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平民の私が美女揃いの勇者オーディションに手違いで参加できたのですが何故か貴族の娘に絡まれます  作者: 剃り残し


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扉越し

 ネリネは泣き止むと寝返りを打って私の方を向いてくる。


「リフィさん、添い寝して欲しいっす」


「添い寝って……確かに昼寝するには丁度良さそうだけど……」


「いいじゃないっすか! ほらほら!」


 グイッと腕を引かれ、ベッドに押し倒されてしまう。ネリネは私の右腕に抱きついて顔を擦り付けてくる。その仕草が可愛いので少しの乱暴さは目を瞑れてしまうのがズルいところだ。


 私には兄弟はいないので、妹がいたらこんな風に甘えてくれるのだろうか、なんて妄想が捗ってしまう。


 身体を横に向けてネリネと向き合うと今度は胸元に顔を埋めてきた。


「ふかふかっす……ベッドよりいいっす……」


「ちょ……やめっ……」


 ネリネの鼻息はどんどん荒くなっていく。フガフガと鼻を鳴らしては胸を揉みしだいてくるのでネリネといるのだと認識しないと私まで盛り上がってしまいそうだ。


 ネリネからすれば落ち着く場所以上の意味は無かったようで、そのままスヤスヤと寝息を立て始めてしまった。


 結局、大事な事は何一つ聞き出せなかったが、何かで悩んでいる事だけは分かった。だが、目の前で幼子の様に安心しきった寝顔を見せてくれるネリネが誰かを蹴落としたり嵌めるような事を率先してするとも思えず、リリィの言う「誰かに操られている」説の現実味が増していくのだった。





 気づいたら私も寝てしまっていたようで、窓からは赤い夕焼けが差し込んでいた。


「ネリネ、起きて」


「んん……おはよ……うわ! なんすか!」


 寝ぼけ眼をこするネリネが愛らしくてつい抱きしめてしまった。ネリネはネリネで嫌そうな声を出しつつも本気で拒絶してこないのでより力が入り顔を擦りつけてしまう。


「ネリネは可愛いねぇ。私はお姉ちゃんみたいなものだから、困った事があったら何でも相談してね」


「ありがとっす! そうします!」


 屈託のない笑顔を見せてもらったところで夕食のために使用人が呼びに来た。二人で寝癖を直しつつ食堂に向かうと他の三人は談笑しながら食事に手を付けていた。


 ネリネも自然とリリィとの会話に混ざったのでひとまずチームワークとしては問題なさそうで一安心だった。


 ご飯を済ませたら風呂。リリィ曰く、そこまで広くないということで順番に入ることになった。


 ネリネ、ピオニー、ランと風呂を済ませたようで、ランが私の部屋に来たのを合図に風呂場へ向かう。


 宿舎の浴槽とは違い、個人の屋敷なので風呂もそれなりだと思っていたのだが、実際は五人で余裕で入れそうな広さだった。リリィと私達では一人あたりに必要な面積の感覚が違うのだろう。


 何だかんだでお嬢様な感覚をしているところもあるのだなと、ニヤニヤしながら頭から服を脱いでいると、頭に服が引っかかったところで誰かが私の後ろにやってきた。


 背後に気配を感じるとかそういう段階ではなく、密着してきている。


「だ……誰ですか?」


 背後にいる人は無言のまま私から離れ、背中を指でなぞる。文字を書いているのだろうけど、付かず離れずの距離感を保つ指が産毛を撫でてくすぐったい。


『あ、て、て、み、て』


 背中には書かれた。こんなことをする人も、風呂場に用のある人も一人だ。


「リリィさん、私が今から入るんです。お風呂、狭いらしいですよ」


「簡単に当てられるとつまらないわね。あんなのは他の人を先に風呂に入れる方便に決まっているじゃない」


 リリィの言葉に胸が高鳴る。今度こそ私の欲しい言葉をくれるのではないか。そんな期待を胸に服を脱ぎ切ろうとすると頭の上に来ていたスカートの裾、即ち服の出口を抑えられてしまった。袖も抜いていないので頭と腕がすっぽりと服の中に入ってしまい、身動きが取れなくなる。


