか?」


 マイアさんから、いきなり物凄い質問が飛んできた。加えて圧力を掛けてくる。


「どっちもは、なしだからね」


 トーチさんも僕にじりじりと寄ってきて、ちょっと泣きそうな顔で言ってきた。

 どうも僕の答えがわかっているかのようだった。


 ――どうしよう。僕、胸とか関係なしにシトラを好きになったからな。昔のシトラはまっ平だったけど、今は豊満だし……。どっちもありと言えばありなんだよな。好きな人の胸が平らだろうが大きかろうが僕には二の次だ。一番は相手がシトラであるということのみ。


「しいて言うなら、僕は……好きになった相手の大きさが好きです。きっと大きくても小さくてもどっちでも構わないんですよ。だって本当に好きな人以外に振り向かれても困りますよね。ましてや、体目当てなんて最悪です。僕は性格第一主義、体は二の次、三の次って感じですね」


「うぐ……。一五歳にして何と完璧な回答……」

「私達の方が恥ずかしくなってきました……」


 トーチさんとマイアさんは二人で塞ぎこみ、しくしくと泣いている。


 ――結果として二人の喧嘩を止められたから良かったのかな。

 

 二人とこんなやり取りをしている間に、フランさんとロミアさんの戦いに決着がついていた。


「はぁ、はぁ、はぁ、やった。やったぁ、やったー!」


「はぁ、はぁ、はぁ……。負けたっす。まさか、ロミアがここまで粘り強いとは思ってなかったっす。作戦負けっす……」


 どうやらロミアさんがフランさんを下し、勝利したみたいだ。

 女性の参加者も多く、四組に分かれており、ロミアさんは三組目で一番になったため、準決勝に進んだ。


「凄いですねロミアさん。準決勝に進むと思いませんでしたよ! ぜひ次も頑張ってくださいね!」


 進行役の女性もロミアさんが準決勝に進むことに驚いているらしく、興奮していた。


「はは……。私も思わなかったですよ。まさかここまで残れるなんて……」


 ロミアさんは照れながら頭を描いていた。


「ロミア、ここまで来たら優勝しちゃいなさいよ!」


 トーチさんは観客席から線をまたいだ向こう側にいるロミアさんを応援する。


「も、もちろん。最後まで頑張るよ」


 ロミアさんは胸の前で両手を握り気合いを入れた。

 だが、残っている他の三人の女性は明らかにロミアさんよりも強そうだった。

 筋肉質で、高ランクの冒険者なのではないかと思うほどの風貌で、僕も怖気づく。

 筋骨隆々の女戦士達の中にロミアさんが紛れていると、場違い感が凄い。

 僕の時も相当場違いだったが、ロミアさんの方がもっと場違いだ。

 ただ、ロミアさんは他の三人に体格で勝るフランさんを倒している。


 勝ち目はあるかもしれない。

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