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三原色の魔力を持っていない無能な僕に、最後に投げつけられたのがドラゴンの卵だった件。〈家無し、仕事無し、貯金無し。それでも家族を助け出す〉  作者: コヨコヨ
シトラを取り返すために身なりを整える

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お祭りの楽しみ方

「キース君も紅葉祭に来たの?」


 ロミアさんは僕に質問してきた。


「こ、紅葉祭。あ、そう言えばアイクさんがそんな単語を言っていた気がする。僕、紅葉祭っていうのがよくわかっていないんですよね」


「え! キース君、紅葉祭を知らないの! ルフス領では有名なお祭りなんだけどな……」


「ルフス領に来てまだ日が浅いので概要は知りませんでした。やけに人が多いと思ったらお祭りだったんですね」


「そうだよ。紅葉祭はルフス領の発展と抱負を祈願するお祭りなの。一〇月の間、ずっと開催されるんだよ。一〇月一日から始まっていたんだけど土日がお休みの人が多いから、今日は凄い人数になっているみたいだね。かく言う私も他の三人と待ち合わせしている訳だし」


「今日は冒険者の仕事をお休みにしているというわけですね」


「うん、今日はお休みして皆で楽しもうって話をしてたんだよ」


「なるほど、楽しそうで何よりです。それにしても、服装が真っ赤ですね。とてもよく似合っています」


「ほんと、ありがとう。紅葉祭は赤と黄の服装でまとめるのが通の楽しみ方なんだよ~」


 ロミアさんはくるっと回って赤色のワンピースをはためかせた。

 短い赤髪も黄色い髪留めで綺麗にまとまっており、髪型が崩れない。

 ロミアさんのしなやかでふっくらとした太ももとお尻の曲線がちらっと見えて僕の心臓が跳ねる。


「あ、みんな~! こっちこっち~!」


 ロミアさんのもとに、トーチさんとマイアさん、フランさんがやってきた。

 皆、髪色と合わせた衣装を着ている。


「おーい、ロミア。お待たせ」


 トーチさんは赤色で地面擦れ擦れのスカートドレスを着ていた。

 すらっとした体形が映えており、真っ赤なドレスにも拘わらず、穏やかな印象だった。

 加えて赤色の長い髪を編み込み、黄色い髪留めで頭にすっきりと納めていた。


「あれ、キース君。こんなところで偶然ですね」


 マイアさんは黄色のミニドレスを着ており、太ももが見えてしまうほど短い丈しかスカートがないので結構破廉恥だった。

 マイアさんが際どい服を着るとは思っておらず、ちょっとドキッとした。


「冒険者の服装ということは、依頼の帰りっすか?」


 フランさんは黄色の短い髪に赤い宝石を使った装飾品を髪留めに使用しており、男っぽさが抜けている。

 加えて、身長が高いため、丈の長い黄色のドレスと相性が良く、女性らしさが上がっていた。


「皆さん、とてもよく似合っていますね。僕は場違い感が凄いです」


 僕は自分の着ている真っ黒な冒険者服を見て苦笑いを浮かべた。


「男の人はあまり服装を大事にしていないから、キース君の服装は別に変じゃないよ」


 トーチさんは笑顔で言ってくれたので、場違いなのではないかと思っていた僕は少し安心する。


「キース君も一緒にお店を回る? 女子ばっかりだけど私達は全然いいよ」


「あ、ありがとうございます。でも、僕は輪に入りにくいので、遠慮しておきます」


「気にしなくてもいいのに。まぁ、無理にとは言わないけどさ。それじゃあ、キース君も祭り楽しんでね」


「は、はい。楽しみます……」


 トーチさんは僕の前を通り過ぎて、繁華街の大通に向った。


「じゃあね、キース君」


「またどこかで合ったら声かけてくださいね」


「屋台の料理、全部美味いっすから、食べまくるといいっす」


 ロミアさん、マイアさん、フランさんも僕に一声かけてくれたあと、トーチさんについていった。


「楽しんでね、か……。僕、祭りに来るの初めてだし、楽しみ方が良く分からないんだよな。お金は全部紳士服を買うときに使ってしまった。買い食いも出来ない。じゃあ、いったい何を楽しめばいいんだ」


 僕はとりあえず、繁華街をぶらぶらと歩いてみることにした。

 街を散歩するのは好きだったので、散歩感覚で繁華街を歩く。


「よく見渡せば、綺麗な服を着た人が多いな。加えて、男性と女性合わせた二人組が多い。そりゃそうか、お祭りだもの。恋人同士で来るのが楽しいのかも。いいな。僕もシトラと一緒にお店を回りたかったな。シトラだったらどんな服装でも似合うだろうな」


 僕は頭の中のシトラに、大量の服装を着せていく。

 それはもう、着せ替え人形のようにシトラを脳内で思い出していた。


「赤色のドレスは白い肌が映えそうだ。黄色いドレスは銀の髪と調和して安定しそう。胸元を広々と開けて少し大人っぽく……。スカートも少し短めにして……、エヘヘ。って、いかんいかん。妄想が止まらないよ」


 僕は頭を横に振って破廉恥な姿になっているシトラを振り払った。

 この場にいると、自分一人なのが少し寂しくなってしまうので、早めに抜けたかった。

 そんな時、高台から多くの人に大声で言伝が放たれる。


「さっ! 毎年恒例となってまいりました、ルフス領きっての力自慢が参加する、力比べ大会が間もなく開催されます。力と力がぶつかり合い、周りが熱狂するルフス領男児ならば参加せずにはいられない大会です!」


「な、なんだ……」


「最後まで勝ち進んだ者には金一封が送られます。今年は昨年の二倍の金額が包まれているそうですよ。今も、参加を受け付けております。参加希望者は繁華街中央にある、紅葉祭運営本部にまで足をお運びください。数多くの力自慢を前年度優勝者けん、大会発案者のエルツさんがお待ちしております」


「力比べ大会か……。エルツさんが優勝者なんだ。って! エルツさん!」


 僕はエルツさんと言う名前が混じっていたのに今、気付いた。


「エルツさんが前回大会の優勝者。僕、エルツさんとこの前力比べして勝ったんだよな。あの時は不意打ちみたいになっちゃったから、申し訳なかった。お祭りに来て何もしないで帰るのはもったいないし、僕も出てみようかな」


 僕はお祭りの楽しみ方を見つけた。


「でもあまり目立ちたくないからな。何か髪色でも変えられる物ないかな。それか、隠せるような帽子でもいいんだけど。あ、僕お金ないんだ。このままじゃ、髪を隠せる物があっても買えないな。自分の血で赤く染めるか。いや、さすがにないな」


 僕は繁華街の中央にある広場に向った。


 ☆☆☆☆


 広場には多くの屈強な男たちが、撥水加工が施された黄色の幕が張られた集会用天幕の下に向っている。

 皆、ルフス領の力自慢なのか凄い熱気を感じる。

 その場に二本の列が出来ており、男性と女性で別れていた。どうやら、女性専用の大会もあるらしい。僕は屈強な男性の列に並ぶ。

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