「え……なんですか?」


「首から下は丸出し。それなのに顔は見えない。そそるわね」


「わ……私のウリは顔……でもなかったですね」


「顔もだけど、綺麗な身体をしているわ。私にも嫉みという感情がある事を思い出させてくれるの」


「リリィさんも……ひっ……」


 奇妙な体勢で始まってしまうのが嫌で話を逸したかったのだが、リリィはすっかりスイッチが入ってしまったようで、話も聞かずに空いている手を私の身体に這わせ始めた。


 背中に文字を書くときのような絶妙な肌と指の距離感。まるで柔らかい羽根でくすぐられているみたいだ。快感とこそばゆさが入り混じり身体をくねらせるも、頭に服が引っ掛かっていて碌な抵抗が出来ない。


 リリィの指先が私の上半身を十分過ぎる程に撫で回すと、拘束を解いて両手で下半身に移動してきた。


 服は頭にかかったままだが、抵抗する気はサラサラ無いので行き場を失っていた私の手は服を置く棚を掴むために使う事になった。


 こそばゆさが勝っていた感覚は徐々に快感のほうが優位になっていき、口で息をしないと呼吸が追いつかない。


「良い反応ね。背中が赤みを帯びてきたわ。このまま続けたらどうなるのかしらね」


「わ、分かりません」


「自分の身体なのよ。これからどうなるか分からない訳が無いでしょう」


 リリィはピシャリと私の発言を咎める。勿論、私もどうなるか分かっている。ご丁寧にも、自分からは見えない部位でその予兆が出ている事まで教えてもらったのだから。


「早く言いなさい。でないといつまでもこのままよ。もちろん自分で慰めてもダメ。この別荘で過ごす間、ひたすらに悶々とし続ける貴女をじっくりと観察させてもらうわ」


「このまま続けたら……その……達します」


「いつからそんな上品な言い方をするようになったの? それに貴女の感じ方はもっと獣じみていて下品なのよ。獣に相応しい言葉を使いなさい」


 リリィは私の昂りを見事にコントロールしている。内腿から逃げては寄せてを繰り返し、絶対にこの感覚を手放したくないと思わせてくる。言ってしまえ。そうすれば楽にしてやると訴えかけてくる手つきだ。


