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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
シトラを取り返すために身なりを整える

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力比べ大会、決勝戦 フレイ対キース 前編

「わかりました。フレイさんが勝ったら、僕はあなたに顔を曝しましょう。でも、僕が勝ったらあなたに質問させてほしい」


 僕はフレイに勝利報酬を求めた。


「は? なんだ、その条件。だがまぁ、俺が負けるなんて天地がひっくり返ってもありえね。いいぜ、木箱野郎の条件に乗ってやるよ。お前が俺に勝ったら、なんにでも答えてやる」


 フレイは自信に満ち溢れており、本当に負ける気がなさそうだ。


「よし。なら、やろう……」


 僕は台に肘を着ける。


「おいおい、俺に勝つ気かよ。舐めやがって、この三下が!」


 フレイは大声を出しながら台に肘をドンっと着けて僕の右掌を握った。


「ぐっつ! お前!」


 フレイは僕の右手を握るや否や一瞬で顔色を変え、うぶ毛を逆立てる。


「はっ!」

「あっつ……」


 フレイは背中から魔力を放出し、会場一帯に熱波を放った。

 僕の体は一カ月ぶりに死の恐怖を思い出し、震えだす。だが、初めて相対した時とは、感じる気持ちが違った。


「ちょ、フレイ様。魔力の使用は禁止ですよ!」


「うるっせえ! 木箱野郎も魔力を使ってるんだ! お相子だろ!」


 フレイは進行役の女性に怒鳴る。


「え……。そ、そうなの?」


 ――僕が魔力を使っている? そうなのか? でも『フレイは嘘をつかない』と、アイクさんとロミアさんが言っていた。なら、僕は無意識に魔力を使ってしまっていたのか。

 そう言われても、僕は魔力の押さえ方がわからないし、どうしようもないな……。


 僕はフレイに合わせることにした。


「す、すいません。僕、フレイさんと戦うとなると緊張しちゃって……。魔力を使っちゃってたみたいです」


「なら、両者共に魔力を抑えてください」


「いや、このままやる! 握っただけで分かる! 木箱野郎は強い! 強い奴とは全力で勝負するのが俺の流儀だ! 女ごときが邪魔するんじゃねえ!」


 フレイは左手を進行役の女性に向けた。この顔は女性を殺す顔だ。


「止めろ!」


 僕はフレイの右手を思いっきり握る。


「ぐううううああ!」


 フレイは痛みで左手を下げざるを得なかったみたいだ。


「進行役の方、舞台から早く降りてください。ここからは僕達の戦いです!」


「は、はい。わかりました」


 進行役の女性は舞台から降り、出場者たちと一緒に僕達を見た。


「おいおい、なに勝手に力を入れてるんだよ……。おらあっ!」


 フレイは僕に負けじと右手を握りつぶそうとしてきた。人間の握力で手が拉げるのかと疑問に思ったが、今、フレイは魔力を使っている。魔力を使っているのなら、あり得なくもないと僕は思い直した。


 ――フレイの魔力量は勇者でも上位。そりゃあ、魔力を全身に巡らせた状態で僕の手を握れば、骨を砕くことくらい簡単か。でも『橙色魔法:身体強化』を使っていないだけましだな。使われてたら、僕の右手は拉げるどころか多分潰されている。


「さぁ、始めようぜ……。俺が三秒前から、合図を出す。ゼロになったら戦(殺し合い)の始まりだ」


「わ、わかった……。ここからは真剣勝負。勝っても負けても恨みっこなし……」


「俺が負けるわけねえだろ。木箱野郎が勝つ未来なんてねえんだよ!」


 フレイは元から赤い瞳を更に真っ赤にして僕を睨みつけていた。


「行くぞ。三、二,一,……ゼロ!」


「はっ!!」


「おらっ!!」


 僕とフレイが力を加えた瞬間、舞台の辺り一帯に強風が吹いた。

 僕達を中心として半球状に強風が広がったらしく、観客は帽子やスカートを手で押さえ、風の影響を何とか受け流していた。


 僕とフレイの力は互角だった。

 僕の方はまだ疲れていない。だが、フレイの方は顔全体に大きな汗の雫がぽつぽつと出現し、顎の方に滴る。


 ――今なら何かを質問できる。フレイが答えるか分からないが質問できるのなら、しておいた方が多くの情報を得られる。だけど、いったい何を質問したらいいのか、僕には分からない。それなら、ロミアさんのことをどう思っているのか聞こうか。いや、それはロミアさんが自分で何とかするはずだ。もっと、革新を着ける質問……。そうだ!


「フレイさんは……、白髪の青年を見た覚えがあるか……?」


「白髪の青年だと……。知らねえよ。そんな奴!」


 ――フレイは僕のことを覚えていない。これは好都合だ。ここで白髪を見せても、僕はフレイと初対面になる。あの時、殺した少年と少女の容姿すら覚えていないなんて……。記憶はどうなっているんだよ。


「白髪は知らないが、黒髪なら見たぜ……。俺はあいつをぶっ殺すためにルフス領に残っているんだ。もし、黒髪を見つけたら教えろ。報酬で金といい女をくれてやる」


「なぜ黒髪がルフス領にいるとわかるんだ……」


「黒髪がルフス領行の列車に乗っていたらしいからな、遅かれ早かれここにやって来るだろ。そいつを叩き潰す。だが、今はお前だ!」


 フレイは魔力を一気に解放し、全身の力を右手に込めてきた。


 ――乗っていたらしい。フレイの答え方は疑問形。つまり、フレイの記憶があいまいになっているのか。確かにあれだけ魔力が暴走していたら、記憶もあいまいになるよな。だが、フレイが黒髪の僕と会っていたと記憶しているのは事実。それを誰かが列車に乗っていたと教える必要があるよな。いったい誰がフレイに黒髪が列車に乗っていたと言ったんだ……。


「その話をどこで聞いた!」


「ギルドマスターの女だ。あいつは俺の奴隷みたいなもんだからな。何でも言うこと聞いてくれるんだぜ。だが、もう飽きちまったからな、お前が俺に勝ったらくれてやろう。この状況から、巻き返せるのならな!」


 フレイの体から列車のような轟音が鳴り響く。その音が速くなるにつれてフレイの力は増大していった。

 僕の右手の甲が台擦れ擦れにまで追いつめられる。


「くっ……!」


「おらおらおら! このままだと台に手の甲が付いちまうぜ!」


 大きな軋み音が鳴り、台に大きな亀裂が走る。

 僕とフレイが戦っていた台が僕達の力に負け、台の中央から真っ二つに割れた。

 僕達は未だに手を握り合っており、フレイは台が無くなってもお構いなしに、僕の右手の甲を舞台の床に叩きつけようとしてくる。


 僕は咄嗟に身を引くして、舞台の床に肘を着け、力を入れて堪える。


 フレイも肘を舞台の床に潔く着けて低い体勢での力の比べ合いが再開された。


「うおおおおおおおおおお!」


 戦いが続行されると周りの観衆は大盛り上がり。

 舞台の周りに強風が吹き荒れるほどの対流が起こり、会場を包んでいく。

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