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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
シトラを取り返すために身なりを整える

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折れた右腕

 どうやら僕の腕は限界を超えてしまったらしく、肘から壊れてしまったらしい。

 本来は曲がらない方向に肘が曲がってしまい、右腕が折れた。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」


 バキバキに壊れた床に僕の右手の甲が付いている状態を大勢の者に見られる。


「しょ、勝者……。フレイ・ルブルム様……」


 進行役の女性が呟く。


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 観客の声は今日一番大きくなり、舞台が吹っ飛びそうな感覚を得た。


「しゃあああああああああああああああ!」


 フレイは僕の手を放し、立ち上がって叫んだ。

 僕は痛みを感じ、肘を庇うように立ち上がる。


「す、すぐ救護班のもとに行くぞ」


「は、はい」


 エルツさんが舞台に上がって来てくれて僕をお姫様抱っこして舞台を下りる。


「エルツさん、大会の進行はどうしましょう」


 進行役の女性がエルツさんに聞く。


「このまま進めて男の部の優勝者に賞金を与えろ。その後、女の部に入れ。俺はこいつを救護班に連れて行く」


「ですが、舞台がバキバキに割れてしまっていますよ」


「地面に他の台を置いてやればいいだろ。あとは頼んだ」


「は、はい。わかりました」


 僕とエルツさんは広場を離れ、救護班がいるという病院に向った。

 僕は背負っていた革袋をお腹に置き、息苦しかったので木箱を取る。


「はぁ、はぁ、はぁ……。つ、疲れた……」


「おいおい。先に出てくる言葉が『疲れた』かよ。どう考えても『痛い』だろうが」


「確かに痛いですけど、いい勝負が出来たので、満足感の方が大きいんです」


「多くの者がフレイを応援する中、よくあそこまで戦ったな。カッコよかったぜ」


「はは……。結局最後は骨が折れて負けてしまいました」


「骨が折れちまったら、仕方ないだろ」


「でも、負けは負けです。今回の敗因は僕の骨が弱かった。体が力に耐えられなかったんですよ。フレイは力を出しても体が仕上がっていたから、骨が折れなかった。ただそれだけです」


「キース。お前、腕からの出血もひどいが、口からも出血しているぞ」


 僕はエルツさんに言われ、左手を口元に持っていく。

 左手には真っ赤な血が付いていた。


「うわ……、本当だ。血が出てる。噛み締めすぎたのかな」


「反応が薄いな。本当に痛みを感じているのか?」


「はい。ちゃんと痛いですよ。腕を焼かれるよりは痛くないので何とか耐えられます。腕が取れてなくて本当によかった……。片腕じゃ、お金を稼ぐのに支障をきたしますから」


 ――シトラにあった時、右腕がなかったら驚かれるどころじゃないよな……。


「腕がもげても、すぐ持っていけば『緑色魔法』でくっ付けられるはずだ。まだくっ付いているのなら、問題なく治るはずだから心配するな」


「魔法ってすごいんですね。僕にもそんな力があれば家族を失わずに済んだのにな……」


 ――少なくとも三原色の魔力を一つでも持っていれば、家から捨てられずに済んだだろうな。


「いや、感想が重いな。だが、今のキースはあのフレイと互角にやり合えるだけの力があるじゃないか。なかなか凄い力だったぞ」


「自分では実感がないんです。凄かったと言われても僕はよくわかりません」


「そうか。だが、俺の眼から見たら凄かった。なら、他のやつらが見ても凄いと思うだろ。何たって俺は元Aランク冒険者だからな。あのアイクと一緒に冒険してたんだ。実力は折り紙付きだぜ」


「フレイとほぼ互角でしたもんね。多くの人が凄い盛り上がってたのでよく覚えていますよ」


「久々に本気を出せたんだが負けたな。あいつ、いつの間にか強くなりやがって。ただ、酒を飲んで女遊びだけをしていたわけじゃなかったんだな」


「そうみたいですね」


 エルツさんは僕が肘の痛みに注意がいかないよう話しかけ続けてくれた。

 その為、病院に着くまで痛みをほとんど感じず、治っているのではないかとさえ思った。

 病院の中に入り、僕は医者に肘を診察してもらう。


「治ってますね」


「え……?」


 僕の肘は治っていた。

 肘からぶら下がっていた前腕部が何ともなかったかのように動かせる。

 僕は信じられず、右ひじを曲げたり伸ばしたり、何度も繰り返していた。


「えっと、本当に折れてたんですか?」


 医者は僕を疑うような眼で見てきた。


「は、はい。腕に血がついてますし、診察室の前で待っている方も僕の腕が折れているのを見ているので確かに折れていました」


「折れていた腕がたった一五分程度で治るなんて……。いったいどんな体をしているんですか?」


「いや、僕にそんなこと言われても困りますよ。何なら僕の方が聞きたいんですけど」


「白髪なので三原色の魔力は持っていませんよね?」


「は、はい」


「なら、無色の魔力が異常に多いのかもしれませんね。魔力が多ければその分、体の直りも速いと聞きます。本当かどうかは定かではありませんが、過去の文献にはそう記されていますね。その時の該当者は藍色の勇者様でしたから重なる部分は断定できませんけど……」


「そうなんですか。でも、僕は魔法が全く使えないんですよ。魔力が多ければ生活魔法くらい使えますよね?」


「一般的な生活魔法は微量の魔力で使用できますから、大量の魔力と相性が悪いんですよ」


「そ、そうなんですか。毎日二時間練習しても一向に生活魔法が使えないんです」


「なるほど……。あなたの体内は大量の無色の魔力であふれているのかもしれません。そうなった理由に思い当たる節はありませんか?」


「ま、まぁ……。なくもないんですけど、本当かどうかわからなくて」


「原因がわからなければ体がなぜおかしくなっているのか判断できません。お教え願えますか?」


「言っても信じてもらえるかどうか分かりませんよ」


「嘘か誠かを判断するのは私ですから、ご自由にどうぞ」


 僕は緑髪の医者に黒卵さんのことを話した。


「何ともまぁ……。面白い嘘ですね」


「はは……。ですよね」


 もちろん信じてもらえなかった。

 まぁ、ドラゴンの卵と僕は会話したと言ったあたりから、僕の頭がおかしいのではないのかと疑われた。

 医者から別の病院を紹介されたが、僕は低調にお断りして診察室を出る。

 僕が病院に来てやってもらったのは口元と肘に着いた血を拭いてもらっただけ。あと、話を聞いてもらったけど、別に医者に話をする必要はなかった。


 僕は医者から異常者のような目を向けられた。だが、それは仕方ないと自分でも分かる。僕も卵と話したという人がいたら大丈夫か? と心配の方が大きい。おお! 凄いな! とはならない。


 僕は恥ずかしさから黒卵さんの入った革袋を抱きかかえて診察室をさっさと出る。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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[一言] いずれは類友でぶっ飛んだ医者が登場して信じてくれる?
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