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平民の私が美女揃いの勇者オーディションに手違いで参加できたのですが何故か貴族の娘に絡まれます  作者: 剃り残し


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世論

 別荘に戻ると風呂場に直行した。


 汗を流したいのもあったけど、血もべったりついていたので早く洗いたかったからだ。


 頭の怪我をピオニーに治療してもらったりとやる事が山積みだったので、結局皆で風呂に入ることになったのだが、リリィはなぜか部屋に籠もって出てこなかった。


 四人で風呂に入ったが、ピオニーの治癒に時間がかかるらしく、ランとネリネはさっさと先に出ていってしまった。


 ピオニーとは仲が良くも悪くもないので二人っきりになるのは若干気まずい。ピオニーは治癒に集中しているのか、二人になった途端黙りこくってしまった。


「ピオニー、これっていつまで続くの?」


 ずっと湯船に浸かっているとのぼせそうなので、半身浴をしながらピオニーに治癒をしてもらっている。さすがに沈黙に耐えきれず、適当な話を振ってみた。


「あ……ごめんなさい。あと十分くらいかな。お姉ちゃんみたいに一瞬では治せないのよ。でも、私の方が普通なのよ。お姉ちゃんが凄すぎるだけ」


 全身をボコボコに痛めつけられた時にメリアが治してくれたが、あの時はすぐに全身の傷が癒えていた。変な副作用もあるので、どっちが良いとは一概には言えないけれど、一刻を争うような戦いの最中ならメリアの方に軍配が上がりそうだ。


「可愛いピアスね。どこかで見た事あるような……」


「き……気のせいよ! うんうん。私がつけているのを何度か見たからそう思うだけ!」


 一度話し始めると緊張が解けたように口を開いてくれるが、あまり好ましくない話題だった。適当に逸らしていると、誰かが脱衣所に入ってきた音がして、二人で同時に振り向く。


「あら。まだ入っていたのね」


 髪をまとめ上げたリリィがタオルも持たずに入ってきた。一人でゆっくりと浸かるつもりだったのだろうけど、私達を見ても驚きもせずに隣に座ってきた。左にピオニー、右にリリィで挟まれる形になった。


「あれ? 二人のピアスってお揃い? よく見たら両方そうなのね。そういえば同じチームになった事がないのに二人はやけに仲が良いし……」


 妙に察しの悪いところはメリアにそっくりらしい。気を抜いていて忘れていたけれど、リリィが髪を上げているせいでピアスがガッツリと見えてしまっている。


 ピオニーから見えないようにその事を伝えようと、リリィの方を少し見ながら自分の耳を触ってピアスが見えていると教えるが、リリィはニヤリと笑って首を傾げるだけだ。


 風呂場に入ってきたのは偶然だろうけど、この状況を逆手にとって何か企んでいそうな気配がしてきた。


「えぇ。『仲良し』よ」


 リリィが私に抱き着いて、顔だけをピオニーに向ける。私も逃げようにもピオニーの体が邪魔で動けず、戸惑いの表情を見せるピオニーと目が合い、苦笑いをして誤魔化す事しか出来ない。もはや、誤魔化せてもいないだろう。


 別に私達の関係を隠すなんて約束はしていない。だけど、こんなところでピオニーに『仲良し』アピールをしなくても良いじゃないかと思ってしまう。


「そ……それって……恋愛的な意味は無いのよね?」


「さて、どうかしら」


 リリィはピオニーに見せつけるように私の体を弄ると、私の顔を自分の方に向かせ唇を強引に奪ってきた。ピオニーが驚いて小さく悲鳴を漏らす。


「止めなさい! 神の教えに反するわ!」


 リリィはピオニーの言葉を無視して私の唇を貪ることを止めようとしない。


 ピオニーの指示ではなく、自分が満足したタイミングで止めたかったようだ。ピオニーが叫んでから数十秒後にやっと私を解放してくれた。


 ピオニーは治癒師なので教会との関係が深い。世間一般の人がそうであるように自身も敬虔な信者なのだろう。つまり、彼女のこの反応は世間の反応とほぼ一致する。


「正確には、快楽を貪るだけの行為が教えに反しているのよね。リフィ、どう? 気持ち良かった?」


 私の家族は教会に行くような人達ではなかったので、教えについては良く知らない。それでも、話の流れ的にはリリィの質問に対して否定で答えるべきというのは分かった。


 だけど、自分に嘘はつけないし、自分の事を否定するようでもあったので唇を噛んで頷く。


 ピオニーがキッと私を睨みつけてくる。明らかな軽蔑の目。少し仲良くなれたと思ったのだが、また遠のいてしまった。


「神は無能なのね。そんな事になるならどうして女同士でも快楽を得られるようにしたのかしら」


「何なの? 私と教義の解釈について議論したいって訳? 構わないけれど、何が目的なのかしら」


「高尚な目的なんてないわよ。ただ、誰の中にも火種はあるものよ。少し息を吹きかけると燃え上がる人もいる」


 そう言ってリリィが私の耳に息を吹きかけてくる。身体がゾクゾクと鳥肌を立てるし、彼女の言う通り、自分の中で何かが燃え上がってくるのが分かる。


 リリィは湯の中を移動してピオニーの背後に回り込み、ピオニーの幼さが残る身体に手を這わす。


「貴女はどうかしら。私は丁寧に息を吹き込めば誰でも火は燃え上がると信じているけれど」


「そんな訳ないでしょ!」


 ピオニーはリリィの手を払わずに口で抵抗する。触られたところでどうという事は無いという意思の表れだろう。


 だが、リリィの手が何度も身体を這いまわるうちにピオニーの弱点を見つけたようだ。鎖骨から小さな膨らみにかけての範囲を何度も往復している。だが、先端には絶対に触れない。


 しつこいくらいに鎖骨の下あたりを撫でまわしていると、ピオニーの真一文字に結ばれた口が徐々にほころび始めた。


 あまりの光景に顔を手で覆いつつも、指の隙間から様子を伺う事だけは止められない。


「どうしたの? 息が荒いけれど」


「の……のぼせているのよ!」


 のぼせているだけで息が上がるなら長風呂なんて出来ないだろう。他に理由はあるはず。その証拠にずっと内ももをこすり合わせているのだから。


 これはこれで見ていて楽しいのだけど、リリィが私以外の人と楽しんでいるという事実がどうにも納得できない。ピオニーの位置には本来私がいるべきなのだ。嫉妬だろう。これは紛う事なく嫉妬だ。


「リリィさん、そろそろやめませんか? ピオニーも嫌がってますし」


 一応一言だけ声掛けをして、無理やりピオニーを引きはがす。


 ピオニーは「あ……」とだけ言うと、私とリリィを交互に何度か見て風呂場から走って出て行ってしまった。


「もう少しだったのに。聖職者が陥落するところなんて中々見られないわよ?」


「リリィさんは人が悪いですよ。あんなの耐えられる訳がないのに」


 リリィが新たな獲物を見つけたと言いたげな目で私を見てくる。私も自分が獲物であることをアピールしていたので、どちらかと言えばリリィが罠にかかった形だ。


「耐えられないのね。なら貴女でも試してみましょうか。ただ、ここにいると本当にのぼせそうだから部屋に行きましょうか」


 リリィは舌なめずりをすると、私を立たせて湯船から出る。


 二人して髪も乾かさずにバスローブを羽織り、リリィの部屋まで走り抜けたのだった。


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