「い……」


「い?」


「い……言いません」


「強情ね。好きにすればいいわ」


 強がりはしたけれど限界は目の前まで近づいている。リリィの指先が通った箇所から集まってきた感覚は喉元まで上り詰めてきて、私の身体から飛び出す瞬間を待ち構えている。


 その時、ドアがガチャガチャとされる音がして、リリィの動きが止まる。私も息を止め、同時にドアの方を振り返る。


「リフィ、そこにいるの? 髪留めを忘れちゃったのよ」


 ピオニーの声だった。鍵がかかっているのでピオニーは入ってこられないようだ。万事休す。


「手は止めないわ。髪留めはこれよ」


 リリィは私の耳元で囁きながら、棚から髪留めを取り出して私に握らせる。


「今行くわ。待ってて」


 ドアの向こうにいるピオニーに向かって叫ぶ。


「あら。ピオニーには素直に言えるのね」


「意味が違いますから!」


 小声でリリィと言い合いながら服を整え、ドアの前まで移動する。


 リリィはしゃがみ込むとピオニーから死角になる事を確認して、また指先を私の脚にゆっくりと這わせ始めた。


 一度手をつねって痛みで快感をごまかしてからドアを開ける。


「これで合ってる?」


「えぇ。ありがとう。だっ……大丈夫!? 顔まで真っ赤じゃない!」


「ふ……風呂上がりなのよ。少しのぼせちゃって」


 私の想定では、ピオニーが「そうなのね。それじゃ」と言う。これで終わり。そう思っていたのに、ピオニーは会話を途切れさせないようにドアに手をかけてきた。


「少し話しても良い? リリィとネリネの事よ。リフィが間に入ってくれて少しマシになったみたい。ありがとう」


「い……いいのよ。そんな事。なっ……仲間なんだから」


 リリィの指は内腿を行ったり来たりして際どい部分まで攻め込んでくるタイミングが増えてきた。手で払ってもすぐに戻ってくる。たちの悪い蝿を相手にしている気分だ。


「そうよね……少し貴女の事を誤解していたみたい。変な人だと思ってたけど、まともな人で良かったわ。これからもよろしく頼むわね。それにしても本当に大丈夫なの? 少し様子を見せて」


「大丈夫! 本当に! 気持ちだけ頂いておくわ!」


「そ……そう」


 ピオニーがドン引きした目で私を見てくる。一度剥がされた『変な人』というレッテルがまたすぐに貼り直されていくような気がした。


 気を抜けばすぐに達してしまいそうなので耐えるのに必死なのだ。


 だがピオニーの話はまだ終わらないみたいだ。いっそ服を脱いで出れば気を使って話を早めに切り上げてくれたかもしれない。判断ミスだ。


「お姉ちゃんの事も嬉しかったわ。姉妹で揃って勇者になれるなんて夢物語かもしれないけど、まだ諦めなくて済むから」


「そ……そうね。私もメリアには仲良くしてもらっているから一緒に残れて嬉しいわ」


「まぁ……皆が皆、最後まで生き残れる訳じゃないけれど、このオーディションが終わった後も仲良くしましょ」


「えぇ。私もそうしたいわ。ちょっと……もう一度風呂に入りたくなっちゃったから、また後で、ね」


「あ……ごめんなさい。それじゃ。髪留め、ありがとう」


 ドアを閉め一息つく。会話の中身は半分も理解していなかった。


 リリィが背後から覆いかぶさるように抱きついてくる。


「よく我慢したわね。よくよく考えたら別に淫靡な言い方でなくてもいいじゃない。ちょっとそこまで、くらいの感覚で『今行きますよ、リリィさん』って言えば?」


「そ……それは……」


「いつものようにか細く儚げに言うのが貴女のポリシーなのであれば強要はしないわ。さ、終いよ」


 リリィの肌が離れたかと思った瞬間、尻に鋭い一発が入った。肌と肌で発生した破裂音は脱衣場の中で何度も反響している。


 すんでのところで堰き止められていたものが一気に溢れ、身体が仰け反る。腕を噛んで声を殺したが、時たま隙間から嬌声が漏れる。


「今の音、本当に大丈夫?」


 ドアにもたれ掛かり波に耐えていると向こうからピオニーの声がした。まだ近くにいたらしい。


「だ……大丈夫……のぼせて……気付けに顔を叩いたの」


「そ……そうなのね……」


 ピオニーの声はそれを最後に聞こえなくなった。足音が遠のいていくので、本当に部屋に戻ったみたいだ。


「さて、風呂に入りましょうか。貴女の脚、凄い汗だったからね」


 リリィは満足したような風に服を脱ぎ始める。今更ながら、素面の状態でリリィの前で裸になる、リリィに裸を見られるのが恥ずかしく感じてしまい、入口でモジモジしているとリリィが怪訝な顔を向けてくる。


「どうしたの?」


「いや……その……裸、恥ずかしくないですか?」


「そうなの? まぁ……そうね。先に入ってて」


 リリィは私の言葉に同意した訳ではなく、何かを思いついたので「そうね」と言ったようだ。


 アイディアを実行するために何かしらの準備があるのだろう。ニヤリと笑うと裸の上にバスローブを羽織り、浴場を出てどこかに行ってしまった。

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